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玉勝間 / 三の巻 新任国司庁宣神事を先キとする事

朝野群載云、初任國司廳宣、新司宣加賀國在廳官人雜任等、仰下三箇條事、一可早進上神寶勘文事、右件神寶、或於京儲之、或於國調之者、且進上勘文、且可致其勤、又恒例神事、慥守式日、殊可勤行矣、一云云、一云云、延喜十年月日。また廳宣但馬國在廳官人等、仰下雜事、一可勤仕恒例神事、右國中之政、神事爲先、專致如在之嚴奠、須期部內之豐穩云云、年月日。いにしへは、諸國にても、神事を重くせられしこと、かくの如し。

新字:朝野群載云、初任国司庁宣、新司宣加賀国在庁官人雑任等、仰下三箇条事、一可早進上神宝勘文事、右件神宝、或於京儲之、或於国調之者、且進上勘文、且可致其勤、又恒例神事、慥守式日、殊可勤行矣、一云云、一云云、延喜十年月日。また庁宣但馬国在庁官人等、仰下雑事、一可勤仕恒例神事、右国中之政、神事為先、専致如在之厳奠、須期部内之豊穏云云、年月日。いにしへは、諸国にても、神事を重くせられしこと、かくの如し。

書き下し

朝野群載に云う、初任国司庁宣、新司宣す 加賀国在庁官人雑任等、仰せ下す三箇条の事、一つ早く神宝の勘文を進上すべき事、右件の神宝、或いは京に於いて之を儲け、或いは国に於いて之を調うる者、且つは勘文を進上し、且つは其の勤めを致すべし、又恒例の神事、慥かに式日を守り、殊に勤行すべし、一つ云云、一つ云云、延喜十年月日。また庁宣す 但馬国在庁官人等、仰せ下す雑事、一つ恒例の神事を勤仕すべし、右国中の政は、神事を先と為す、専ら如在の厳奠を致し、須らく部内の豊穏を期すべし云云、年月日。いにしえは、諸国にても、神事を重くせられしこと、かくの如し。

現代語訳

『朝野群載』に次のようにある。「初めて任じられた国司の庁宣。新任の国司が加賀国の在庁官人・雑任らに宣する。命じ下す三箇条のこと。一、早く神宝の勘文(調べ書き)を進上すべきこと。右の神宝は、あるいは京で用意し、あるいは国で調えるものであるから、勘文を進上するとともに、その務めを果たすべきである。また恒例の神事は、確かに定めの日を守り、特に励んで行うべきである。一、云々。一、云々。延喜十年某月某日」。また「庁宣。但馬国の在庁官人らに命じ下す雑事。一、恒例の神事を勤め仕えるべきこと。右、国中の政治は神事を第一とする。専ら神がそこにおられるかのように厳かに祭りを行い、必ず国内の豊かさと安穏を期すべきである云々。年月日」。昔は諸国においても、神事を重んじられたことはこのとおりである。

解説

平安時代の文書集『朝野群載』から、新任の国司が任国の役人に出した最初の命令書(庁宣)を二通写している。どちらも筆頭に神事が掲げられ、但馬の庁宣は「国中の政は神事を先と為す」とはっきり述べる。神がそこにいるかのように厳かに祭り、国の豊かさと安穏を期せ、と。古代の律令国家では、国司は着任するとまず国内の主な神社を巡拝する「神拝」を行い、神事を政治の根本に置いていた。宣長はそれを確かな文書で示し、「いにしえは、諸国にても、神事を重くせられしこと、かくの如し」と結ぶ。言外には、神事が軽んじられるようになった後の世への嘆きがある。政治の出発点に何を置くか、という問いを、古代の役所の文書が静かに投げかけている。

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