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尚書 / 泰誓上

亶聰明,作元后,元后作民父母。今商王受,弗敬上天,降災下民,沈緬冒色,敢行暴虐。罪人以族,官人以世。惟宮室、臺榭、陂池、侈服,以殘害于爾萬姓。焚炙忠良,刳剔孕婦。「皇天震怒,命我文考,肅將天威,大勛未集。肆予小子發,以爾友邦冢君,觀政于商,惟受罔有悛心,乃夷居,弗事上帝神祗,遺厥先宗廟弗祀。犧牲粢盛,既于兇盜。乃曰:『吾有民有命,罔懲其侮。』天佑下民,作之君、作之師。惟其克相上帝,寵綏四方。有罪無罪,予曷敢有越厥志?同力度德,同德度義,受有臣億萬,惟億萬心。予有臣三千,惟一心。商罪貫盈,天命誅之,予弗順天,厥罪惟鈞。予小子夙夜祗懼,受命文考,類于上帝,宜于冢土,以爾有眾,厎天之罰。天矜于民,民之所欲,天必從之。爾尚弼予一人,永清四海。時哉!弗可失。」

新字:亶聰明,作元后,元后作民父母。今商王受,弗敬上天,降災下民,沈緬冒色,敢行暴虐。罪人以族,官人以世。惟宮室、台榭、陂池、侈服,以残害于爾万姓。焚炙忠良,刳剔孕婦。「皇天震怒,命我文考,粛将天威,大勛未集。肆予小子発,以爾友邦冢君,観政于商,惟受罔有悛心,乃夷居,弗事上帝神祗,遺厥先宗廟弗祀。犠牲粢盛,既于兇盗。乃曰:『吾有民有命,罔懲其侮。』天佑下民,作之君、作之師。惟其克相上帝,寵綏四方。有罪無罪,予曷敢有越厥志?同力度徳,同徳度義,受有臣億万,惟億万心。予有臣三千,惟一心。商罪貫盈,天命誅之,予弗順天,厥罪惟鈞。予小子夙夜祗懼,受命文考,類于上帝,宜于冢土,以爾有衆,厎天之罰。天矜于民,民之所欲,天必従之。爾尚弼予一人,永清四海。時哉!弗可失。」

書き下し

亶(まこと)に聡明なるもの、元后と作り、元后は民の父母と作る。今商王受、上天を敬せず、災を下民に降し、沈湎して色を冒し、敢て暴虐を行ふ。人を罪するに族を以てし、人を官するに世を以てす。惟れ宮室・台榭・陂池・侈服、以て爾万姓を残害す。忠良を焚炙し、孕婦を刳剔(こてき)す。皇天震怒し、我が文考に命じ、粛みて天威を将(おこな)はしむるも、大勛未だ集(な)らず。肆(ゆゑ)に予小子発、爾友邦の冢君を以て、政を商に観るに、惟れ受悛(あらた)むる心有る罔く、乃ち夷居して、上帝神祗に事へず、厥の先の宗廟を遺てて祀らず。犧牲粢盛(しせい)、既に兇盗に于(ゆ)く。乃ち曰く、『吾民有り命有り』と、其の侮を懲らす罔し。天下民を佑け、之が君を作り、之が師を作る。惟れ其れ克く上帝を相け、四方を寵綏せしむ。罪有ると罪無きと、予曷ぞ敢て厥の志を越ゆること有らん。力を同じくすれば徳を度り、徳を同じくすれば義を度る。受臣億万有れども、惟れ億万心なり。予臣三千有り、惟れ一心なり。商の罪貫盈し、天命じて之を誅す、予天に順はずんば、厥の罪惟れ鈞(ひと)し。予小子夙夜祗み懼れ、命を文考に受け、上帝に類し、冢土に宜し、爾有衆を以て、天の罰を厎(いた)さん。天民を矜(あはれ)み、民の欲する所、天必ず之に従ふ。爾尚はくは予一人を弼(たす)け、永く四海を清めよ。時なるかな、失ふべからず。」

現代語訳

「まことに聡明な者が天子となり、天子は民の父母となる。今、商の王受(じゅ、紂王)は、天を敬わず、民に災いを下し、酒に溺れ色に耽り、平然と暴虐を行っている。罪人を罰するのにその一族まで及ぼし、官職を与えるのに家柄で世襲させている。宮殿や高殿、池や贅沢な衣服のために、汝ら万民を損ない害している。忠臣や善良な者を焼き殺し、身ごもった女の腹を裂いた。天は激しく怒り、我が亡き父文王に命じて、謹んで天の威を行わせたが、その大いなる功業はまだ成し遂げられなかった。そこで私、若輩の発(はつ、武王の名)は、汝ら友邦の君主たちとともに商の政を見てきたが、受には改める心がまったくなく、傲然と構えて、上帝や天地の神々に仕えず、祖先の宗廟を捨て置いて祀らない。犠牲の家畜や供え物の穀物は、すでに凶悪な盗人の手に渡っている。それでいて『自分には民があり天命がある』と言い、その侮りを改めることがない。天は下の民を助けるために、君主を立て、師(教え導く者)を立てた。それは上帝を助けて、四方を慈しみ安んじさせるためである。罪ある者を罰し罪なき者を守るのに、私がどうしてその(天の)志を踏み越えようか。力が等しければ徳の高さを比べ、徳が等しければ義の厚さを比べる。受には億万の臣がいるが、その心は億万にばらばらである。私には臣が三千人しかいないが、その心は一つである。商の罪は満ち満ちており、天はこれを誅するよう命じている。私が天に従わなければ、その罪は受と同じである。私は朝も夜も謹んで恐れ、亡き父文王から命を受け、上帝に類(るい、臨時の祭り)を行い、冢土(ちょうど、大地の神の社)に宜(ぎ、出陣の祭り)を行った。汝ら衆とともに天の罰を下そう。天は民を憐れみ、民の望むことには天は必ず従う。どうか汝らは私一人を助け、永く天下を清めよ。今こそその時である。逃してはならない。」

解説

泰誓上篇の本体で、武王が紂王の罪を数え上げ、討伐の正当性を説く部分である。忠臣を焼き、妊婦の腹を裂くなどの暴虐を並べ、天は民を助けるために君と師を立てたと述べて、天命の根拠を民に置く。「受に臣億万有れども惟れ億万心、予に臣三千有り惟れ一心」は、数より結束が勝つことを示す名句として知られる。「民の欲する所、天必ず之に従ふ」は『左伝』や『国語』にも引かれる古い言葉で、孟子の民本思想にもつながる。人数や資金で劣っていても、目的を共有した小さな組織が大組織に勝ちうるという教訓として読める。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。

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