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玉勝間 / 七の巻 手代

同書に慈嚴僧正云云、以手代玄圓法印、可令勤修云云と有り。手代と云ふこと、法師にも云ひしにこそ。

新字:同書に慈厳僧正云云、以手代玄円法印、可令勤修云云と有り。手代と云ふこと、法師にも云ひしにこそ。

書き下し

同書に慈厳僧正云々、手代玄円法印を以て、勤修せしむべしと云々と有り。手代と云うこと、法師にも云いしにこそ。

現代語訳

同じ書(園太暦)に、「慈厳僧正……、代理として玄円法印に勤め修させるべきだという」とある。「手代」ということは、法師についても言ったのであろう。

解説

園太暦から「手代」という語の古い用例を拾った段である。宣長の頃、手代といえば商家で番頭の下に立つ奉公人を指すのがふつうだった。ところが南北朝の日記では、僧正の代わりに法会を勤める法印を手代と呼んでいる。つまり手代は本来、人の手に代わる者、代理人という意味で、それが僧の世界にも用いられていたのである。宣長は語の意味が時代とともに狭まり、特定の職を指すようになる過程に目を留めている。短い書き抜きだが、今の意味だけで古い文献の語を読むと誤るという戒めにもなる。言葉の意味は固定したものではなく、使われる場に応じて移るという、宣長の言語観がのぞく一例である。

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