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尚書 / 冏命

王若曰:「伯冏!惟予弗克于德,嗣先人宅丕后。怵惕惟厲,中夜以興,思免厥愆。昔在文、武,聰明齊聖,小大之臣,咸懷忠良。其侍御僕從,罔匪正人,以旦夕承弼厥辟,出入起居,罔有不欽,發號施令,罔有不臧,下民祗若,萬邦咸休。惟予一人無良,實賴左右前後有位之士,匡其不及。

新字:王若曰:「伯冏!惟予弗克于徳,嗣先人宅丕后。怵惕惟厲,中夜以興,思免厥愆。昔在文、武,聰明斉聖,小大之臣,咸懐忠良。其侍御僕従,罔匪正人,以旦夕承弼厥辟,出入起居,罔有不欽,発号施令,罔有不臧,下民祗若,万邦咸休。惟予一人無良,実頼左右前後有位之士,匡其不及。

書き下し

王若(かく)のごとく曰く、「伯冏よ。惟れ予は徳に克たず、先人を嗣ぎて丕后に宅る。怵惕として惟れ厲ふみ、中夜以て興き、厥の愆を免れんことを思ふ。昔文・武に在りては、聡明斉聖にして、小大の臣、咸く忠良を懐く。其の侍御僕従、正人に匪ざる罔く、以て旦夕厥の辟を承弼し、出入起居、欽まざること有る罔く、号を発し令を施すに、臧からざること有る罔く、下民祗み若ひ、万邦咸く休す。惟れ予一人良無し、実に左右前後の位有るの士の、其の及ばざるを匡すに頼る。

現代語訳

王(穆王)はこのように言った。「伯冏よ。私は徳に堪えることができないのに、先人の後を継いで大君の位にいる。恐れおののいて危ぶみ、夜中にも起きて、過ちを免れることを思っている。昔、文王・武王は、耳さとく目明らかで、慎み深く聖明であり、大小の臣下はみな忠義と善良を心に抱いていた。その側に仕える侍御や従者も、正しい人でない者はなく、朝夕その君をお助けしたので、出入りや起居に慎まないことはなく、号令を発し命令を施すのに善くないことはなく、下の民は謹んで従い、万邦はみな安らかであった。私一人は善良ではない。まことに、左右前後で位にある士たちが、私の及ばないところを正してくれるのに頼っている。

解説

冏命は、周の穆王が伯冏を太僕正、すなわち王の側近に仕える侍従たちの長に任じたときの命である。王はまず、自分は徳が足りず、夜中にも起きて過ちを免れようと思うと率直に告白する。そして文王・武王が聡明であっただけでなく、身の回りに仕える者までみな正しい人であったので、一挙一動に過ちがなく万邦が安らかであったと述べ、自分は側近の者に及ばない所を正してもらうほかないと言う。君主の徳は側近の質に左右されるという認識がここにある。上に立つ者ほど、身近で意見を言ってくれる人の存在が欠かせない。自らの不足を認め、正してくれる人を置くことの大切さを教える篇である。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。

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