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春秋左氏伝 / 襄公二十五年 子産、捷を晋に献ず

八月。楚滅舒鳩。衛獻公入于夷儀。鄭子產獻捷于晉。戎服將事。晉人問陳之罪。對曰。昔虞閼父為周陶正。以服事我先王。我先王賴其利器用也。與其神明之後也。庸以元女大姬。配胡公而封之陳。以備三恪。則我周之自出。至于今是賴。桓公之亂。蔡人欲立其出。我先君莊公奉五父而立之。蔡人殺之。我又與蔡人奉戴厲公。至於莊宣。皆我之自立。夏氏之亂。成公播蕩。又我之自入。君所知也。今陳忘周之大德。蔑我大惠。棄我姻親。介恃楚眾。以憑陵我。敝邑。不可億逞。我是以有往年之告。未獲成命。則有我東門之役。當陳隧者。井堙木刊。敝邑大懼不競。而恥大姬。天誘其衷。

新字:八月。楚滅舒鳩。衛献公入于夷儀。鄭子産献捷于晋。戎服将事。晋人問陳之罪。対曰。昔虞閼父為周陶正。以服事我先王。我先王頼其利器用也。与其神明之後也。庸以元女大姫。配胡公而封之陳。以備三恪。則我周之自出。至于今是頼。桓公之乱。蔡人欲立其出。我先君荘公奉五父而立之。蔡人殺之。我又与蔡人奉戴厲公。至於荘宣。皆我之自立。夏氏之乱。成公播蕩。又我之自入。君所知也。今陳忘周之大徳。蔑我大恵。棄我姻親。介恃楚衆。以憑陵我。敝邑。不可億逞。我是以有往年之告。未獲成命。則有我東門之役。当陳隧者。井堙木刊。敝邑大懼不競。而恥大姫。天誘其衷。

書き下し

八月、楚舒鳩を滅ぼす。衛の獻公夷儀に入る。鄭の子產捷を晉に獻ず。戎服して事を將ふ。晉人陳の罪を問ふ。對へて曰く、「昔、虞閼父周の陶正と為り、以て我が先王に服事す。我が先王其の器用を利するに賴り、其の神明の後なるに與す。庸ひて元女大姬を以て胡公に配して之を陳に封じ、以て三恪に備ふ。則ち我が周の自りて出づる所なり。今に至るまで是れ賴る。桓公の亂に、蔡人其の出を立てんと欲す。我が先君莊公、五父を奉じて之を立つ。蔡人之を殺す。我又蔡人と厲公を奉戴す。莊・宣に至るまで、皆我の自ら立つる所なり。夏氏の亂に、成公播蕩す。又我の自りて入る所なり。君の知る所なり。今陳、周の大德を忘れ、我が大惠を蔑ろにし、我が姻親を棄て、楚の眾を介恃し、以て我が敝邑を憑陵す。億んじ逞くすべからず。我是を以て往年の告有り。未だ成命を獲ずして、則ち我が東門の役有り。陳の隧に當たる者、井堙がれ木刊らる。敝邑大いに競はずして大姬を恥づかしめんことを懼る。天其の衷を誘ひ、

現代語訳

八月、楚は舒鳩を滅ぼした。衛の献公は夷儀に入った。鄭の子産は、陳に勝った戦利品を晋に献上した。軍服を着たまま儀式を行った。晋の人が陳の罪を問いただすと、子産は答えた。「昔、虞閼父(陳の祖、舜の子孫)は周の陶正(陶器づくりを司る官)となって、わが周の先王にお仕えしました。先王は彼が器物を役立てたことを頼みとし、また彼が聖なる舜の子孫であることを重んじて、長女の大姫を胡公(虞閼父の子)に嫁がせて陳に封じ、三恪(前代の王の子孫を客として遇する三国)の一つに加えられました。つまり陳は、わが周王室の娘から出た国であり、今に至るまでその恩を頼りにしているのです。陳の桓公が死んだあとの乱で、蔡の人々は自国の娘が生んだ公子を立てようとしましたが、わが先君荘公は五父を擁して陳君に立てました。蔡の人々は五父を殺しましたが、わが国はまた蔡の人々とともに厲公を擁立しました。荘公・宣公に至るまで、いずれもわが国が立てた君主です。夏氏の乱(夏徴舒の乱)では、陳の成公は国を追われてさまよいましたが、また、わが国の力で国に戻ることができました。これは晋君もご存じのことです。ところが今、陳は周の大恩を忘れ、わが国の大きな恩恵をないがしろにし、わが姻戚の縁を捨て、楚の大軍を頼みにして、わが国を踏みにじりました。とても安んじていられるものではありません。そこでわが国は、先年、晋に訴え出たのですが、まだ許しのお言葉をいただかないうちに、陳が楚とともにわが東門に攻め寄せた戦役が起こりました。陳軍の通った道筋では、井戸は埋められ木は切り倒されました。わが国は、力及ばず、周の大姫の血を引く陳を守ってきた面目まで辱めることになるのではないかと大いに恐れました。ところが天がわが国の真心を導き、

解説

鄭が陳を攻め落とした戦果を、覇者の晋に報告する場面である。晋は、小国どうしの勝手な戦いを快く思っていない。そこで晋の役人は「陳に何の罪があったのか」と問いただす。これに対して子産は、周王室と陳と鄭の関係を数百年さかのぼって語り出す。陳は周の娘の血を引く国であり、鄭は陳の君主を何代にもわたって立ててきた。その恩を忘れて楚を頼み、鄭を攻めたのが陳の罪だ、という組み立てである。単に「攻められたから攻め返した」とは言わない。周の秩序と恩義の歴史のうえに今回の戦いを置き直し、晋が咎めにくい形にしている。戦場の勝利を外交の場で認めさせるには、事実を並べるだけでなく、相手が受け入れられる筋道で語る必要がある。説明はこのあと、次の句でも続く。

この章句が説くこと

弁論外交正当性恩義歴史認識

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