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春秋左氏伝 / 荘公十二年・十三年 南宮万の乱

十二年秋,宋萬弑閔公于蒙澤。遇仇牧於門,批而殺之。遇大宰督於東宮之西,又殺之。立子遊。羣公子奔蕭。公子禦說奔亳。南宮牛、猛獲帥師圍亳。冬十月,蕭叔大心及戴、武、宣、穆、莊之族以曹師伐之。殺南宮牛于師,殺子游于宋,立桓公。猛獲奔衛。南宮萬奔陳,以乘車輦其母,一日而至。宋人請猛獲于衛,衛人欲勿與,石祁子曰:『不可。天下之惡一也,惡于宋而保於我,保之何補?得一夫而失一國,與惡而棄好,非謀也。』衛人歸之。亦請南宮萬于陳,以賂。陳人使婦人飲之酒,而以犀革裹之。比及宋手足皆見。宋人皆醢之。十三年春,會於北杏,以平宋亂。遂人不至。夏,齊人滅遂而戍之。冬,盟于柯,始及齊平也。宋人背北杏之會。

新字:十二年秋,宋万弑閔公于蒙沢。遇仇牧於門,批而殺之。遇大宰督於東宮之西,又殺之。立子遊。羣公子奔蕭。公子禦説奔亳。南宮牛、猛獲帥師囲亳。冬十月,蕭叔大心及戴、武、宣、穆、荘之族以曹師伐之。殺南宮牛于師,殺子游于宋,立桓公。猛獲奔衛。南宮万奔陳,以乗車輦其母,一日而至。宋人請猛獲于衛,衛人欲勿与,石祁子曰:『不可。天下之悪一也,悪于宋而保於我,保之何補?得一夫而失一国,与悪而棄好,非謀也。』衛人帰之。亦請南宮万于陳,以賂。陳人使婦人飲之酒,而以犀革裹之。比及宋手足皆見。宋人皆醢之。十三年春,会於北杏,以平宋乱。遂人不至。夏,斉人滅遂而戍之。冬,盟于柯,始及斉平也。宋人背北杏之会。

書き下し

十二年秋、宋の萬閔公を蒙澤に弑す。仇牧に門に遇ひ、批ちて之を殺す。大宰督に東宮の西に遇ひ、又之を殺す。子遊を立つ。羣公子蕭に奔る。公子禦說亳に奔る。南宮牛・猛獲師を帥ゐて亳を圍む。冬十月、蕭叔大心及び戴・武・宣・穆・莊の族曹の師を以て之を伐つ。南宮牛を師に殺し、子游を宋に殺し、桓公を立つ。猛獲衛に奔る。南宮萬陳に奔る。乘車を以て其の母を輦き、一日にして至る。宋人猛獲を衛に請ふ。衛人與ふること勿からんと欲す。石祁子曰く、「不可なり。天下の惡は一なり。宋に惡にして我に保んぜらるるは、之を保んずるも何の補ひかあらん。一夫を得て一國を失ひ、惡に與して好を棄つるは、謀に非ざるなり」と。衛人之を歸す。亦た南宮萬を陳に請ふに、賂を以てす。陳人婦人をして之に酒を飲ましめて、犀革を以て之を裹む。宋に及ぶ比、手足皆見はる。宋人皆之を醢にす。十三年春、北杏に會し、以て宋の亂を平らぐ。遂人至らず。夏、齊人遂を滅ぼして之を戍る。冬、柯に盟ふ。始めて齊と平らぐなり。宋人北杏の會に背く。

現代語訳

十二年秋、宋の(南宮)万が蒙沢で閔公を殺した。門で仇牧(きゅうぼく、宋の大夫)に出くわすと、手で打ち殺した。東宮の西で大宰の督(華督)に出くわすと、これも殺した。そして子遊(宋の公子)を君主に立てた。公子たちは蕭へ逃れた。公子禦説は亳へ逃れた。南宮牛と猛獲が軍を率いて亳を包囲した。冬十月、蕭叔大心と、戴公・武公・宣公・穆公・荘公の子孫の一族が、曹の軍を借りて南宮牛らを討った。南宮牛を陣中で殺し、子游を宋の都で殺して、桓公(禦説)を立てた。猛獲は衛へ逃れた。南宮万は陳へ逃れた。自ら車を引いて母を乗せ、一日で陳に着いた。宋の人が衛に猛獲の引き渡しを求めた。衛の人は渡すまいとした。石祁子(せきぎし、衛の大夫)が言った。「なりません。天下の悪は、どこでも同じ悪です。宋で悪をなした者を我々がかくまって、何の益がありましょう。一人の男を得て一つの国を失い、悪人に味方して友好国を捨てるのは、よい謀りごとではありません」。衛の人は猛獲を宋に返した。宋はまた陳にも南宮万の引き渡しを求め、賄賂を贈った。陳の人は女に万へ酒を飲ませて酔わせ、犀の皮で包んで送った。宋に着くころには、万の手足が皮を破って突き出ていた。宋の人は二人とも塩辛にする刑に処した。十三年春、(斉の桓公が諸侯と)北杏で会合し、宋の乱を収めた。遂の人は来なかった。夏、斉の人は遂を滅ぼしてそこに守備兵を置いた。冬、(魯は斉と)柯で盟約した。ここで初めて斉と和睦したのである。宋の人は北杏の会の約束に背いた。

解説

前の句で閔公に「魯の囚」とからかわれた南宮万が、ついに主君を殺す。勢いのまま大夫の仇牧や華督まで殺し、別の公子を立てるが、宋の公族が曹の軍を借りて反撃し、禦説が桓公として即位する。一言の侮辱から始まった乱が、君主と重臣の命を奪い、国を二分した。読みどころは衛の石祁子の判断である。亡命してきた猛獲をかくまおうとする衛の人に、「天下の惡は一なり」と言う。悪は国境を越えても悪である。一人を得て一国を失い、悪人と組んで友好を捨てるのは謀りごとではない、と。目先の情や面子より、国と国との関係全体で損得を測る議論である。一方、南宮万は怪力で知られ、母を車に乗せて自ら引き一日で陳に着いたという。陳は彼を酔わせて犀の皮で包んで送り返したが、着くころには手足が皮を破っていた。不祥事を起こした人物を、関係先がかばうべきか引き渡すべきか。石祁子の論は、その判断の基準をはっきり言葉にしている。

この章句が説くこと

弑逆是非外交損得信義

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