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春秋左氏伝 / 哀公十六年 孔悝の出奔

六月。衛侯飲孔悝酒於平陽。重酬之。大夫皆有納焉。醉而送之。夜半而遣之。載伯姬於平陽而行。及西門。使貳車反祏於西圃。子伯季子。初為孔氏臣。新登于公。請追之。遇載祏者。殺而乘其車。許公為。反祏。遇之曰。與不仁人爭。明無不勝。必使先射。射三發。皆遠許為。許為射之。殪。或以其車從。得祏於橐中。孔悝出奔宋。楚大子建之遇讒也。自城父奔宋。又辟華氏之亂於鄭。鄭人甚善之。又適晉。與晉人謀襲鄭。乃求復焉。鄭人復之如初。晉人使諜於子木。請行而期焉。子木暴虐於其私邑。

新字:六月。衛侯飲孔悝酒於平陽。重酬之。大夫皆有納焉。酔而送之。夜半而遣之。載伯姫於平陽而行。及西門。使貳車反祏於西圃。子伯季子。初為孔氏臣。新登于公。請追之。遇載祏者。殺而乗其車。許公為。反祏。遇之曰。与不仁人争。明無不勝。必使先射。射三発。皆遠許為。許為射之。殪。或以其車従。得祏於橐中。孔悝出奔宋。楚大子建之遇讒也。自城父奔宋。又辟華氏之乱於鄭。鄭人甚善之。又適晋。与晋人謀襲鄭。乃求復焉。鄭人復之如初。晋人使諜於子木。請行而期焉。子木暴虐於其私邑。

書き下し

六月、衛侯、孔悝に平陽に酒を飲ましめ、重く之に酬ゆ。大夫皆納るる有り。醉はしめて之を送り、夜半にして之を遣る。伯姬を平陽に載せて行く。西門に及び、貳車をして祏を西圃に反さしむ。子伯季子、初め孔氏の臣たり、新たに公に登る。之を追はんと請ふ。祏を載する者に遇ひ、殺して其の車に乘る。許公為、祏を反す。之に遇ひて曰く、「不仁の人と爭はば、明らかに勝たざる無し」と。必ず先づ射しむ。射ること三發、皆許為に遠し。許為、之を射て殪す。或ひと其の車を以て從ひ、祏を橐中に得たり。孔悝、出でて宋に奔る。楚の大子建の讒に遇ふや、城父より宋に奔る。又華氏の亂を鄭に辟く。鄭人甚だ之を善くす。又晉に適き、晉人と鄭を襲はんことを謀り、乃ち復らんことを求む。鄭人之を復すること初めの如し。晉人、諜を子木に使はし、行を請ひて期す。子木、其の私邑に暴虐なり。

現代語訳

六月、衛侯(荘公)は平陽で孔悝に酒を振る舞い、手厚く贈り物をした。大夫たちもみな贈り物をした。孔悝を酔わせて送り出し、夜半になって国外へ去らせた。孔悝は母の伯姫を平陽で車に載せて出発した。西門まで来ると、副車を引き返させて、孔氏の祖先の位牌を入れた石の箱(祏)を西の菜園の廟から取ってこさせた。子伯季子は、もとは孔氏の家臣だったが新たに公に仕えるようになった者で、孔悝を追撃したいと願い出た。途中で位牌を運ぶ者に出会うと、これを殺してその車に乗った。一方、許公為が位牌を取りに引き返してきて、子伯季子に出会い、「不仁の人と争うなら、勝たないはずがない」と言った。そして必ず相手に先に射させた。子伯季子は三発射たが、どれも許為から大きく外れた。許為が射返すと、子伯季子は倒れて死んだ。ある者がその車を引いて孔悝の一行に従い、袋の中から位牌を見つけ出した。孔悝は国を出て宋に亡命した。さて、楚の太子建は讒言にあったとき、城父から宋に逃げた。さらに宋の華氏の乱を避けて鄭に移った。鄭の人々は彼をたいへん厚遇した。ところが太子建はさらに晋に行き、晋人と鄭を襲う計画を立て、そのうえで鄭に戻ることを求めた。鄭の人々は以前と同じように彼を迎え入れた。晋人は間者を子木(太子建)のもとに送り、行動の日取りを打ち合わせた。子木は自分の私邑で暴虐にふるまった。

解説

衛の荘公は自分を立てた功臣の孔悝を、酒と贈り物でもてなしたうえで、夜半に国外へ追い出した。功ある者を穏やかに遠ざける手口である。孔悝は祖先の位牌を取りに戻らせ、それを追った元家臣の子伯季子は射殺される。許公為の「不仁の人と爭はば、明らかに勝たざる無し」は、主家を裏切った者には天が味方しないという自信であり、先に三発射させる余裕まで見せた。後半は楚の話に移り、白公の乱の遠因となる太子建の最期が語られ始める。讒言で亡命した太子建は、かくまってくれた鄭を晋と組んで襲おうとした。恩を受けた相手を裏切る計画と、足元の私邑での暴虐が、次の句で彼の命取りになる。担いだ者を用が済めば遠ざける君主と、恩人を売ろうとする亡命者。どちらも信用を一度きりの取引として使っている点で似ている。

この章句が説くこと

恩義裏切り功臣信用因果

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