春秋左氏伝 / 昭公二十一年 費無極、賄に動く
蔡侯朱出奔楚。費無極取貨於東國。而謂蔡人曰。朱不用命於楚。君王將立東國。若不先從王欲。楚必圍蔡。蔡人懼。出朱而立東國。朱愬于楚。楚子將討蔡。無極曰。平侯與楚有盟。故封其子。有二心。故廢之。靈王殺隱大子。其子與君同惡。德君必甚。又使立之。不亦可乎。且廢置在君。蔡無他矣。公如晉。及河鼓叛晉。晉將伐鮮虞。故辭公。
新字:蔡侯朱出奔楚。費無極取貨於東国。而謂蔡人曰。朱不用命於楚。君王将立東国。若不先従王欲。楚必囲蔡。蔡人懼。出朱而立東国。朱愬于楚。楚子将討蔡。無極曰。平侯与楚有盟。故封其子。有二心。故廃之。霊王殺隠大子。其子与君同悪。徳君必甚。又使立之。不亦可乎。且廃置在君。蔡無他矣。公如晋。及河鼓叛晋。晋将伐鮮虞。故辞公。
書き下し
蔡侯朱出でて楚に奔る。費無極貨を東國に取りて、蔡人に謂ひて曰く、「朱は命を楚に用ゐず。君王將に東國を立てんとす。若し先づ王の欲に從はずんば、楚必ず蔡を圍まん」と。蔡人懼れ、朱を出だして東國を立つ。朱楚に愬ふ。楚子將に蔡を討たんとす。無極曰く、「平侯楚と盟有り、故に其の子を封ず。二心有り、故に之を廢す。靈王隱大子を殺す。其の子君と惡を同じくす。君を德とすること必ず甚だしからん。又之を立てしむ、亦た可ならずや。且つ廢置は君に在り、蔡に他無からん」と。公晉に如く。河に及びて、鼓晉に叛く。晉將に鮮虞を伐たんとす、故に公を辭す。
現代語訳
蔡侯朱が国を出て楚に亡命した。楚の費無極(ひむきょく、平王の寵臣)は蔡の東国(とうこく、隠太子の子)から賄賂を受け取り、蔡の人々に言った。「朱は楚の命令に従わない。わが君王は東国を立てようとしておられる。もし先に王の望みに従わなければ、楚は必ず蔡を包囲するだろう」。蔡の人々は恐れて、朱を追い出し東国を立てた。朱は楚に訴え、楚の平王は蔡を討とうとした。無極は言った。「蔡の平侯は楚と盟約があったので、その子(朱)を君に封じました。ところが朱は二心を抱いたので廃したのです。かつて霊王は(蔡の)隠太子を殺しました。その子の東国は、君と同じく霊王を憎む者であり、君を必ずや深く徳とするでしょう。しかも君が彼を立てたことにすれば、それでよいではありませんか。そのうえ君主を廃するも立てるも君次第ということになれば、蔡は他国に心を寄せることはありません」。魯の昭公が晋へ行こうとした。黄河まで来たとき、鼓の国が晋に背いた。晋は鮮虞を討とうとしていたので、昭公の来訪を断った。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『都鄙問答』卷之二・或學者、商人ノ學問ヲ譏ノ段曰く、其の詫人より礼銀を受けとり、事を取り持つは、商人ばかりにて候や。商人の外にも、此の類あるべきことなり。答ふ、商人多くは道を聞かざる故、かやうの類有り。又道を知りて、事を取り捌く者は、左様の不義はせざることなり。仮令御領家領の庄屋年寄にても、上の正しき御政道を受けて、事を取り持つ身として、小百姓より、礼銀などを請け取ること有るべきに非ず。元来士と云はるる身が、下々より密々に、礼銀などを請くることあらば、定めて贔屓の沙汰に至るべし。下々と並んで、何ごとにても取り持つ人を、士と云ふべきか。其は盗人と云ふ者にて、士にはあらず。上にたつ人、下より賂などを受けて、政道たつべきや。仮令当分は知れずとも、天知る地知る我知る人知るなれば、終にはあらはれて、天の罰を受くべし。天罰を知らざる者、天下静謐の世に有るべからず。然れ共売人は士にあらざれば、かやうなる不義有るなり。毫釐ほども道に志あらば、なすべきことに非ず。
