春秋左氏伝 / 昭公三十二年 器と名は人に仮さず
其誰矜之。社稷無常奉。君臣無常位。自古以然。故詩曰。高岸為谷。深谷為陵。三后之姓。於今為庶。王所知也。在易卦。雷乘乾曰。大壯。天之道也。昔成季友。桓之季也。文姜之愛子也。始震而卜。卜人謁之曰。生有嘉聞。其名曰友。為公室輔。及生如卜人之言。有文在其手。曰友。遂以名之。既而有大功於魯。受費以為上卿。至於文子。武子。世增其業。不廢舊績。魯文公薨。而東門遂殺適立庶。魯君於是乎失國。政在季氏。於此君也。四公矣。民不知君。何以得國。是以為君。慎器與名。不可以假人。
新字:其誰矜之。社稷無常奉。君臣無常位。自古以然。故詩曰。高岸為谷。深谷為陵。三后之姓。於今為庶。王所知也。在易卦。雷乗乾曰。大壮。天之道也。昔成季友。桓之季也。文姜之愛子也。始震而卜。卜人謁之曰。生有嘉聞。其名曰友。為公室輔。及生如卜人之言。有文在其手。曰友。遂以名之。既而有大功於魯。受費以為上卿。至於文子。武子。世增其業。不廃旧績。魯文公薨。而東門遂殺適立庶。魯君於是乎失国。政在季氏。於此君也。四公矣。民不知君。何以得国。是以為君。慎器与名。不可以仮人。
書き下し
其れ誰か之を矜(あはれ)まん。社稷に常奉無く、君臣に常位無し。古より以って然り。故に詩に曰く、『高岸谷と為り、深谷陵と為る』と。三后の姓、今に於いて庶と為る。王の知る所なり。易の卦に在りて、雷乾に乘るを大壯と曰ふ、天の道なり。昔成季友は、桓の季なり、文姜の愛子なり。始めて震(はら)みて卜す。卜人之を謁して曰く、『生まれて嘉聞有り、其の名を友と曰ひ、公室の輔と為らん』と。生まるるに及びて卜人の言の如く、文の其の手に在る有りて、友と曰ふ。遂に以って之に名づく。既にして大功を魯に有り、費を受けて以って上卿と為る。文子・武子に至りて、世々其の業を增し、舊績を廢せず。魯の文公薨じて、東門遂適を殺し庶を立つ。魯君是に於いてか國を失ひ、政季氏に在り。此の君に於いて、四公なり。民君を知らず、何を以ってか國を得ん。是を以って君為る者は、器と名とを慎み、以って人に假す可からず」と。
現代語訳
いったい誰がそれを哀れむでしょうか。社稷(国家)には決まった奉じ手がなく、君と臣にも決まった地位はありません。昔からそうなのです。だから『詩経』に『高い岸が谷となり、深い谷が丘となる』とあります。三后(夏・殷・周の三王朝の君主)の子孫も、今では庶民となっています。これはご存じのとおりです。『易』の卦では、雷(震)が天(乾)の上に乗るものを大壮といい、これが天の道です(下にあるものが上に乗ることも天道の一つの姿なのです)。昔、成季友(季友)は桓公の末子で、文姜が愛した子でした。身ごもったときに占うと、卜人は『生まれればよい評判があり、その名を友といい、公室の補佐となるでしょう』と告げました。生まれると卜人の言葉どおり、手に『友』という文字の形の模様があったので、そのまま友と名づけました。やがて魯に大きな功を立て、費の地を受けて上卿となりました。文子(季孫行父)、武子(季孫宿)に至るまで、代々その事業を増し、先代の功績を廃れさせませんでした。魯の文公が亡くなると、東門遂(襄仲)が嫡子を殺して庶子を立てました。魯の君主はこのときから国を失い、政治は季氏の手に移りました。今の君まで四代の公になります。民が君を知らないのに、どうして国を保てましょう。だから君主たる者は、器(身分を示す器物)と名(爵位や称号)を慎み、人に貸してはならないのです」。
解説
この章句が説くこと
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