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春秋左氏伝 / 昭公二十五年 僂句、余を欺かず

初。臧昭伯如晉。臧會竊其寶龜僂句。以卜為信與僭。僭吉。臧氏老將如晉問。會請往。昭伯問家故。盡對。及内子與母弟叔孫。則不對。再三問。不對。歸。及郊。會逆。問。又如初。至。次於外而察之。皆無之。執而戮之。逸奔郈。郈魴假使為賈正焉。計於季氏。臧氏使五人。以戈楯伏諸桐汝之閭。會出逐之。反奔。執諸季氏中門之外。平子怒曰。何故以兵入吾門。拘臧氏老。季臧有惡。及昭伯從公。平子立臧會。會曰。僂句不余欺也。楚子使薳射城州屈。復茄人焉。城丘皇。遷訾人焉。使熊相禖郭巢。季然郭卷。子大叔聞之。曰。楚王將死矣。使民不安其土。民必憂。憂將及王。弗能久矣。

新字:初。臧昭伯如晋。臧会窃其宝亀僂句。以卜為信与僭。僭吉。臧氏老将如晋問。会請往。昭伯問家故。尽対。及内子与母弟叔孫。則不対。再三問。不対。帰。及郊。会逆。問。又如初。至。次於外而察之。皆無之。執而戮之。逸奔郈。郈魴仮使為賈正焉。計於季氏。臧氏使五人。以戈楯伏諸桐汝之閭。会出逐之。反奔。執諸季氏中門之外。平子怒曰。何故以兵入吾門。拘臧氏老。季臧有悪。及昭伯従公。平子立臧会。会曰。僂句不余欺也。楚子使薳射城州屈。復茄人焉。城丘皇。遷訾人焉。使熊相禖郭巣。季然郭巻。子大叔聞之。曰。楚王将死矣。使民不安其土。民必憂。憂将及王。弗能久矣。

書き下し

初め、臧昭伯晉に如く。臧會其の寶龜僂句(ろうこう)を竊み、以って信と僭(せん)とを為すを卜す。僭吉なり。臧氏の老將に晉に如きて問はんとす。會往かんことを請ふ。昭伯家の故を問ふ。盡く對ふ。内子と母弟叔孫とに及べば、則ち對へず。再三問ふも、對へず。歸りて郊に及ぶ。會逆ふ。問ふに、又初めの如し。至り、外に次りて之を察するに、皆之無し。執へて之を戮せんとす。逸れて郈に奔る。郈魴假(こうほうか)、使ひて賈正と為す。季氏に計(はか)る。臧氏五人をして、戈楯を以って諸を桐汝の閭に伏せしむ。會出づ、之を逐ふ。反り奔る。諸を季氏の中門の外に執ふ。平子怒りて曰く、「何の故に兵を以って吾が門に入るか」と。臧氏の老を拘ふ。季・臧惡有り。昭伯の公に從ふに及び、平子臧會を立つ。會曰く、「僂句余を欺かざるなり」と。楚子、薳射(いえき)をして州屈に城かしめ、茄人を焉に復す。丘皇に城き、訾人を焉に遷す。熊相禖(ゆうしょうばい)をして巢に郭せしめ、季然をして卷に郭せしむ。子大叔之を聞きて曰く、「楚王將に死せんとす。民をして其の土に安んぜざらしむ、民必ず憂へん。憂ひ將に王に及ばんとす。久しくする能はざらん」と。

現代語訳

これより前、臧昭伯(臧孫賜、魯の大夫)が晋へ行ったとき、一族の臧会は昭伯の宝である亀甲「僂句」を盗み、誠実にふるまうのと欺くのとどちらがよいかを占った。欺くほうが吉と出た。臧氏の家宰が晋へ行って昭伯の安否を問おうとしたとき、臧会は自分が行くと申し出た。昭伯が家のことを尋ねると、臧会はすべて答えた。ところが話が昭伯の妻と同母弟の叔孫のことに及ぶと、答えなかった。二度三度と問うても答えなかった。昭伯が帰国して都の郊外まで来たとき、臧会が出迎えた。昭伯がまた尋ねると、やはり前と同じであった。昭伯は都に着くと、家に入らず外に宿って調べさせたが、妻と弟には何の問題もなかった(臧会は疑わせるように振る舞ったのである)。昭伯は臧会を捕らえて処刑しようとしたが、臧会は逃げて郈へ走った。郈の邑宰である郈魴仮は、臧会を市場の役人である賈正に任じた。臧会が会計の報告のために季氏のもとへ行ったとき、臧氏は五人に戈と盾を持たせて桐汝の里門に待ち伏せさせた。臧会が出てきたので追いかけたが、臧会は引き返して逃げ、季氏の中門の外で捕らえられた。平子(季平子)は怒って「なぜ武器を持って私の門に入るのか」と言い、臧氏の家宰を拘束した。こうして季氏と臧氏は不仲になった。昭伯が昭公に従って亡命すると、平子は臧会を臧氏の跡継ぎに立てた。臧会は「僂句は私を欺かなかった」と言った。楚子(平王)は薳射(いえき)に州屈に城を築かせて、茄の人々をそこに戻し、丘皇に城を築いて訾の人々をそこに移した。さらに熊相禖(ゆうしょうばい)に巣の外郭を、季然に巻の外郭を築かせた。子大叔(游吉、鄭の執政)はこれを聞いて言った。「楚王はもうじき死ぬだろう。民をその土地に安住させないのだから、民は必ず憂える。その憂いは王に及ぶだろう。長くはもつまい」。

解説

後半は季氏と臧氏が不和になったいきさつで、主役は臧会という小人物である。臧会は宝の亀で「信」と「僭」、つまり誠実と欺瞞のどちらが吉かを占い、欺瞞が吉と出た。そこで主人の昭伯に家のことを問われると、妻と弟のことだけ答えず、疑念を抱かせた。答えないことで嘘をつかずに疑いを植える手口である。露見して逃げた先が季氏の勢力圏で、臧氏の追手が季氏の門に踏み込んだことから両家の対立が生じ、昭伯が昭公に従って亡命すると、平子は臧会に家を継がせた。「僂句余を欺かざるなり」という結びは、占いが当たったというより、欺瞞が権力の隙間を渡っていく皮肉として読める。後段の楚の記事では、子大叔が民を強制移住させる楚の平王の死を予言する。黙っていることも情報の操作になりうるし、組織の対立はそうした小さな操作に乗じて広がることがある。

この章句が説くこと

欺瞞占い讒言派閥対立民心移住政策

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