玉勝間 / 八の巻 つぼね
榮花物語若枝ノ卷に、はかなく屏風几帳ばかりを、ひきつぼねて、ひまもなくゐたりと有ッ。局と云ふは、つぼやかにつぼねたる所のよしなり。
新字:栄花物語若枝ノ巻に、はかなく屏風几帳ばかりを、ひきつぼねて、ひまもなくゐたりと有ッ。局と云ふは、つぼやかにつぼねたる所のよしなり。
書き下し
栄花物語若枝の巻に、はかなく屏風几帳ばかりを、ひきつぼねて、ひまもなくいたりと有り。局と云うは、つぼやかにつぼねたる所のよしなり。
現代語訳
栄花物語の若枝の巻に、「ちょっとした屏風や几帳だけで仕切って囲い、すきまもなく居並んでいた」とある。「局(つぼね)」というのは、狭く小さく囲い込んだ所という意味である。
解説
宮中の女房の部屋を指す「局(つぼね)」の語義を、動詞の用例から説いた段である。栄花物語に屏風や几帳で「ひきつぼねて」とあるのは、屏風などで仕切って囲い込むことをいう。宣長はそこから、「つぼね」はまず「つぼぬ(囲い込む)」という動きがあり、狭く囲った場所を言うようになったと見る。「つぼやか」は小さくすぼまったさまを言う語である。平安の宮廷では、殿舎の広い空間を屏風や几帳で区切って女房たちの居所とし、それが局と呼ばれた。後には局を賜った女性そのものを「お局」と呼ぶようになり、現代では職場の古株の女性を揶揄する言葉にまでなっている。宣長のわずか数行の考証は、一つの言葉が物の形から人の呼び名へと移っていく道筋の、いちばん初めの姿を示している。
関連する章句
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