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春秋左氏伝 / 宣公十四年 懐えば必ず貪る

冬,公孫歸父會齊侯于穀,見晏桓子,與之言魯樂。桓子告高宣子曰:「子家其亡乎,懷於魯矣。懷必貪,貪必謀人,謀人,人亦謀己,一國謀之,何以不亡?」孟獻子言於公曰:「臣聞小國之免於大國也,聘而獻物,於是有庭實旅百;朝而獻功,於是有容貌、采章、嘉淑,而有加貨。謀其不免也,誅而薦賄,則無及也。今楚在宋,君其圖之。」公說。

新字:冬,公孫帰父会斉侯于穀,見晏桓子,与之言魯楽。桓子告高宣子曰:「子家其亡乎,懐於魯矣。懐必貪,貪必謀人,謀人,人亦謀己,一国謀之,何以不亡?」孟献子言於公曰:「臣聞小国之免於大国也,聘而献物,於是有庭実旅百;朝而献功,於是有容貌、采章、嘉淑,而有加貨。謀其不免也,誅而薦賄,則無及也。今楚在宋,君其図之。」公説。

書き下し

冬、公孫歸父齊侯に穀に會す。晏桓子に見え、之と魯を樂しむことを言ふ。桓子高宣子に告げて曰く、「子家其れ亡びんか、魯に懷へり。懷へば必ず貪り、貪れば必ず人を謀り、人を謀れば、人も亦た己を謀る。一國之を謀る、何を以てか亡びざらん」と。孟獻子公に言ひて曰く、「臣聞く、小國の大國に免るるや、聘して物を獻じ、是に於て庭實旅百有り。朝して功を獻じ、是に於て容貌・采章・嘉淑有りて、加貨有り。其の免れざるを謀るや、誅せられて賄を薦むるは、則ち及ぶ無きなり。今楚宋に在り、君其れ之を圖れ」と。公說ぶ。

現代語訳

冬、公孫帰父(子家、魯の卿)が斉侯(頃公)と穀で会見した。そこで晏桓子(晏弱、斉の大夫)に会い、魯での暮らしの楽しさをあれこれと語った。桓子は高宣子(高固)に告げて言った。「子家はおそらく亡びるだろう。魯での地位に執着している。執着すれば必ず欲張り、欲張れば必ず人を陥れようと謀り、人を謀れば、人もまた自分を謀る。一国じゅうが彼を謀るのだ、どうして亡びずにいられよう」。孟献子(仲孫蔑、魯の大夫)が宣公に言った。「私の聞くところでは、小国が大国の害を免れるには、使者を送って贈り物を献じ、そのときは庭いっぱいに百品もの品を並べます。君自ら朝見して功績を報告し、そのときは容姿を整え、彩りある衣装をまとい、美しい言葉を添え、さらに贈り物を加えます。免れられなくなってから策を講じ、責められたあとで賄賂を差し出しても、もう間に合いません。いま楚は宋を攻めています。君はよくよくお考えください」。公は喜んでこれに従った。

解説

一見ばらばらな二つの話が並ぶ。まず斉の晏桓子の人物評である。魯の公孫帰父が、会談の場で自国での暮らしの楽しさを語るのを聞き、晏桓子は「懷へば必ず貪り、貪れば必ず人を謀り、人を謀れば、人も亦た己を謀る」と連鎖で説いて、その没落を予言した。地位や居心地への執着が欲を生み、欲が人を陥れる企てを生み、企ては必ず跳ね返ってくる。実際に帰父は数年後、三桓を除こうと謀って失敗し、斉へ亡命することになる。もう一つは孟献子の進言で、楚が宋を攻めているいま、魯は先に楚へ礼を尽くしておくべきだという。責められてから贈り物をしても間に合わない、危機は訪れる前に手を打てという話である。前者は個人の執着が破滅を招く構造を、後者は組織が大国との関係で先回りする必要を述べている。どちらも、事が起きてから慌てるのでは遅いという点で通じている。

この章句が説くこと

執着貪欲先手外交人物評

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