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春秋左氏伝 / 襄公三十年 子産、伯有を哭す

駟帶率國人以伐之。皆召子產。子產曰兄弟而及此。吾從天所與。伯有死於羊肆。子產襚之。枕之股而哭之。斂而殯諸伯有之臣在市側者。既而葬諸斗城。子駟氏欲攻子產。子皮怒之。曰。禮。國之幹也。殺有禮。禍莫大焉。乃止。於是游吉如晉還。聞難不入。復命于介。八月。甲子。奔晉。駟帶追之。及酸棗。與子上盟。用兩珪質于河。使公孫肸入盟大夫。己巳。復歸。書曰。鄭人殺良霄。不稱大夫。言自外入也。於子蟜之卒也。將葬。公孫揮與裨灶晨會事焉。過伯有氏。其門上生莠。子羽曰。其莠猶在乎。於是歲在降婁。降婁中而旦。

新字:駟帯率国人以伐之。皆召子産。子産曰兄弟而及此。吾従天所与。伯有死於羊肆。子産襚之。枕之股而哭之。斂而殯諸伯有之臣在市側者。既而葬諸斗城。子駟氏欲攻子産。子皮怒之。曰。礼。国之幹也。殺有礼。禍莫大焉。乃止。於是游吉如晋還。聞難不入。復命于介。八月。甲子。奔晋。駟帯追之。及酸棗。与子上盟。用両珪質于河。使公孫肸入盟大夫。己巳。復帰。書曰。鄭人殺良霄。不称大夫。言自外入也。於子蟜之卒也。将葬。公孫揮与裨灶晨会事焉。過伯有氏。其門上生莠。子羽曰。其莠猶在乎。於是歳在降婁。降婁中而旦。

書き下し

駟帶國人を率ゐて以て之を伐つ。皆子產を召す。子產曰く、「兄弟にして此に及ぶ。吾は天の與する所に從はん」と。伯有羊肆に死す。子產之に襚し、之を股に枕して之を哭し、斂めて諸を伯有の臣の市側に在る者に殯す。既にして諸を斗城に葬る。子駟氏子產を攻めんと欲す。子皮之を怒りて曰く、「禮は國の幹なり。禮有るを殺すは、禍焉より大なるは莫し」と。乃ち止む。是に於て游吉晉に如きて還り、難を聞きて入らず、介に復命せしむ。八月、甲子、晉に奔る。駟帶之を追ひ、酸棗に及ぶ。子上と盟ひ、兩珪を用て河に質す。公孫肸をして入りて大夫と盟はしむ。己巳、復た歸る。書して「鄭人良霄を殺す」と曰ひ、大夫と稱せざるは、外より入るを言ふなり。子蟜の卒するに於けるや、將に葬らんとし、公孫揮と裨灶と晨に會して事とす。伯有氏を過ぐるに、其の門上に莠を生ず。子羽曰く、「其の莠猶ほ在るか」と。是に於て歲は降婁に在り、降婁中して旦なり。

現代語訳

駟帯(子上、駟氏の当主)が国人を率いて伯有を攻めた。双方がともに子産を呼び寄せようとした。子産は言った。「兄弟同士がこんなことになってしまった。私は天が味方するほうに従おう」。伯有は羊を売る市場で死んだ。子産は遺体に衣を着せ、その頭を自分の股に載せて哭礼を行い、納棺して、市場のそばに住む伯有の家臣の家に仮埋葬した。のちに斗城に葬った。駟氏の者たちは子産を攻めようとしたが、子皮はこれに怒って言った。「礼は国の幹である。礼をわきまえた人を殺すことほど大きな禍はない」。そこで駟氏は思いとどまった。このとき游吉(子大叔)は晋への使いから帰るところであったが、内乱を聞いて都に入らず、副使に復命を託した。八月甲子の日、游吉は晋へ亡命しようとした。駟帯がこれを追いかけ、酸棗で追いついた。游吉は子上(駟帯)と盟い、二つの圭玉を黄河に沈めて誓いの証とした。そして公孫肸を都に入らせて大夫たちと盟わせ、己巳の日に帰国した。『春秋』が「鄭人が良霄(伯有)を殺した」と記し、彼を大夫と呼ばなかったのは、いったん国外へ出て外から攻め入った者だからである。これより前、子蟜(公孫蠆)が亡くなって葬儀を行おうとしたとき、公孫揮(子羽)と裨灶が早朝に会って葬儀の事に当たった。伯有の家の前を通ると、門の上に雑草(莠)が生えていた。子羽が言った。「あの雑草はまだ残っているだろうか(伯有の家はいつまで続くだろうか)」。このとき歳星(木星)は降婁の宿にあり、降婁が南中したところで夜が明けた。

解説

伯有が討たれ、その死後処理をめぐる話である。駟帯と伯有の双方から呼ばれた子産は、兄弟同士の争いにはどちらにも加わらず「天の与する所に従はん」と答えた。そして伯有が市場で死ぬと、遺体に衣を着せ、頭を自分の股に載せて哭した。勝者の駟氏には挑発にも見えるこの行為を、子皮は「礼は国の幹なり。礼有るを殺すは、禍焉より大なるは莫し」と言って守った。礼とは単なる儀式ではなく、敵味方を超えて通用する共通の筋目であり、それを守る人を殺せば国の骨組みが崩れるという認識である。『春秋』が伯有を大夫と呼ばないのは、国外から武力で戻った者として扱ったためで、書法が行為の評価を担っている。門に生えた雑草と歳星から伯有家の滅亡を読む裨灶の占いは次の句に続く。勝者に従うことと敗者への礼を欠かないことは両立しうるのか、子産の振る舞いは一つの答えを示している。

この章句が説くこと

礼中立書法占い敗者への処遇

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