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尚書 / 五子之歌

其三曰:「惟彼陶唐,有此冀方。今失厥道,亂其紀綱,乃厎滅亡。」其四曰:「明明我祖,萬邦之君。有典有則,貽厥子孫。關石和鈞,王府則有。荒墜厥緒,覆宗絕祀。」其五曰:「嗚呼曷歸!予懷之悲。萬姓仇予,予將疇依?鬱陶乎予心,顏厚有忸怩。

新字:其三曰:「惟彼陶唐,有此冀方。今失厥道,乱其紀綱,乃厎滅亡。」其四曰:「明明我祖,万邦之君。有典有則,貽厥子孫。関石和鈞,王府則有。荒墜厥緒,覆宗絶祀。」其五曰:「嗚呼曷帰!予懐之悲。万姓仇予,予将疇依?鬱陶乎予心,顔厚有忸怩。

書き下し

其の三に曰く、「惟れ彼の陶唐、此の冀方を有(たも)つ。今厥(そ)の道を失ひ、其の紀綱を乱り、乃ち滅亡を厎(いた)す」と。其の四に曰く、「明明たる我が祖、万邦の君なり。典有り則有り、厥の子孫に貽(のこ)す。関石和鈞(くわんせきくわきん)、王府には則ち有り。厥の緒を荒墜(くわうつゐ)し、宗を覆し祀を絶つ」と。其の五に曰く、「嗚呼(ああ)曷(いづく)にか帰せん。予が懐(おも)ひの悲しき。万姓予を仇とす、予将(はた)疇(たれ)にか依らん。鬱陶(うつたう)たり予が心、顔厚くして忸怩(ぢくぢ)たる有り。

現代語訳

その第三の歌に言う。「あの陶唐氏(堯)は、この冀州の地を治めていた。今(太康は)その道を失い、国の綱紀を乱し、ついに滅亡を招いた。」その第四の歌に言う。「明らかな徳をもつわが祖先(禹)は、あらゆる国の君主であった。法典があり規則があって、それを子孫に残した。重さを量る石の標準と均しい秤は、王の蔵に備えられていた。それなのに、その事業を荒らし失い、祖先の宗廟を覆し、祭祀を絶やしてしまった。」その第五の歌に言う。「ああ、どこに帰ればよいのか。私の思いは悲しい。すべての民が私たちを仇と見なしている。私たちはいったい誰に頼ればよいのか。私の心はふさぎ、恥ずかしさに顔も上げられず、ただ恥じ入るばかりである。

解説

五子之歌の第三から第五の歌である。第三の歌は、堯以来受け継がれてきた道を失い、国の綱紀を乱したことが滅亡を招いたと歌う。第四の歌は、禹が法典と規則を定め、度量衡の標準まで整えて子孫に残したのに、それを荒らして宗廟の祭りまで絶やしてしまったと嘆き、第五の歌は行き場を失った兄弟の恥を吐露する。「忸怩」は深く恥じ入るさまを表す語として、今も日本語に残っている。先人が築いた仕組みや規範は、受け継ぐ者が守り育てなければたちまち失われ、失ったものを取り戻すことは難しい。前任者から受け継いだ仕組みを当たり前と思わず、その意味を理解して守ることが、後を継ぐ者の務めである。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。

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