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春秋左氏伝 / 僖公十五年 亀は象、筮は数

初,晉獻公筮嫁伯姬於秦,遇歸妹之睽。史蘇占之,曰:「不吉。其繇曰:『士刲羊,亦無衁也;女承筐,亦無貺也。西鄰責言,不可償也。歸妹之睽,猶無相也。』震之離,亦離之震。『為雷為火,為嬴敗姬。車說其輹,火焚其旗,不利行師,敗于宗丘。歸妹睽孤,寇張之弧。姪其從姑,六年其逋,逃歸其國,而棄其家,明年,其死於高梁之虛。』」及惠公在秦,曰:「先君若從史蘇之占,吾不及此夫。」韓簡侍,曰:「龜,象也;筮,數也。物生而後有象,象而後有滋,滋而後有數。先君之敗德,及可數乎?史蘇是占,勿從何益?《詩》曰:『下民之孽,匪降自天。僔沓背憎,職競由人。』」震夷伯之廟,罪之也,於是展氏有隱慝焉。冬,宋人伐曹,討舊怨也。楚敗徐于婁林,徐恃救也。

新字:初,晋献公筮嫁伯姫於秦,遇帰妹之睽。史蘇占之,曰:「不吉。其繇曰:『士刲羊,亦無衁也;女承筐,亦無貺也。西鄰責言,不可償也。帰妹之睽,猶無相也。』震之離,亦離之震。『為雷為火,為嬴敗姫。車説其輹,火焚其旗,不利行師,敗于宗丘。帰妹睽孤,寇張之弧。姪其従姑,六年其逋,逃帰其国,而棄其家,明年,其死於高梁之虚。』」及恵公在秦,曰:「先君若従史蘇之占,吾不及此夫。」韓簡侍,曰:「亀,象也;筮,数也。物生而後有象,象而後有滋,滋而後有数。先君之敗徳,及可数乎?史蘇是占,勿従何益?《詩》曰:『下民之孽,匪降自天。僔沓背憎,職競由人。』」震夷伯之廟,罪之也,於是展氏有隠慝焉。冬,宋人伐曹,討旧怨也。楚敗徐于婁林,徐恃救也。

書き下し

初め、晉の獻公伯姬を秦に嫁せんことを筮し、歸妹の睽に遇ふ。史蘇之を占ひて曰く、「不吉なり。其の繇に曰く、『士羊を刲くも、亦た衁無きなり。女筐を承くるも、亦た貺無きなり。西鄰言を責む、償ふべからざるなり。歸妹の睽、猶ほ相無きがごときなり』と。震の離、亦た離の震なり。『雷と為り火と為り、嬴と為りて姬を敗る。車其の輹を說き、火其の旗を焚く、師を行るに利あらず、宗丘に敗る。歸妹睽孤、寇之が弧を張る。姪其れ姑に從ひ、六年にして其れ逋れ、逃れて其の國に歸り、而して其の家を棄つ。明年、其れ高梁の虛に死せん』と」。惠公秦に在るに及び、曰く、「先君若し史蘇の占に從はば、吾此に及ばざりしならん」と。韓簡侍して曰く、「龜は、象なり。筮は、數なり。物生じて而る後に象有り、象ありて而る後に滋有り、滋ありて而る後に數有り。先君の敗德、數ふるに及ぶべけんや。史蘇是れ占ふとも、從はざるも何の益かあらん。《詩》に曰く、『下民の孽は、天より降るに匪ず。僔沓背憎、職ら競ふは人に由る』と」。夷伯の廟に震す、之を罪するなり、是に於いて展氏に隱慝有り。冬、宋人曹を伐つ、舊怨を討つなり。楚徐を婁林に敗る、徐救ひを恃めばなり。

現代語訳

これより前、晋の献公は娘の伯姫(穆姫)を秦に嫁がせることについて筮竹で占い、帰妹の卦が睽の卦に変わる結果を得た。史官の蘇がこれを占って言った。「不吉です。その占いの辞にこうあります。『男が羊を割いても血が出ない。女が籠を捧げても中に賜り物がない。西の隣国が責める言葉は、償いようがない。帰妹が睽に変わるのは、助け手がないようなものだ』。震の卦が離に変わるのは、離が震に変わるのと同じです。『雷となり火となり、嬴姓(秦)が姫姓(晋)を打ち破る。車は車軸の留め具が外れ、火はその旗を焼く。軍を出すには不利で、宗丘で敗れる。帰妹が睽に変わって孤立し、敵が弓を張る。甥が叔母に従い、六年目に逃げ出して自分の国に帰り、その家を捨てる。その翌年、高梁の廃墟で死ぬだろう』」。恵公が秦に捕らわれていたとき、こう言った。「先君がもし史蘇の占いに従っていたら、私はこんな目にあわなかったろうに」。そばに控えていた韓簡が言った。「亀の甲羅の占いは形の象(しるし)を見るもの、筮竹の占いは数を見るものです。物が生じてから形が現れ、形が現れてから殖え広がり、殖え広がってから数が生じます。先君が徳を損なわれたことは、数え尽くせるものではありません。史蘇の占いに従わなかったからといって、従っていたとして何の益があったでしょう。『詩経』に『下々の民の災いは、天から降ってくるものではない。顔を合わせればおしゃべりし、背を向ければ憎み合う、それはもっぱら人が争うからだ』とあります」。夷伯(魯の展氏の祖)の廟に雷が落ちた。天がこれを罰したのである。このとき展氏には隠された悪事があったのだ。冬、宋が曹を攻めた。昔の怨みを晴らすためである。楚が徐を婁林で破った。徐が諸侯の救援を当てにして油断していたからである。

解説

韓原で敗れて秦に捕らわれた恵公は、かつて姉の伯姫を秦に嫁がせる際に史蘇が出した不吉な占いを思い出し、「先君が占いに従っていれば」と嘆く。占いの辞には秦が晋を破ることや、甥の子圉が人質となって逃げ帰ることまで詠み込まれており、後の出来事に合わせて整えられた伝承と見てよい。読みどころはそれを聞いた韓簡の答えである。亀卜は象を、筮は数を見るものであり、物事はまず生じ、次に形をとり、増えてから数に現れる。つまり占いは原因ではなく結果を映すにすぎない。問題は先君献公の失徳であり、占いに従おうと従うまいと変わらなかった。そして『詩経』を引いて、民の災いは天から降るのではなく人の争いから生じると結ぶ。自分の失敗を先代や運命のせいにする者に、原因は人にあると返した言葉である。失敗の原因をどこに求めるかで、次の打ち手は変わる。

この章句が説くこと

占筮因果責任自省天命と人事

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