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春秋左氏伝 / 昭公二十六年 礼の以て国を為むべきや久し

式謌且舞。陳氏之施。民謌舞之矣。後世若少惰陳氏而不亡。則國其國也已。公曰。善哉。是可若何。對曰。唯禮可以已之。在禮家施不及國。民不遷。農不移。工賈不變。士不濫。官不滔。大夫不收公利。公曰。善哉。我不能矣。吾今而後知禮之可以為國也。對曰。禮之可以為國也久矣。與天地並。君令臣共。父慈子孝。兄愛弟敬。夫和妻柔。姑慈婦聽。禮也。君令而不違。臣共而不貳。父慈而教。子孝而箴。兄愛而友。弟敬而順。夫和而義。妻柔而正。姑慈而從。婦聽而婉。禮之善物也。公曰善哉。寡人今而後聞此。禮之上也。對曰。先王所稟於天地。以為其民也。是以先王上之。

新字:式謌且舞。陳氏之施。民謌舞之矣。後世若少惰陳氏而不亡。則国其国也已。公曰。善哉。是可若何。対曰。唯礼可以已之。在礼家施不及国。民不遷。農不移。工賈不変。士不濫。官不滔。大夫不収公利。公曰。善哉。我不能矣。吾今而後知礼之可以為国也。対曰。礼之可以為国也久矣。与天地並。君令臣共。父慈子孝。兄愛弟敬。夫和妻柔。姑慈婦聴。礼也。君令而不違。臣共而不貳。父慈而教。子孝而箴。兄愛而友。弟敬而順。夫和而義。妻柔而正。姑慈而従。婦聴而婉。礼之善物也。公曰善哉。寡人今而後聞此。礼之上也。対曰。先王所稟於天地。以為其民也。是以先王上之。

書き下し

式(もっ)て謌(うた)ひ且つ舞へ』と。陳氏の施し、民之を謌舞す。後世若し少しく惰りて陳氏にして亡びずんば、則ち國は其の國ならんのみ」と。公曰く、「善いかな。是れ若何す可き」と。對へて曰く、「唯だ禮以って之を已む可し。禮に在りては、家の施しは國に及ばず、民は遷らず、農は移らず、工・賈は變ぜず、士は濫せず、官は滔(おご)らず、大夫は公利を收めず」と。公曰く、「善いかな。我能はざるなり。吾今にして後に禮の以って國を為む可きを知る」と。對へて曰く、「禮の以って國を為む可きや久し。天地と並ぶ。君令し臣共し、父慈に子孝に、兄愛し弟敬し、夫和し妻柔に、姑慈に婦聽く、禮なり。君令して違はず、臣共して貳(ふたごころ)あらず、父慈にして教へ、子孝にして箴(いさ)め、兄愛して友に、弟敬して順ひ、夫和して義あり、妻柔にして正しく、姑慈にして從ひ、婦聽きて婉(ゑん)なるは、禮の善物なり」と。公曰く、「善いかな。寡人今にして後に此の禮の上を聞く」と。對へて曰く、「先王の天地に稟くる所にして、以って其の民を為むるなり。是を以って先王之を上ぶ」と。

現代語訳

それを祝って歌い、かつ舞え』とあります。陳氏の施しを、民は歌い舞って讃えています。後の世に公室が少しでも怠り、陳氏が滅びずにいれば、この国は陳氏の国となるでしょう」。景公は言った。「よく言った。ではどうすればよいのか」。晏子は答えた。「ただ礼によってのみ、これを止めることができます。礼の定めでは、大夫の家の施しは国全体に及んではならず、民は住まいを移さず、農民は土地を移らず、工人や商人は生業を変えず、士は身分を越えず、官吏は職分を越えて驕らず、大夫は公の利益を自分のものにしません」。公は言った。「よく言った。だが私にはそれができなかった。私は今になって初めて、礼によって国を治められることを知った」。晏子は答えた。「礼によって国を治められることは、はるか昔からのことです。礼は天地と並んで存在します。君は命じ、臣は恭しく従い、父は慈しみ、子は孝行し、兄は愛し、弟は敬い、夫は和やかに、妻は柔らかに、姑は慈しみ、嫁は聞き従う。これが礼です。君は命じても道に違わず、臣は恭しく従っても二心を持たず、父は慈しんでも教え導き、子は孝行しても諫め、兄は愛しても友として接し、弟は敬っても素直に従い、夫は和やかでも筋を通し、妻は柔らかでも正しく、姑は慈しんでも相手に従い、嫁は聞き従ってもしとやかである。これが礼のよいところです」。公は言った。「よく言った。私は今になって初めて、この礼の尊さを聞いた」。晏子は答えた。「礼は先王が天地から受けて、民を治めるのに用いたものです。だから先王はこれを尊んだのです」。

解説

陳氏が民の心をつかんでいると聞いた景公が対策を問うと、晏子は「唯だ禮以って之を已む可し」と答える。ここでいう礼は儀式の作法ではなく、身分と職分の秩序である。大夫の施しが国全体に及ばないようにし、民が身分や生業を勝手に移さないようにすれば、一族が国家の役割を奪うことはできない。つまり陳氏の施しを「善行」ではなく、公の役割の侵食として捉えている。続く「君令し臣共す」以下は、礼を上下十の関係で示す。読みどころは後半で、「父慈にして教へ、子孝にして箴む」のように、それぞれの徳に歯止めを添えている点である。慈しむだけでは甘やかしになり、孝行するだけでは盲従になる。一方の徳が、もう一方の働きで均衡を保つ構造になっている。役割を定めるだけでなく、その役割がいき過ぎないための対を持つという考え方は、組織の役割設計を考えるうえでも示唆がある。

この章句が説くこと

礼秩序職分均衡民心国家

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