玉勝間 / 八の巻 かけつかさ
うつほ物語たづのむら鳥卷に、兼官の事を、かけつかさとあり。
新字:うつほ物語たづのむら鳥巻に、兼官の事を、かけつかさとあり。
書き下し
うつほ物語たずのむら鳥の巻に、兼官の事を、かけつかさとあり。
現代語訳
うつほ物語の「たずのむら鳥」の巻に、兼官のことを「かけつかさ」とある。
解説
一人が複数の官職を兼ねる「兼官」を、和語で「かけつかさ」と言ったことを、うつほ物語から書き留めた短い段である。うつほ物語は平安時代中期の長編物語で、源氏物語に先立つ作品として知られる。律令の官職名は漢語で呼ばれることが多いが、物語の中では、官職を掛け持ちすることが和語でそのまま言い表されている。宣長は、漢語の制度用語の裏に、それを和語でどう言っていたかを常に探した。古事記伝で漢字表記の奥にある古い日本語の読みを定めようとしたのと同じ関心である。今でも「仕事を掛け持ちする」と言うが、その「かける」という感覚が平安時代の官職の言い方にすでに生きていたことが分かる。漢語で覚えた言葉を、和語ではどう言ったのかと問い直すことは、言葉の感覚を豊かにする一つの方法である。
関連する章句
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『玉勝間』二の巻 うつほ物語の事さてまたふるき一本には、たづのむら鳥を第十一とし、初秋を第十二とし、国ゆずり三巻を、第十六第十七第十八とし、楼の上の上下を、第十九第廿とせり。これらのついでは、いずれ善からむ。おのれいとまなくて、すべていまだえよくも考えず、見ん人猶かんがえて定めてよ。そもそも右の考えどもは、同じ尾張の国人浅井の某が、この物語を好みて、善本に依りて、考え置きたるに依れるなりと、道麻呂云えりき。
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『玉勝間』一の巻 官名の事中昔の書どもには、おおきおおいもうちぎみ、またはおおきおとどなど云えるは、右の訓あまり長き故に、政の字をのぞきたる訓なり。また左右大臣は、於保伊万智岐美と有るも、官名につきてもうけられたる訓なり。ただし万豆岐美、万宇智岐美は、古の称にて、麻都岐美なるを、音便に然か云うなり。まえつぎみと云う事、書紀の景行の巻の歌に見えたり。さて和名抄には、右のごとく万宇智岐美と有るを、北山抄・江次第などに、末布知君・万不地起牟多地など書かれたるは、布不は仮字たがいたり。すべて音便に宇と唱うるは、みな宇の仮字なりと心得べし。大納言・中納言・参議・少納言、みな漢字を以てつけられたる官にて訓は字につきてもうけたるなり。弁は於保止毛比、これは上つ代よりの官名と聞こえたり。意はいかなるにか、いまだ考え得ず字もいかなる意をもてあてられたるにか、さだかならず。西宮記・北山抄・小右記などに、大輌火之官と書かれたるは借り字なり。外記・内記・大史・少史・史生・官掌など、皆漢ざまなり。もろもろのつかさの長官を、美加と云うは古なり。次官を須気と云うも古きか、判官を万豆利古止比止と云うは、もうけたる訓なり。佐官は訓見えず。
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『玉勝間』十二の巻 長持と云ふ物栄華物語若枝の巻に、なかもちからびつのふたに、いとおどろおどろしゅうたたみいれて、うちかさねて、二人などかきて、もてくるも有り、と有り。これ今の世にいう長持と聞えたり。この名うつほの物語にも見えたるを、その巻をわすれたり。
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『玉勝間』二の巻 うつほ物語の事うつほの物語、今の世の板本は、巻の名たがえる有り、その次第もみだれて、読みつづけがたし。ここに田中の道麻呂が、ふるき善本によりて、正したりし次第は、第一俊蔭、第二並藤原の君、第三並ただこそ、第四梅の花笠、一名春日もうで、第五さがの院、第六吹上の上、第七吹上の下、第八祭の使、第九菊の宴、第十あて宮第十一初秋、一名とばかりの名月、一名すまいの節会、第十二たづの村鳥、第十三蔵開上、第十四蔵開中、第十五蔵開下、第十六楼の上、上、第十七楼の上、下、第十八国ゆずり上、第十九国ゆずり中、第二十国ゆずり下、かくの如くにて、合わせて廿巻なり。然るに今の本は、嵯峨の院の巻を蔵開の下とし、吹上の巻の上下のついでを誤り、蔵開の下を国ゆずりの下とし、楼の上の巻の上下のついでを誤り、国ゆずり上と中と次第を誤り、同じく下をさがのいんとす、これら皆誤りなり。然れば今の本の、蔵開下はさがのいんなり、吹上の上は下、下は上なり、国ゆずり下は蔵開下なり、楼の上、上は下、下は上なり、国ゆずり上は中、中は上なり、さがのいんは国ゆずり下なり、と心得べし。また今の本は、わたくしに、一巻なるをも上下にわけ、あるは上下なるを、また分け分けなどして、合わせて三十巻とせり。
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『玉勝間』八の巻 つぼね栄花物語若枝の巻に、はかなく屏風几帳ばかりを、ひきつぼねて、ひまもなくいたりと有り。局と云うは、つぼやかにつぼねたる所のよしなり。
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『玉勝間』六の巻 掛替万のわざに、掛替と云う物あり。これは弓の弦より起これることか、または車の牛より出でたるか。同じ記に、殿下北政所、春日社に参らしめ給う、予召しに依りて、懸替の牛一頭を引き献ずる、と有り。
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