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『秘本玉くしげ』下 使う者を罰すこれを止る法は、まづ賄を取者を禁むるのみならず、これをつかふ者をきびしくいましめて、何事によらずいささかにても賄をつかふ者相しるるに於ては、急度曲事に申付べしとの旨をつねづねふれおかれて、もし犯す者あらんには、一人二人きびしく咎められなどせば、つかふ者は勿論にて、とる人もおのづからきみわろかるべし。上の制禁ならんには、これをつかはぬを怒ることも得せじ。そもそも賄は、つかふ者にはとがなくして、罪は取者にある事なれ共、取者をのみ制しては止がたければ、つかふ者をいましむるも一つの権道なるべきにや。
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『甲陽軍鑑』品第四十一国の仕置武士までの事にいろはせ給へば、其家老必らず賄賂にふけり、礼物をもつて諸役者に諸奉公人共なるにより、彼役者どもの存分我立身したることわざをば、死するまでもよきことと存ずるに付、いはんや存生さかんの時、我に音信つかふ人をば善悪の弁もなく、これはよき人と存じ、御大将へ出頭よく取成て、礼物つかふ人ばかり立身して本のよき者はおし付られ、心いさむ事なく、さながら其大将へ無沙汰申し、ゆく〳〵用にも立まじきと思ふなり、
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『不動智神妙録』諫言 其四 身を正す取ると捨つるとは義を以てすると云へり、唯今寵臣たるにより、諸大名より賄を厚くし、欲に義を忘れ候事、努々不可有候、貴殿乱舞を好み、自身の能に奢り、諸大名衆へ押て参られ、能を勧められ候事、偏に病と存じ候なり、上の唱は猿楽の様に申し候由、また挨拶のよき大名衆をば、御前に於てもつよく御取成しなさるゝ由、重ねて能く能く御思案可然歟、歌に「心こそ心迷はす心なれ心に心心ゆるすな」
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『秘本玉くしげ』下 賄賂の損得すべて世中に此筋盛んなるゆゑに、おのづから国政正しくは行はれがたく、又上に損失ある事おびただしく、下にも損害甚多し。たとへば、金千両入べきところをも、役人へ三百両賄すれば五百両にてすむゆゑに、下にも二百両の得あれども、上には五百両だけの所の損あり。或は五百両にてすむべき事も、賄をせざれば七百両も八百両も入りて、其二百両三百両は脇道へぬけ行やうの事も有て、上にも利なく、下には大損ありて、あまつさへ上を恨み奉ること甚し。されば、国政の大害、下民の大害、此賄に過たるはなし。
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『秘本玉くしげ』下 賄賂は人情惣じて物を得ることを願ふは、千人万人まぬがれがたき人情のつねにて、本より然るべき理也。それに付ては、物を人のくるるを悦ぶも又人情なる故に、物を人に贈りて志のほどをあらはすも、本より然あるべき道理、古今いづれの国とても皆同じ事也。されば万の事に、その相手の人を悦ばせて其事を成就せんとはかるに、賄賂といふ物をつかふ事のあるも、おのづから然るべきいきほひ也。さて物を得るを悦ぶは本より人情なれば、その賄を受るもさのみ咎ともいひがたし。殊更此事、世中のなべてのならひと成ぬる事なれば、其人を深くとがむべき事にもあらず。然れ共、此賄の筋は甚国政の害となる事故に、古より深くこれをいましむる事なれども、とにかくに止がたきものにして、次第に増長し、近来は殊に甚しき事共あり。
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