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春秋左氏伝 / 僖公十年 罪を加えんと欲せば

夏,四月,周公忌父、王子黨,會齊隰朋,立晉侯。晉侯殺里克以說。將殺里克,公使謂之曰:「微子則不及此。雖然,子弒二君與一大夫,為子君者,不亦難乎?」對曰:「不有廢也,君何以興?欲加之罪,其無辭乎?臣聞命矣。」伏劍而死。於是丕鄭聘于秦,且謝緩賂,故不及。

新字:夏,四月,周公忌父、王子党,会斉隰朋,立晉侯。晉侯殺里克以説。将殺里克,公使謂之曰:「微子則不及此。雖然,子弒二君与一大夫,為子君者,不亦難乎?」対曰:「不有廃也,君何以興?欲加之罪,其無辞乎?臣聞命矣。」伏剣而死。於是丕鄭聘于秦,且謝緩賂,故不及。

書き下し

夏、四月、周公忌父、王子黨、齊の隰朋に會して、晉侯を立つ。晉侯里克を殺して以って說(と)く。將に里克を殺さんとするに、公人をして之に謂はしめて曰く、「子微(な)かりせば則ち此に及ばず。然りと雖も、子二君と一大夫とを弒す。子の君為る者、亦た難からずや」と。對へて曰く、「廢する有らずんば、君何を以って興らん。罪を加へんと欲せば、其れ辭無からんや。臣命を聞けり」と。劍に伏して死す。是に於いて丕鄭秦に聘して、且つ賂を緩くするを謝す、故に及ばず。

現代語訳

夏の四月、周公忌父と王子党が斉の隰朋と会し、晋侯を立てた。晋侯は里克を殺して弁明とした。里克を殺そうとするとき、公は人をやって言わせた。「おまえがいなければ、私はこの位に就けなかった。とはいえ、おまえは二人の君と一人の大夫を殺している。おまえの君となる者も、難しいことではないか」。里克は答えた。「廃することがなかったなら、君はどうして興れましたか。罪を着せようと思えば、言いがかりの言葉がないことがありましょうか。私は仰せを承りました」。そして剣に伏して死んだ。このとき丕鄭は秦に使いしており、贈り物を遅らせたことを詫びていたので、この難を免れた。

解説

「罪を加へんと欲せば、其れ辭無からんや」——罪を着せようと思えば、口実が無いことなどあろうか。この一句が、後世まで引かれる。里克は先君の子二人を殺して恵公を立てた張本人であり、その功で恵公は位に就いた。ところが恵公は、まさにその功を理由に里克を殺す。「二君と一大夫を弒した者を、どうして臣下にできようか」という理屈である。里克の返答は二段構えだ。第一に、私が廃さなければあなたは立てなかった。第二に、そもそも罪を着せる気なら口実はいくらでも作れる。反論せずに構造だけを言い当てて死ぬ。功績が理由で用いられた者が、同じ功績を理由に処分される。この転倒は、権力が安定したあとに繰り返し起きる。

この章句が説くこと

欲加之罪其無辞乎里克功が罪になる口実

この一句を、あなたの毎日に。

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