導師導古典を学びたいすべての人に

春秋左氏伝 / 僖公二十八年 難きを知りて退く

楚人入居于申,使申叔去穀,使子玉去宋,曰:「無從晉師。晉侯在外十九年矣,而果得晉國。險阻艱難,備嘗之矣!民之情偽,盡知之矣!天假之年,而除其害,天之所置,其可廢乎!《軍志》曰:『允當則歸。』又曰:『知難而退。』又曰:『有德不可敵。』此三志者,晉之謂矣!」

新字:楚人入居于申,使申叔去穀,使子玉去宋,曰:「無従晋師。晋侯在外十九年矣,而果得晋国。険阻艱難,備嘗之矣!民之情偽,尽知之矣!天仮之年,而除其害,天之所置,其可廃乎!《軍志》曰:『允当則帰。』又曰:『知難而退。』又曰:『有徳不可敵。』此三志者,晋之謂矣!」

書き下し

楚人入りて申に居り、申叔をして穀を去らしめ、子玉をして宋を去らしめて、曰く、「晉の師に從ふ無かれ。晉侯外に在ること十九年、而して果たして晉國を得たり。險阻艱難、備さに之を嘗めたり。民の情偽、盡く之を知れり。天之に年を假して、其の害を除く。天の置く所、其れ廢すべけんや。《軍志》に曰く、『允當なれば則ち歸る』と。又曰く、『難きを知りて退く』と。又曰く、『德有るは敵すべからず』と。此の三志は、晉の謂ひなり」と。

現代語訳

楚子(成王)は国内に引き揚げて申にとどまり、申叔(申公叔侯)には穀の守備を解いて去らせ、子玉には宋の包囲を解いて去るよう命じて、言った。「晋の軍を追ってはならない。晋侯(文公)は国外にあること十九年、ついに晋の国を得た。険しい道も困難も、つぶさに味わってきた。民の真心も偽りも、すべて知り尽くしている。天は彼に長い年月を与え、その害となる者を取り除いた。天が立てた者を、廃することなどできようか。『軍志』に『適当なところまで得たら帰れ』とある。また『難しいと知れば退け』とある。また『徳ある者には敵対してはならない』とある。この三つの言葉は、晋のことを言っているのだ」。

解説

城濮の戦いを前に、楚の成王が全軍に撤退を命じる場面である。亡命中の重耳を殺さずに秦へ送り出したのもこの成王であった。成王は相手を冷静に見ている。晋の文公は十九年の亡命で「險阻艱難、備さに之を嘗めたり。民の情偽、盡く之を知れり」。苦労を重ね、人の本音と建前を知り尽くした相手である。天がその障害を除いてきたのだから、逆らうべきではない、と。そして兵法書『軍志』から三つの言葉を引く。「允當なれば則ち歸る」「難きを知りて退く」「德有るは敵すべからず」。とくに「知難而退」は、今日でも成語として使われる。勝てる戦をするのではなく、負けない引き際を知ることを説いた言葉である。しかしこの命令に令尹の子玉は従わず、次の句以降で戦いを求めて城濮で大敗する。トップの冷静な判断も、現場の指揮官が従わなければ意味をなさない。撤退の判断そのものより、それを組織に徹底させることの難しさが、この句の後に描かれる。

この章句が説くこと

撤退引き際知難而退彼我の分析天命

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る