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徂徠先生答問書 / 卷下

一同鄕にて候得ば、朋友聚候て會讀などいたし候得ば、東を被云候て西の合點參り候事も有之候得共、遠境無朋友之助御學問はか參間敷候。獨學の仕形は無點を御覽被習候にしくは無御座候。點付物の濟候程にて無點の濟不申事は無之物に候。只目に惡敷くせを付置候故無點の物よめ不申候。苦勞をこらへ候てくせを付替候迄の事に候。

新字:一同郷にて候得ば、朋友聚候て会読などいたし候得ば、東を被云候て西の合点参り候事も有之候得共、遠境無朋友之助御学問はか参間敷候。独学の仕形は無点を御覧被習候にしくは無御座候。点付物の済候程にて無点の済不申事は無之物に候。只目に悪敷くせを付置候故無点の物よめ不申候。苦労をこらへ候てくせを付替候迄の事に候。

書き下し

一同郷にて候得ば、朋友聚候て会読などいたし候得ば、東を被云候て西の合点参り候事も有之候得共、遠境無朋友之助御学問はか参間敷候。独学の仕形は無点を御覧被習候にしくは無御座候。点付物の済候程にて無点の済不申事は無之物に候。只目に悪敷くせを付置候故無点の物よめ不申候。苦労をこらへ候てくせを付替候迄の事に候。

現代語訳

一、同郷であれば、朋友が集まって会読などをすれば、東を言われて西の合点がいくということもありますが、遠方で朋友の助けがなくては、ご学問ははかどらないでしょう。独学の仕方は、無点本(返り点や送り仮名のない漢文)をご覧になって慣れるのに及ぶものはありません。点の付いた本が読める程度で、無点本が読めないということはないものです。ただ目に悪い癖を付けているので、無点の物が読めないのです。苦労をこらえて癖を付け替えるまでのことです。

解説

仲間との会読ができない遠方の学び手に、徂徠は独学の要として無点本を読むことを勧める。訓点付きの本が読めるなら本来無点本も読めるはずで、読めないのは訓点に頼る悪い癖が目についているからだという。会読では東を言われて西に気づくことがあるという一言にも、仲間と学ぶ効用がよく表れている。補助輪を外す苦労を経てはじめて本当の力がつくという教えは、マニュアルや定型に頼りきった仕事の仕方を見直すときにも通じる。

この章句が説くこと

独学会読無点学問習慣朋友

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