師導古典を学びたいすべての人に

秘本玉くしげ / 下 使う者を罰す

これを止る法は、まづ賄を取者を禁むるのみならず、これをつかふ者をきびしくいましめて、何事によらずいささかにても賄をつかふ者相しるるに於ては、急度曲事に申付べしとの旨をつねづねふれおかれて、もし犯す者あらんには、一人二人きびしく答められなどせば、つかふ者は勿論にて、とる人もおのづからきみわろかるべし。上の制禁ならんには、これをつかはぬを怒ることも得せじ。そもそも賄は、つかふ者にはとがなくして、罪は取者にある事なれ共、取者をのみ制しては止がたければ、つかふ者をいましむるも一つの權道なるべきにや。

新字:これを止る法は、まづ賄を取者を禁むるのみならず、これをつかふ者をきびしくいましめて、何事によらずいささかにても賄をつかふ者相しるるに於ては、急度曲事に申付べしとの旨をつねづねふれおかれて、もし犯す者あらんには、一人二人きびしく答められなどせば、つかふ者は勿論にて、とる人もおのづからきみわろかるべし。上の制禁ならんには、これをつかはぬを怒ることも得せじ。そもそも賄は、つかふ者にはとがなくして、罪は取者にある事なれ共、取者をのみ制しては止がたければ、つかふ者をいましむるも一つの権道なるべきにや。

書き下し

これを止る法は、まづ賄を取者を禁むるのみならず、これをつかふ者をきびしくいましめて、何事によらずいささかにても賄をつかふ者相しるるに於ては、急度曲事に申付べしとの旨をつねづねふれおかれて、もし犯す者あらんには、一人二人きびしく答められなどせば、つかふ者は勿論にて、とる人もおのづからきみわろかるべし。上の制禁ならんには、これをつかはぬを怒ることも得せじ。そもそも賄は、つかふ者にはとがなくして、罪は取者にある事なれ共、取者をのみ制しては止がたければ、つかふ者をいましむるも一つの権道なるべきにや。

現代語訳

これを止める方法は、まず賄賂を取る者を禁じるだけでなく、これを使う者を厳しく戒めて、何事によらずわずかでも賄賂を使う者が知れたときは、必ず不正として処分すると常々触れ出しておき、もし犯す者があれば、一人二人を厳しく咎めたりすれば、使う者はもちろん、取る人もおのずと気味悪くなるだろう。上の禁令であるなら、これを使わないことを怒ることもできまい。そもそも賄賂は、使う者には咎がなく、罪は取る者にあることだが、取る者だけを制しては止めがたいのだから、使う者を戒めるのも一つの方便であろうか。

解説

賄賂をどう止めるかについて、宣長は正攻法をいったん脇に置く。「賄はつかふ者にはとがなくして、罪は取者にある事なれ共」——筋論では、悪いのは受け取る側だ。それは認めたうえで、「取者をのみ制しては止がたければ」と現実を見る。受け取る側だけを取り締まっても止まらない。だから使う側を罰する。自分でも「一つの權道」——方便だ、と断っている。筋を曲げていることを自覚したうえで採る手だという位置づけである。仕掛けも巧みだ。使う側を禁じておけば「上の制禁ならんには、これをつかはぬを怒ることも得せじ」——賄賂を持ってこない業者に、受け取る側は腹を立てられなくなる。断る側に、禁令という盾を渡している。

この章句が説くこと

賄賂使う者を戒む権道断るための盾

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる