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春秋左氏伝 / 襄公二年 虎牢に城く

秋。七月。庚辰。鄭伯睔卒。於是子罕當國。子駟為政。子國為司馬。晉師侵鄭。諸大夫欲從晉。子駟曰。官命未改。會于戚。謀鄭故也。孟獻子曰。請城虎牢以偪鄭。知武子曰。善。鄫之會。吾子聞崔子之言。今不來矣。滕薛小邾之不至。皆齊故也。寡君之憂。不唯鄭。罃將復於寡君。而請於齊。得請而告。吾子之功也。若不得請。事將在齊。吾子之請。諸侯之福也。豈唯寡君賴之。穆叔聘于宋。通嗣君也。冬。復會于戚。齊崔武子。及滕薛小邾之大夫皆會。知武子之言故也。遂城虎牢。鄭人乃成。楚公子申為右司馬。多受小國之賂。以偪子重。子辛。楚人殺之。故書曰。楚殺其大夫公子申。

新字:秋。七月。庚辰。鄭伯睔卒。於是子罕当国。子駟為政。子国為司馬。晋師侵鄭。諸大夫欲従晋。子駟曰。官命未改。会于戚。謀鄭故也。孟献子曰。請城虎牢以偪鄭。知武子曰。善。鄫之会。吾子聞崔子之言。今不来矣。滕薛小邾之不至。皆斉故也。寡君之憂。不唯鄭。罃将復於寡君。而請於斉。得請而告。吾子之功也。若不得請。事将在斉。吾子之請。諸侯之福也。豈唯寡君頼之。穆叔聘于宋。通嗣君也。冬。復会于戚。斉崔武子。及滕薛小邾之大夫皆会。知武子之言故也。遂城虎牢。鄭人乃成。楚公子申為右司馬。多受小国之賂。以偪子重。子辛。楚人殺之。故書曰。楚殺其大夫公子申。

書き下し

秋、七月、庚辰、鄭伯睔(こん)卒す。是に於て子罕、國に當たり、子駟、政を爲し、子國、司馬と爲る。晉の師、鄭を侵す。諸大夫、晉に從はんと欲す。子駟曰く、「官命未だ改めず」と。戚に會す。鄭の故を謀るなり。孟獻子曰く、「請ふ、虎牢に城きて以て鄭に偪らん」と。知武子曰く、「善し。鄫の會に、吾子、崔子の言を聞けり。今來らず。滕・薛・小邾の至らざるは、皆齊の故なり。寡君の憂ひは、唯だ鄭のみならず。罃、將に寡君に復して、齊に請はんとす。請を得て告げば、吾子の功なり。若し請を得ずんば、事將に齊に在らんとす。吾子の請は、諸侯の福なり。豈に唯だ寡君のみ之に賴らんや」と。穆叔、宋に聘す。嗣君を通ずるなり。冬、復た戚に會す。齊の崔武子及び滕・薛・小邾の大夫、皆會す。知武子の言の故なり。遂に虎牢に城く。鄭人乃ち成(たひら)ぐ。楚の公子申、右司馬と爲り、多く小國の賂を受けて、以て子重・子辛に偪る。楚人之を殺す。故に書して曰く、「楚、其の大夫公子申を殺す」と。

現代語訳

秋七月庚辰の日、鄭伯睔(こん、成公)が亡くなった。そこで子罕(しかん、公子喜)が国政を代行し、子駟が政務を執り、子国(しこく、公子発)が司馬となった。晋の軍が鄭を侵した。鄭の大夫たちは晋に従おうとした。子駟は言った。「先君のご命令はまだ改められていない」(成公の遺志を守って楚から離れなかったのである)。諸侯は戚に会した。鄭のことを相談するためである。魯の孟献子が言った。「虎牢に城を築いて鄭に圧力をかけましょう」。晋の知武子(荀罃)は言った。「よいお考えです。先の鄫(そう)の会で、あなたは齊の崔子(崔杼)の言葉を聞かれたでしょう。その齊が今回は来ていません。滕・薛・小邾が来ないのも、みな齊のせいです。我が君の心配は鄭だけではありません。私は帰って我が君に報告し、齊に築城への参加を求めましょう。齊が承知すれば、諸侯に告げて城を築く。それはあなたの功績です。もし承知しなければ、次に事を構える相手は齊となるでしょう。あなたの献策は諸侯全体の幸いです。どうして我が君だけがそれに頼るものでしょうか」。穆叔(ぼくしゅく、叔孫豹)が宋に聘問した。新しい君主(襄公)の即位を通知して友好を結ぶためである。冬、諸侯は再び戚に会した。齊の崔武子(崔杼)と、滕・薛・小邾の大夫もみな参加した。知武子の言葉があったからである。こうして虎牢に城を築くと、鄭は晋と講和した。楚の公子申は右司馬となったが、小国からの賄賂を多く受け取り、それを後ろ盾に子重と子辛に圧力をかけた。楚はこれを殺した。だから『春秋』は、罪ある者を国が誅したという意味で「楚がその大夫公子申を殺した」と書いたのである。

解説

鄭の成公が亡くなり、子駟は大夫たちが晋に傾くのを「官命未だ改めず」と抑える。前の句で成公が遺した楚への義理を、死後もしばらく守ったのである。これに対し晋側は、鄭の喉元にあたる要地虎牢に城を築いて圧力をかける策を立てる。読みどころは晋の知武子の応じ方にある。魯の孟献子の献策を「善し」と受け、それをすぐには実行せず、まず会に来なかった齊に参加を求めるという。齊が応じれば築城は孟献子の功、応じなければ齊との対決になる、と。献策の手柄を相手に帰しながら、築城を齊の去就を試す試金石に変えているわけで、実際、冬の会には齊も小国もそろって顔を出した。城一つで鄭を講和に引き出した点も含め、晋の覇業が外交の段取りで再建されていく。末尾の楚の公子申の誅殺は、賄賂を背景に上の者を脅かした者の末路である。一つの施策を、それに乗るかどうかで相手の本心を測る場として使う発想は、交渉の現場でも参考になる。

この章句が説くこと

外交献策功の譲り方圧力覇業賄賂

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