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玉勝間 / 二の巻 宗祇ほうしが生れし所

宗祇法師が生れし家の跡とて、紀の國在田ノ郡藤並ノ庄下津野村の、民どものやどころの內に、五十間に四十間ばかりの地ありと、かの國の事どもしるせる物にしるしたり。

新字:宗祇法師が生れし家の跡とて、紀の国在田ノ郡藤並ノ庄下津野村の、民どものやどころの内に、五十間に四十間ばかりの地ありと、かの国の事どもしるせる物にしるしたり。

書き下し

宗祇法師が生まれし家の跡とて、紀の国在田の郡藤並の庄下津野村の、民どものやどころの内に、五十間に四十間ばかりの地ありと、かの国の事どもしるせる物にしるしたり。

現代語訳

連歌師の宗祇法師が生まれた家の跡として、紀伊国在田郡藤並庄下津野村の、農民たちの住まいの中に、五十間に四十間(約九十メートル四方に七十メートルほど)ほどの土地があると、紀伊国のことを記した書物に記してある。

解説

室町時代の連歌師宗祇の生まれた家の跡について、紀伊国の地誌の記事を書き留めた短い段である。宗祇の出身地には近江説と紀伊説があり、はっきりしない。宣長は自分の判断を加えず、紀伊国在田郡の下津野村に屋敷跡とされる土地があると、書物にあるままを記すにとどめた。宗祇は中世の和歌・連歌の学びを伝えた人で、若いころから歌を学んだ宣長にとっても歌の道の先人である。また紀伊国は松坂を治めた紀州藩の本国で、のちに宣長は紀州藩に召し抱えられる。そうした縁もあって目に留まった記事なのであろう。説の分かれる事柄について、見た資料の記述を出典とともにそのまま残しておくのは、後の人が判断する材料を残す考証家の作法である。

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