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春秋左氏伝 / 文公六年 趙盾、国政を為す

春,晉蒐于夷,舍二軍。使狐射姑將中軍,趙盾佐之。陽處父至自溫,改蒐于董,易中軍。陽子,成季之屬也,故黨於趙氏,且謂趙盾能,曰:「使能,國之利也。」是以上之。宣子於是乎始為國政,制事典、正法罪、辟刑獄、董逋逃、由質要、治舊洿、本秩禮、續常職、出滯淹。既成,以授大傅陽子,與大師賈佗,使行諸晉國,以為常法。臧文仲以陳、衛之睦也,欲求好於陳。

新字:春,晋蒐于夷,舎二軍。使狐射姑将中軍,趙盾佐之。陽処父至自温,改蒐于董,易中軍。陽子,成季之属也,故党於趙氏,且謂趙盾能,曰:「使能,国之利也。」是以上之。宣子於是乎始為国政,制事典、正法罪、辟刑獄、董逋逃、由質要、治旧洿、本秩礼、続常職、出滞淹。既成,以授大傅陽子,与大師賈佗,使行諸晋国,以為常法。臧文仲以陳、衛之睦也,欲求好於陳。

書き下し

春、晉夷に蒐し、二軍を舍く。狐射姑をして中軍に將たらしめ、趙盾之を佐く。陽處父溫より至り、改めて董に蒐し、中軍を易ふ。陽子は成季の屬なり。故に趙氏に黨し、且つ趙盾を能ありと謂ひて曰く、「能を使ふは、國の利なり」と。是を以って之を上にす。宣子是に於いてか始めて國政を為す。事典を制し、法罪を正し、刑獄を辟(をさ)め、逋逃を董(ただ)し、質要に由り、舊洿(きうを)を治め、秩禮を本づけ、常職を續ぎ、滯淹を出だす。既に成りて、以って大傅陽子と大師賈佗とに授け、諸を晉國に行はしめて、以って常法と為す。臧文仲陳・衛の睦まじきを以って、好を陳に求めんと欲す。

現代語訳

文公六年の春、晋は夷で閲兵を行い、五軍のうち二軍を廃止した。狐射姑(賈季)を中軍の将とし、趙盾がこれを補佐することにした。ところが陽処父が温から帰ってきて、閲兵を董であらためて行い、中軍の将を入れ替えた。陽処父はかつて成季(趙衰)の属官であった。そのため趙氏に肩入れし、しかも趙盾は有能であると言って、「有能な者を用いるのは国の利益である」と主張した。こうして趙盾を上位にした。宣子(趙盾)はこのとき初めて国の政治を執った。政務の規則を定め、法と罪の対応を正し、刑罰と訴訟を処理し、逃亡者を取り締まり、契約文書に基づいて争いを裁き、古い弊害を改め、身分秩序に応じた礼を根本から整え、絶えていた官職を継がせ、埋もれていた人材を登用した。これが出来上がると、太傅の陽処父と太師の賈佗に授け、晋国全体で施行させて恒常の法とした。臧文仲は、陳と衛が親密であることから、魯も陳とよしみを結ぼうとした。

解説

晋で趙盾が国政の中心に立つ、その始まりの句である。軍を再編し、いったん狐射姑を中軍の将、趙盾を副としたところへ、陽処父が戻ってきて閲兵をやり直し、二人の順位を入れ替えた。陽処父はかつて趙衰の部下で、趙氏に肩入れしていた。「能を使ふは、國の利なり」という言い分はもっともだが、手続きとしては、一度決まった人事を個人の判断で覆したのである。こうして執政となった趙盾は、規則の制定、刑罰の整理、逃亡者の取り締まり、文書による裁判、旧弊の是正、官職の継承、埋もれた人材の登用と、九項目にわたる改革を一気に行い、恒常の法とした。有能さは本物だった。しかし順位を落とされた狐射姑は陽処父を深く恨み、この年のうちに彼を暗殺させる。前の句で甯嬴が見抜いた剛さの危うさが、ここで現実になっていく。人事で能力を優先すること自体は正しくても、その進め方が怨みを残せば、組織に別の代償を生む。

この章句が説くこと

人事能力主義制度改革法制怨恨

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