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春秋左氏伝 / 襄公二十五年 幣を薄くし礼を重んず

秋。七月。己巳。同盟于重丘。齊成故也。趙文子為政。令薄諸侯之幣。而重其禮。穆叔見之。謂穆叔曰。自今以往。兵其少弭矣。齊崔慶新得政。將求善於諸侯。武也。知楚令尹。若敬行其禮。道之以文辭。以靖諸侯。兵可以弭。楚薳子馮卒。屈建為令尹。屈蕩為莫敖。舒鳩人卒叛。楚令尹子木伐之。及離城。吳人救之。子木遽以右師先。子彊。息桓。子捷。子駢。子盂。帥左師以退。吳人居其間七日。子彊曰。久將墊隘。隘乃禽也。不如速戰。請以其私卒誘之。簡師陳以待我。我克則進。奔則亦視之。乃可以免。不然。必為吳禽。從之。五人以其私卒。先擊吳師。吳師奔。登山以望。見楚師不繼。復逐之。傅諸其軍。簡師會之。吳師大敗。遂圍舒鳩。舒鳩潰。

新字:秋。七月。己巳。同盟于重丘。斉成故也。趙文子為政。令薄諸侯之幣。而重其礼。穆叔見之。謂穆叔曰。自今以往。兵其少弭矣。斉崔慶新得政。将求善於諸侯。武也。知楚令尹。若敬行其礼。道之以文辞。以靖諸侯。兵可以弭。楚薳子馮卒。屈建為令尹。屈蕩為莫敖。舒鳩人卒叛。楚令尹子木伐之。及離城。呉人救之。子木遽以右師先。子彊。息桓。子捷。子駢。子盂。帥左師以退。呉人居其間七日。子彊曰。久将墊隘。隘乃禽也。不如速戦。請以其私卒誘之。簡師陳以待我。我克則進。奔則亦視之。乃可以免。不然。必為呉禽。従之。五人以其私卒。先撃呉師。呉師奔。登山以望。見楚師不継。復逐之。傅諸其軍。簡師会之。呉師大敗。遂囲舒鳩。舒鳩潰。

書き下し

秋、七月、己巳、重丘に同盟す。齊成げばなり。趙文子政を為す。諸侯の幣を薄くして其の禮を重くせしむ。穆叔之に見ゆ。穆叔に謂ひて曰く、「今より以往、兵其れ少しく弭まん。齊の崔・慶新たに政を得、將に善を諸侯に求めんとす。武や楚の令尹を知る。若し敬みて其の禮を行ひ、之を道くに文辭を以てし、以て諸侯を靖んぜば、兵以て弭むべし」と。楚の薳子馮卒し、屈建令尹と為り、屈蕩莫敖と為る。舒鳩の人卒に叛く。楚の令尹子木之を伐ち、離城に及ぶ。吳人之を救ふ。子木遽かに右師を以て先んず。子彊・息桓・子捷・子駢・子盂、左師を帥ゐて以て退く。吳人其の間に居ること七日。子彊曰く、「久しければ將に墊隘せんとす。隘なれば乃ち禽とせられん。速やかに戰ふに如かず。請ふ、其の私卒を以て之を誘はん。師を簡び陳して以て我を待て。我克たば則ち進め、奔らば則ち亦た之を視よ。乃ち以て免るべし。然らずんば、必ず吳の禽と為らん」と。之に從ふ。五人其の私卒を以て先づ吳師を擊つ。吳師奔り、山に登りて以て望み、楚師の繼がざるを見て、復た之を逐ひ、諸を其の軍に傅く。簡師之に會す。吳師大いに敗る。遂に舒鳩を圍む。舒鳩潰ゆ。

現代語訳

秋七月己巳の日、諸侯は重丘で同盟を結んだ。斉と和睦が成ったからである。趙文子(趙武、晋の執政)が政権を担うと、諸侯が晋に納める貢ぎ物を軽くし、そのかわり礼を重んじるようにさせた。穆叔(叔孫豹、魯の卿)が趙文子に会うと、文子は穆叔に言った。「これからは、戦争もいくらかは収まるだろう。斉では崔杼・慶封が新たに政権を握り、諸侯との友好を求めようとしている。私(武)は楚の令尹(屈建)を知っている。もし慎んで礼を行い、言葉を尽くして道理で導き、それで諸侯を安定させることができれば、戦争はやめさせられる」。楚の薳子馮が死に、屈建(子木)が令尹となり、屈蕩が莫敖となった。舒鳩の人々がついに楚に背いた。楚の令尹子木はこれを討ち、離城まで進んだ。呉の人々が舒鳩を救いに来た。子木は急いで右軍を率いて先に進み、子彊・息桓・子捷・子駢・子盂の五人が左軍を率いて退いた。呉軍は楚の両軍の間に七日間とどまった。子彊が言った。「長引けば、湿地で身動きがとれなくなる。身動きがとれなくなれば捕らえられてしまう。速やかに戦うほうがよい。われらの私兵で呉軍を誘い出させてほしい。精兵を選んで陣を敷き、われらを待っていてくれ。われらが勝てば進み、逃げ帰ってきたら様子を見て対処せよ。そうすれば免れることができる。さもなければ、必ず呉の捕虜になるだろう」。皆これに従った。五人は私兵を率いて先に呉軍を攻撃した。呉軍は逃げ、山に登って見渡し、楚の本隊が続いてこないのを見ると、ふたたび追いかけ、楚の陣に迫った。そこへ選り抜きの楚軍が合流し、呉軍は大敗した。楚はそのまま舒鳩を包囲し、舒鳩は崩れた。

解説

前半は、晋の執政に就いた趙文子(趙武)の方針表明である。彼は諸侯から取り立てる貢ぎ物を減らし、そのぶん礼を重んじた。覇者が小国から財を吸い上げるのをやめ、儀礼と言葉で結びつきを保つ。この「兵其れ少しく弭まん」という見通しは、二年後に宋で開かれる弭兵の会(襄公二十七年)へとつながる。後半は楚と呉の戦いで、楚の子彊が膠着を破る策を出す。自分たちの私兵を囮にし、本隊は精兵を選んで陣を敷いて待つ。囮が勝てば進み、負けても本隊が受け止める。退くふりで敵を引き出す古典的な戦法である。前半は取り立てを減らして信頼を得る方針、後半は長期戦のリスクを見切る判断で、どちらも手元の資源の使い方をめぐる話として読める。

この章句が説くこと

覇権礼平和構想戦略決断

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