春秋左氏伝 / 文公七年 同寮の誼
訓卒利兵,秣馬蓐食,潛師夜起。戊子,敗秦師于令狐,至于刳首。己丑,先蔑奔秦,士會從之。先蔑之使也,荀林父止之曰:「夫人大子猶在,而外求君,此必不行,子以疾辭,若何?不然,將及,攝卿以往,可也,何必子,同官為寮,吾嘗同寮,敢不盡心乎?」弗聽,為賦《板》之三章,又弗聽。及亡,荀伯盡送其帑,及其器用財賄於秦,曰:「為同寮故也。」士會在秦三年,不見士伯。其人曰:「能亡人於國,不能見於此,焉用之?」士季曰:「吾與之同罪,非義之也,將何見焉?」及歸,遂不見。
新字:訓卒利兵,秣馬蓐食,潜師夜起。戊子,敗秦師于令狐,至于刳首。己丑,先蔑奔秦,士会従之。先蔑之使也,荀林父止之曰:「夫人大子猶在,而外求君,此必不行,子以疾辞,若何?不然,将及,摂卿以往,可也,何必子,同官為寮,吾嘗同寮,敢不尽心乎?」弗聴,為賦《板》之三章,又弗聴。及亡,荀伯尽送其帑,及其器用財賄於秦,曰:「為同寮故也。」士会在秦三年,不見士伯。其人曰:「能亡人於国,不能見於此,焉用之?」士季曰:「吾与之同罪,非義之也,将何見焉?」及帰,遂不見。
書き下し
卒を訓へ兵を利くし、馬に秣(まぐさか)ひ蓐食(じょくしょく)し、師を潛めて夜起つ。戊子、秦の師を令狐に敗り、刳首に至る。己丑、先蔑秦に奔り、士會之に從ふ。先蔑の使ひするや、荀林父之を止めて曰く、「夫人・大子猶ほ在り、而るに外に君を求む、此れ必ず行はれじ。子疾を以って辭せば、若何。然らずんば、將に及ばんとす。卿を攝して以って往かば、可なり、何ぞ必ずしも子ならん。官を同じくするを寮と為す、吾嘗て寮を同じくせり、敢へて心を盡くさざらんや」と。聽かず。為に《板》の三章を賦す、又聽かず。亡ぐるに及び、荀伯盡く其の帑と、其の器用財賄とを秦に送りて、曰く、「寮を同じくせしが為の故なり」と。士會秦に在ること三年、士伯を見ず。其の人曰く、「能く人と國に亡げて、此に見ゆる能はず、焉んぞ之を用ゐん」と。士季曰く、「吾之と罪を同じくす、之を義とするに非ざるなり、將た何ぞ見えん」と。歸るに及び、遂に見ず。
現代語訳
兵卒を訓練して武器を研ぎ、馬にまぐさを与え、夜明け前に寝床で食事をとり、軍をひそかに動かして夜のうちに出発した。戊子、秦の軍を令狐で破り、刳首まで追った。己丑、先蔑は秦に亡命し、士会(随会、のちの范武子)もそれに従った。先蔑が公子雍を迎える使者に立つとき、荀林父はこれを止めて言った。「夫人(穆嬴)も太子もまだおられるのに、国外に君主を求めている。これは必ずうまくいかない。あなたは病気を理由に辞退してはどうか。そうでなければ、災いがあなたに及ぶだろう。卿の代理を立てて行かせればよい。どうしてあなたでなければならないことがあろう。同じ官職にある者を寮(同僚)という。私はかつてあなたと同僚であった。どうして心を尽くさずにいられようか」。先蔑は聞かなかった。荀林父は彼のために『詩経』大雅「板」の第三章を歌って諭したが、それでも聞かなかった。先蔑が亡命すると、荀伯(荀林父)はその妻子と器物・財貨をすべて秦に送り届けて言った。「同僚であったがためである」。士会は秦にいること三年、その間ずっと士伯(先蔑)に会わなかった。士会の従者が言った。「あの人と一緒に国を出て亡命できたのに、ここで会うことができないとは。それなら何のために従ったのですか」。士季(士会)は言った。「私はあの人と罪を同じくしただけで、あの人を正しいと思って従ったのではない。どうして会う必要があろう」。のちに晋へ帰るときになっても、ついに会わなかった。
解説
この章句が説くこと
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