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玉勝間 / 六の巻 神今食

そを月次と名くるよしは、月每に奉り給ふべきを、合せて二度に奉り給ふにて、六月には、其年の七月より、十二月までのを奉り、十二月には、來年の正月より、六月までのを奉り給ふなり。斯くて其同シ夜に行はるる神今食も、その同じ趣にて、天皇の月每に新磨の御食を聞食すよしにて、其度ごとに行ひ給ふべきを、合せて二度に行ひ給ふよしにて、そは新穀にはあらざれども、新磨を聞食始むるをさへに、重く嚴に齋給ふにて、先ッ神に奉ッ給ひて、さて天皇のきこしめす事、もはら新嘗大嘗のこころばへに同じ。さる故に此祭の儀式は、何事も大かた新嘗大嘗の儀の如くなるなり。そもそもこの神今食の事、如何なるよしをもて行はるる御わざとも、昔より其よしをしるせる事も無く、考へたる人も無きを、おのれもいといぶかしく思ひわたりて、年月かにかくに思ひめぐらして、近き程斯く思ひ得たるままにしるせるを、猶如何ならむ、かしこき物知り人定めてよ。

新字:そを月次と名くるよしは、月毎に奉り給ふべきを、合せて二度に奉り給ふにて、六月には、其年の七月より、十二月までのを奉り、十二月には、来年の正月より、六月までのを奉り給ふなり。斯くて其同シ夜に行はるる神今食も、その同じ趣にて、天皇の月毎に新磨の御食を聞食すよしにて、其度ごとに行ひ給ふべきを、合せて二度に行ひ給ふよしにて、そは新穀にはあらざれども、新磨を聞食始むるをさへに、重く厳に斎給ふにて、先ッ神に奉ッ給ひて、さて天皇のきこしめす事、もはら新嘗大嘗のこころばへに同じ。さる故に此祭の儀式は、何事も大かた新嘗大嘗の儀の如くなるなり。そもそもこの神今食の事、如何なるよしをもて行はるる御わざとも、昔より其よしをしるせる事も無く、考へたる人も無きを、おのれもいといぶかしく思ひわたりて、年月かにかくに思ひめぐらして、近き程斯く思ひ得たるままにしるせるを、猶如何ならむ、かしこき物知り人定めてよ。

書き下し

そを月次と名づくるよしは、月毎に奉り給うべきを、合わせて二度に奉り給うにて、六月には、その年の七月より、十二月までのを奉り、十二月には、来年の正月より、六月までのを奉り給うなり。かくてその同じ夜に行わるる神今食も、その同じ趣にて、天皇の月毎に新磨の御食を聞こし食すよしにて、その度ごとに行い給うべきを、合わせて二度に行い給うよしにて、そは新穀にはあらざれども、新磨を聞こし食し始むるをさえに、重く厳かに斎い給うにて、まず神に奉り給いて、さて天皇のきこしめす事、もはら新嘗大嘗のこころばえに同じ。さる故にこの祭の儀式は、何事も大かた新嘗大嘗の儀のごとくなるなり。そもそもこの神今食の事、いかなるよしをもて行わるる御わざとも、昔よりそのよしをしるせる事も無く、考えたる人も無きを、おのれもいといぶかしく思いわたりて、年月かにかくに思いめぐらして、近き程かく思い得たるままにしるせるを、なおいかならむ、かしこき物知り人定めてよ。

現代語訳

それを月次と名づけるわけは、月ごとに奉られるべきものを、合わせて二度に奉られるからで、六月にはその年の七月から十二月までの分を奉り、十二月には翌年の正月から六月までの分を奉られるのである。こうしてその同じ夜に行われる神今食も同じ趣旨で、天皇が月ごとに新しく磨った御食を召し上がるということで、そのたびごとに行われるべきものを、合わせて二度に行われるということであって、それは新穀ではないけれども、新しく磨った米を召し上がり始めることさえも、重く厳かに斎み慎まれるのであって、まず神に奉られて、それから天皇が召し上がることは、まったく新嘗祭・大嘗祭の心ばえと同じである。それゆえこの祭の儀式は、何事もおおよそ新嘗・大嘗の儀のようなのである。そもそもこの神今食のことは、どういう理由で行われる御わざであるとも、昔からその理由を記したこともなく、考えた人もないのを、私もたいそう不審に思い続けて、年月あれこれと思いめぐらして、最近このように思い当たったままに記したのだが、なおどうであろうか、賢明な物知りの人が定めてほしい。

解説

神今食の説の後半で、宣長はその意味を月次祭の仕組みから説き明かす。月次祭は本来毎月神に奉るべき幣帛を、六月と十二月の二度にまとめて奉るものである。同じように神今食も、天皇が毎月新しく磨った米を召し上がる始めの神事を、年二度にまとめたものだ、と宣長は考える。新穀でなくても、新しく磨った米を口にする始めを神に奉って慎む、という点で新嘗祭や大嘗祭と同じ心であり、だから儀式も似ているのだという。長年いぶかしく思い続け、最近ようやく思い至ったと述べ、なお物知りの人に定めてほしいと結ぶ。何年も一つの疑問を抱え続け、答えを得ても断定せずに後の人に委ねる姿は、学ぶ者の手本である。

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