春秋左氏伝 / 定公六年 楊楯を以て禍を賈ふ
秋。八月。宋樂祁言於景公曰。諸侯唯我事晉。今使不往。晉其憾矣。樂祁告其宰陳寅。陳寅曰。必使子往。他日。公謂樂祁曰。唯寡人說子之言。子必往。陳寅曰。子立後而行。吾室亦不亡。唯君亦以我為知難而行也。見溷而行。趙簡子逆而飲之酒於綿上。獻楊楯六十於簡子。陳寅曰。昔吾主范氏。今子主趙氏。又有納焉。以楊楯賈禍。弗可為也已。然子死。晉國子孫。必得志於宋。范獻子言於晉侯曰。以君命越疆而使。未致使而私飲酒。不敬二君。不可不討也。乃執樂祁。陽虎又盟公及三桓於周社。盟國人于亳社。詛于五父之衢。冬。十二月。天王處于姑蕕。辟儋翩之亂也。
新字:秋。八月。宋楽祁言於景公曰。諸侯唯我事晋。今使不往。晋其憾矣。楽祁告其宰陳寅。陳寅曰。必使子往。他日。公謂楽祁曰。唯寡人説子之言。子必往。陳寅曰。子立後而行。吾室亦不亡。唯君亦以我為知難而行也。見溷而行。趙簡子逆而飲之酒於綿上。献楊楯六十於簡子。陳寅曰。昔吾主范氏。今子主趙氏。又有納焉。以楊楯賈禍。弗可為也已。然子死。晋国子孫。必得志於宋。范献子言於晋侯曰。以君命越疆而使。未致使而私飲酒。不敬二君。不可不討也。乃執楽祁。陽虎又盟公及三桓於周社。盟国人于亳社。詛于五父之衢。冬。十二月。天王処于姑蕕。辟儋翩之乱也。
書き下し
秋八月、宋の樂祁、景公に言ひて曰く、「諸侯唯だ我のみ晉に事ふ。今使往かずんば、晉其れ憾みん」と。樂祁、其の宰陳寅に告ぐ。陳寅曰く、「必ず子をして往かしめん」と。他日、公、樂祁に謂ひて曰く、「唯だ寡人のみ子の言を說ぶ。子必ず往け」と。陳寅曰く、「子、後を立てて行け。吾が室も亦た亡びず。唯だ君も亦た我を以て難きを知りて行くと為さん」と。溷を見えしめて行く。趙簡子、逆へて之に酒を綿上に飲ましむ。楊楯六十を簡子に獻ず。陳寅曰く、「昔、吾は范氏を主とせり。今、子は趙氏を主とし、又納るること有り。楊楯を以て禍を賈ふ、為すべからざるのみ。然れども子死せば、晉國の子孫、必ず志を宋に得ん」と。范獻子、晉侯に言ひて曰く、「君命を以て疆を越えて使ひし、未だ使を致さずして私に酒を飲む。二君を敬せず。討たざるべからざるなり」と。乃ち樂祁を執ふ。陽虎、又公及び三桓に周社に盟ひ、國人に亳社に盟ひ、五父の衢に詛ふ。冬十二月、天王、姑蕕に處る。儋翩の亂を辟くるなり。
現代語訳
秋八月、宋の楽祁(子梁)が景公に言った。「諸侯のうちで晋に仕えているのはわが国だけです。いま使者を出さなければ、晋は恨むでしょう」。楽祁はこのことを家宰の陳寅に告げた。陳寅は言った。「(言い出したあなたが)必ず行かされることになります」。後日、景公は楽祁に言った。「私だけがそなたの意見をよしとした。そなたが必ず行け」。陳寅は言った。「あなたは跡継ぎを立ててから行きなさい。そうすれば我が家も滅びません。君もまた、我々が困難を承知で出向いたと見てくださるでしょう」。楽祁は子の溷を景公に目通りさせてから出発した。趙簡子(趙鞅)は出迎えて、綿上で酒をふるまった。楽祁は楊の木の盾六十を簡子に献上した。陳寅は言った。「これまでわが家は晋では范氏を主(後ろ盾)としてきました。いまあなたは趙氏を主とし、さらに贈り物までした。楊の盾で禍を買ったようなもので、もうどうにもなりません。しかし、あなたが死んでも、晋国は後代に必ず宋の求めを聞かざるをえなくなるでしょう」。范献子(士鞅)は晋侯(定公)に言った。「君命を受けて国境を越えて使いに来ながら、まだ使命を果たさないうちに私的に酒を飲んだ。二人の君主を軽んじたのです。討たないわけにはいきません」。そこで楽祁を捕らえた。陽虎はまた定公と三桓(季孫・叔孫・孟孫)に周社で盟約させ、国人と亳社で盟約し、五父の衢で呪詛の誓いを立てた。冬十二月、天王(周の敬王)は姑蕕に移った。儋翩の乱を避けたのである。
解説
この章句が説くこと
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