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春秋左氏伝 / 僖公十年 神は非類を歆けず

晉侯改葬共大子。秋,狐突適下國,遇大子。大子使登僕,而告之曰:「夷吾無禮,余得請於帝矣,將以晉畀秦,秦將祀余。」對曰:「臣聞之,神不歆非類,民不祀非族,君祀無乃殄乎!且民何罪?失刑乏祀,君其圖之。」君曰:「諾,吾將復請。七日,新城西偏,將有巫者而見我焉。」許之,遂不見。及期而往,告之曰:「帝許我罰有罪矣,敝於韓。」丕鄭之如秦也,言於秦伯曰:「呂甥、郤稱、冀芮實為不從。若重問以召之,臣出晉君,君納重耳,蔑不濟矣。」冬,秦伯使泠至報問,且召三子。郤芮曰:幣重而言甘,誘我也。遂殺丕鄭、祁舉及七輿大夫:左行共華、右行賈華、叔堅、騅歂、纍虎、特宮、山祁,皆里丕之黨也。丕豹奔秦,言於秦伯曰:「晉侯背大主而忌小怨,民弗與也。伐之必出。」公曰:「失眾,焉能殺?違禍,誰能出君?」

新字:晋侯改葬共大子。秋,狐突適下国,遇大子。大子使登僕,而告之曰:「夷吾無礼,余得請於帝矣,将以晋畀秦,秦将祀余。」対曰:「臣聞之,神不歆非類,民不祀非族,君祀無乃殄乎!且民何罪?失刑乏祀,君其図之。」君曰:「諾,吾将復請。七日,新城西偏,将有巫者而見我焉。」許之,遂不見。及期而往,告之曰:「帝許我罰有罪矣,敝於韓。」丕鄭之如秦也,言於秦伯曰:「呂甥、郤称、冀芮実為不従。若重問以召之,臣出晋君,君納重耳,蔑不済矣。」冬,秦伯使泠至報問,且召三子。郤芮曰:幣重而言甘,誘我也。遂殺丕鄭、祁舉及七輿大夫:左行共華、右行賈華、叔堅、騅歂、纍虎、特宮、山祁,皆里丕之党也。丕豹奔秦,言於秦伯曰:「晋侯背大主而忌小怨,民弗与也。伐之必出。」公曰:「失衆,焉能殺?違禍,誰能出君?」

書き下し

晉侯共大子を改葬す。秋、狐突下國に適き、大子に遇ふ。大子登りて僕たらしめ、之に告げて曰く、「夷吾禮無し。余帝に請ふことを得たり、將に晉を以て秦に畀へんとす、秦將に余を祀らんとす」と。對へて曰く、「臣之を聞く、神は非類を歆けず、民は非族を祀らず、と。君の祀り乃ち殄ゆること無からんや。且つ民何の罪かある。刑を失ひ祀を乏しくす、君其れ之を圖れ」と。君曰く、「諾。吾將に復た請はんとす。七日、新城の西偏に、將に巫者有りて我を見んとす」と。之を許す。遂に見えず。期に及びて往く。之に告げて曰く、「帝我に有罪を罰することを許せり、韓に敝れん」と。丕鄭の秦に如くや、秦伯に言ひて曰く、「呂甥・郤稱・冀芮實に從はずと為す。若し重く問ひて以て之を召さば、臣晉君を出だし、君重耳を納れん、濟らざること蔑し」と。冬、秦伯泠至をして問に報い、且つ三子を召さしむ。郤芮曰く、幣重くして言甘し、我を誘ふなり、と。遂に丕鄭・祁舉及び七輿大夫、左行共華・右行賈華・叔堅・騅歂・纍虎・特宮・山祁を殺す、皆里・丕の黨なり。丕豹秦に奔り、秦伯に言ひて曰く、「晉侯大主に背きて小怨を忌む、民與せず。之を伐たば必ず出でん」と。公曰く、「眾を失はば、焉んぞ能く殺さん。禍を違けば、誰か能く君を出ださん」と。

現代語訳

晋侯(恵公)は共太子(申生)を改めて葬り直した。秋、狐突(申生の元の御者)が曲沃に出かけたところ、亡き太子申生に出会った。太子は狐突を車に乗せて御者とし、こう告げた。「夷吾は無礼である。私は天帝に願い出て許しを得た。晋を秦に与えてしまおう。そうすれば秦が私を祀ってくれるだろう」。狐突は答えた。「私はこう聞いております。神は同族でない者の供物を受けず、民は自分の一族でない者を祀らない、と。それでは君の祭祀は絶えてしまうのではありませんか。それに民に何の罪があるのでしょう。罰を誤って与え、しかも祭祀を絶やすことになります。君はどうかよくお考えください」。君(申生)は言った。「わかった。もう一度天帝にお願いしてみよう。七日後、新城の西のはずれに巫者がいて、その者を通してお前に会うことになるだろう」。狐突は承知した。すると申生の姿は見えなくなった。約束の日に行ってみると、巫者を通して申生はこう告げた。「天帝は、罪ある者を罰することを許してくださった。夷吾は韓で敗れるだろう」。さて丕鄭が秦に使いしたとき、秦伯(穆公)にこう言った。「呂甥・郤称・冀芮(郤芮)の三人こそが、約束の土地を秦に渡すことに反対しているのです。もし手厚い贈り物で招き寄せてくだされば、私が晋君を追い出し、君は重耳を迎え入れる。うまくいかないはずはありません」。冬、秦伯は泠至を遣わして答礼し、あわせて三人を招いた。郤芮は、贈り物が手厚く言葉が甘いのは、我々をおびき出すためだ、と言った。そこで丕鄭と祁挙、および七輿大夫である左行の共華・右行の賈華・叔堅・騅歂・纍虎・特宮・山祁を殺した。いずれも里克・丕鄭の一党であった。丕豹(丕鄭の子)は秦に逃れて、秦伯に言った。「晋侯は大恩ある秦に背き、小さな怨みにこだわって人を殺しています。民は彼に従っていません。攻めれば必ず追い出せます」。公は言った。「民心を失っているのなら、どうしてこれほど多くの者を殺せようか。禍を逃れて国外に出た者ばかりで、誰が君主を追い出せるというのか」。

解説

前半は怪異譚である。非業の死を遂げた太子申生の霊が狐突の前に現れ、無礼な夷吾を罰するため晋を秦に与えると言う。狐突は「神は非類を歆けず、民は非族を祀らず」と説く。晋が秦の手に渡れば、秦人は晋の祖霊を祀らず、あなたの祭祀も途絶える、罪のない民まで巻き込むことにもなる、と霊をいさめるのである。申生は願い直し、罰を夷吾一人に限って「韓に敗れん」と予言する。のちの韓原の戦いへの伏線だが、そういう伝承として読めばよい。後半は現実の政治で、丕鄭が秦と組んで恵公を追い出そうとし、郤芮に見抜かれて一党もろとも誅殺される。「幣重くして言甘し、我を誘ふなり」という郤芮の警戒は、条件の良すぎる申し出に対する古典的な見方である。穆公が丕豹の出兵論を「眾を失はば、焉んぞ能く殺さん」と退けるのも冷静だ。亡命者の見立ては、願望に引きずられやすい。

この章句が説くこと

祭祀怪異警戒粛清情報の見極め

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