春秋左氏伝 / 哀公二年 趙簡子の誓い
秋。八月。齊人輸范氏粟。鄭子姚。子般。送之。士吉射逆之。趙鞅禦之。遇于戚。陽虎曰。吾車少。以兵車之旆。與罕駟兵車。先陳。罕駟自後隨而從之。彼見吾貌。必有懼心。於是乎會之。必大敗之。從之。卜戰。龜焦。樂丁曰。詩曰。爰始爰謀。爰契我龜。謀協以故。兆詢可也。簡子誓曰。范氏中行氏反易天明。斬艾百姓。欲擅晉國而滅其君。寡君恃鄭而保焉。今鄭為不道。棄君助臣。二三子順天明。從君命。經德義。除詬恥。在此行也。克敵者。上大夫受縣。下大夫受郡。士田十萬。庶人工商遂。人臣隸圉免。志父無罪。君實圖之。若其有罪。絞縊以戮。桐棺三寸。不設屬辟。素車樸馬。無入于兆。
新字:秋。八月。斉人輸范氏粟。鄭子姚。子般。送之。士吉射逆之。趙鞅禦之。遇于戚。陽虎曰。吾車少。以兵車之旆。与罕駟兵車。先陳。罕駟自後随而従之。彼見吾貌。必有懼心。於是乎会之。必大敗之。従之。卜戦。亀焦。楽丁曰。詩曰。爰始爰謀。爰契我亀。謀協以故。兆詢可也。簡子誓曰。范氏中行氏反易天明。斬艾百姓。欲擅晋国而滅其君。寡君恃鄭而保焉。今鄭為不道。棄君助臣。二三子順天明。従君命。経徳義。除詬恥。在此行也。克敵者。上大夫受県。下大夫受郡。士田十万。庶人工商遂。人臣隸圉免。志父無罪。君実図之。若其有罪。絞縊以戮。桐棺三寸。不設属辟。素車樸馬。無入于兆。
書き下し
秋、八月、齊人、范氏に粟を輸す。鄭の子姚・子般之を送り、士吉射之を逆ふ。趙鞅之を禦ぎ、戚に遇ふ。陽虎曰く、「吾が車少なし。兵車の旆を以て、罕・駟の兵車と先づ陳せん。罕・駟、後より隨ひて之に從ふ。彼吾が貌を見ば、必ず懼るる心有らん。是に於てか之に會せば、必ず大いに之を敗らん」と。之に從ふ。戰を卜す。龜焦(こ)ぐ。樂丁曰く、「詩に曰く、『爰に始め爰に謀り、爰に我が龜を契す』と。謀協ひて故を以てす、兆詢して可なり」と。簡子誓ひて曰く、「范氏・中行氏、天明に反易し、百姓を斬艾し、晉國を擅にして其の君を滅ぼさんと欲す。寡君、鄭を恃みて保たんとす。今鄭は不道を為し、君を棄てて臣を助く。二三子、天明に順ひ、君命に從ひ、德義を經(をさ)め、詬恥を除くは、此の行に在るなり。敵に克つ者は、上大夫は縣を受け、下大夫は郡を受け、士は田十萬、庶人工商は遂(すす)み、人臣隸圉は免ぜられん。志父罪無くんば、君實に之を圖れ。若し其れ罪有らば、絞縊して以て戮せよ。桐棺三寸にして、屬辟を設けず、素車樸馬にして、兆に入ること無からん。
現代語訳
秋八月、斉の人々は范氏に穀物を送った。鄭の子姚(しよう、罕達)と子般(しはん、駟弘)がそれを護送し、士吉射(范氏)がそれを出迎えた。趙鞅はこれを阻もうとして、戚で出くわした。陽虎が言った。「わが方は戦車が少ない。兵車の旗を掲げて、罕氏・駟氏(鄭の軍)の戦車に向けて先に陣を布きましょう。罕・駟は後から(穀物の輸送に)従ってやって来ます。彼らはわが陣の様子を見れば、必ず恐れる心を抱くでしょう。そこで戦えば、必ず大いに打ち破れます」。趙鞅はこれに従った。戦いの吉凶を亀卜で占うと、亀甲が焦げてしまい、兆しが出なかった。楽丁(がくてい)が言った。「『詩』に『ここに事を始め、ここに謀り、ここにわが亀を刻む』とあります。計画はすでに以前から一致しているのですから、兆しに問うまでもなく、戦ってよいのです」。簡子(趙鞅)は将兵に誓って言った。「范氏・中行氏は天の明らかな道に背き、民を殺戮し、晋国をほしいままにしてその君を滅ぼそうとしている。わが君は鄭を頼みとして身を守ろうとしてきた。ところがいま鄭は不道を行い、君を見捨てて臣下(范氏・中行氏)を助けている。諸君が天の明らかな道に従い、君命に従い、徳義を守り、恥辱を除くのは、この一戦にかかっている。敵に勝った者には、上大夫には県を、下大夫には郡を与え、士には田十万畝を与え、庶人・工人・商人は仕官への道を開き、奴隷や下僕の身分の者はその身分から解放する。この志父(趙鞅の自称)に罪がなければ、わが君がしかるべく取りはからわれよう。もし私に罪があって敗れたならば、首をくくって処刑されよ。桐の棺は厚さ三寸とし、内棺も外棺も設けず、飾りのない車と粗末な馬で運び、一族の墓域には葬らないでもらいたい。
解説
この章句が説くこと
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