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玉勝間 / 六の巻 後京極のとなへ

後京極ノ攝政は、つねには、後ノ字、音にてゴと讀むを、同じ愚管抄に、後の京極殿と、ノの字を添へて書きたり。

新字:後京極ノ摂政は、つねには、後ノ字、音にてゴと読むを、同じ愚管抄に、後の京極殿と、ノの字を添へて書きたり。

書き下し

後京極の摂政は、つねには、後の字、音にてごと読むを、同じ愚管抄に、後の京極殿と、のの字を添えて書きたり。

現代語訳

後京極摂政(藤原良経)は、ふつうは「後」の字を音で「ご」と読むが、同じ愚管抄には「後の京極殿」と、「の」の字を添えて書いてある。

解説

後京極摂政藤原良経の呼び名の読み方について、愚管抄の書きぶりを挙げた短い一段である。世間では「ごきょうごく」と音で読んでいるが、愚管抄には「後の京極殿」とある。愚管抄の著者慈円は良経の叔父にあたり、同じ時代を生きた身内である。その人が「のちの」と書いているのだから、当時の呼び方を伝える証拠として、宣長はこれを書き留めたのだろう。人名や称号の読みは、後の世の慣習で変わってしまうことが多い。宣長はそうした読みの一つ一つを、同時代の資料に当たって確かめようとした。名前の呼び方という小さな事柄にも、証拠を求める姿勢が表れている。

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