導師導古典を学びたいすべての人に

春秋左氏伝 / 文公三年 菁菁たる莪を賦す

晉人懼其無禮於公也,請改盟。公如晉,及晉侯盟。晉侯饗公,賦《菁菁者莪》,莊叔以公降拜,曰:「小國受命於大國,敢不慎儀?君貺之以大禮,何樂如之?抑小國之樂,大國之惠也。」晉侯降辭,登成拜,公賦《嘉樂》。

新字:晋人懼其無礼於公也,請改盟。公如晋,及晋侯盟。晋侯饗公,賦《菁菁者莪》,荘叔以公降拝,曰:「小国受命於大国,敢不慎儀?君貺之以大礼,何楽如之?抑小国之楽,大国之恵也。」晋侯降辞,登成拝,公賦《嘉楽》。

書き下し

晉人其の公に無禮なりしを懼れ、盟を改めんことを請ふ。公晉に如き、晉侯に及びて盟ふ。晉侯公を饗し、《菁菁者莪》を賦す。莊叔公を以って降りて拜し、曰く、「小國命を大國に受く。敢へて儀を慎まざらんや。君之に貺(たま)ふに大禮を以ってす。何の樂しみか之に如かん。抑も小國の樂しみは、大國の惠なり」と。晉侯降りて辭す。登りて拜を成す。公《嘉樂》を賦す。

現代語訳

晋は、以前に文公に対して無礼であった(大夫の陽処父に盟わせた)ことを気にかけ、盟約をやり直したいと申し出た。文公は晋に行き、晋侯(襄公)と盟約した。晋侯は文公を饗応し、『詩経』の「菁菁者莪(せいせいたるが)」(君子に会えた喜びをうたう詩)を歌った。荘叔(叔孫得臣)は文公を促して堂を降り、拝礼させて言った。「小国は大国から命を受けるものです。どうして礼儀を慎まずにいられましょう。君は大いなる礼をもってわが君をもてなしてくださいました。これに勝る喜びがありましょうか。そもそも小国の喜びは、大国の恵みによるものです」。晋侯は堂を降りて辞退した。そこで再び堂に登って拝礼を終えた。文公は『詩経』の「嘉楽」(君子の徳をたたえる詩)を歌って答えた。

解説

前年、晋は魯の文公を大夫と盟わせて辱めた。それを気にかけた晋が改めて盟約をやり直すという、関係修復の場面である。宴で晋の襄公は『詩経』の「菁菁者莪」を歌った。君子に会えて心が喜ぶという詩で、文公を君子として迎えるという意を込めたのである。魯の荘叔はすかさず文公を促して堂を降り拝礼させ、「小國の樂しみは、大國の惠なり」と応じる。晋侯が降りて辞し、ふたたび登って拝を成し、文公は「嘉樂」で答えた。言葉を直接交わすのではなく、詩を引いて意を伝え合う「賦詩」は、春秋時代の外交の重要な作法だった。どの詩を選ぶかで敬意や要求を伝え、相手の詩の意を即座に読み取って応じる教養が求められた。荘叔の対応は、大国の謝意を受けつつ小国の立場をわきまえた、過不足のない応答である。一度こじれた関係を修復する場では、言葉の内容と同じくらい、応じ方の作法が意味を持つ。

この章句が説くこと

外交関係修復礼賦詩謙譲

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る