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玉勝間 / 五の巻 とみにと云ふ言には早ノ字を書クべき事

三代實錄十三の卷なる宣命に、早爾罪郡倍不賜と有る。此早ノ字、とみにと訓ょべし。此詞によくあたれる所なり。つとにと訓めるは、あたらず。

新字:三代実録十三の巻なる宣命に、早爾罪郡倍不賜と有る。此早ノ字、とみにと訓ょべし。此詞によくあたれる所なり。つとにと訓めるは、あたらず。

書き下し

三代実録十三の巻なる宣命に、とみに罪なえ賜わず、と有る。この早の字、とみにと訓むべし。この詞によくあたれる所なり。つとにと訓めるは、あたらず。

現代語訳

『三代実録』巻十三にある宣命に「早に罪なえ賜わず(すぐには罪に問われない)」とある。この「早」の字は「とみに」と訓むべきである。この言葉によく当てはまる箇所である。「つとに」と訓んでいるのは当たらない。

解説

『日本三代実録』の宣命にある「早」の字の訓みを定めた短い考証である。宣命は天皇の命を和文の語順で記した文で、漢字の用い方から古い言葉を復元する手がかりになる。宣長は、ここの「早」は「つとに(朝早く、以前から)」ではなく「とみに(急に、すぐに)」と訓むべきだとする。文脈は罪をただちには問わないという意味だから、時間の早さ一般ではなく、即座にという「とみに」が合う、という判断である。古事記伝で宣長が取り組んだのも、漢字で書かれた古文を正しい和語で訓み直す作業だった。一字の訓みを文脈から決めるこの小さな段は、その方法を縮めて見せている。字面だけでなく、前後の意味で言葉を決めるという読みの基本がここにある。

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