尚書 / 益稷
帝拜曰:「俞,往欽哉!」
新字:帝拝曰:「兪,往欽哉!」
書き下し
帝拝して曰く、「俞(しか)り、往きて欽まんかな」と。
現代語訳
帝(舜)は拝礼して言った。「そうだ。それぞれ行って、つつしんで務めよ。」
解説
益稷篇の結びの一句である。皐陶が君臣のあり方を歌で戒めたのに対し、帝舜は拝礼して「そうだ」と受け入れ、臣下たちに「行って、つつしんで務めよ」と命じた。ここで注目したいのは、君主である舜が臣下の諫めの歌に対して自ら拝礼していることである。上に立つ者が下からの戒めを敬意をもって受けとめる姿は、君臣が互いに敬い合う理想の朝廷の象徴とされ、儒家はこれを聖王の徳の表れとして尊んだ。また、議論の終わりに「往きて欽め」と簡潔に行動を促すところにも、話し合いを実行につなげる指導者の姿がある。耳の痛い意見にこそ礼を尽くし、それを実行へと結びつけることが、信頼される指導者の条件である。
関連する章句
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尚書・益稷予(われ)違(たが)わば、汝(なんじ)弼(たす)けよ。汝、面従(めんじゅう)することなく、退(しりぞ)きて後言(こうげん)あることなかれ。
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尚書・益稷元首(げんしゅ)明らかなるかな、股肱(ここう)良きかな、庶事(しょじ)康(やす)きかな。
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尚書・益稷帝曰く、「来たれ、禹。汝も亦昌言せよ」と。禹拝して曰く、「都(ああ)、帝。予何をか言はん。予思ひて日に孜孜(しし)たり」と。皐陶曰く、「吁(ああ)、如何」と。禹曰く、「洪水天に滔(はびこ)り、浩浩として山を懐(つつ)み陵に襄(のぼ)り、下民昏墊(こんてん)す。予四載に乗り、山に随ひて木を刊(き)り、益と暨(とも)に庶(もろもろ)の鮮食を奏(すす)む。予九川を決して四海に距(いた)らしめ、畎澮(けんくわい)を濬(さら)ひて川に距らしむ。稷と暨に播き、庶の艱食(かんしよく)・鮮食を奏む。有無を懋遷(ぼうせん)し、居を化す。烝民乃ち粒(りふ)し、万邦乂(をさ)まることを作(な)す」と。皐陶曰く、「俞(しか)り、汝の昌言を師とせん」と。禹曰く、「都、帝。乃(なんぢ)の在位を慎め」と。帝曰く、「俞り」と。禹曰く、「汝の止まるところに安んじ、惟れ幾(き)惟れ康(かう)。其の弼(たすけ)直ければ、惟れ動けば丕(おほ)いに応ぜん。志を徯(ま)ちて以て昭(あき)らかに上帝に受くれば、天其れ申ねて命ずるに休(よ)きを用ひん」と。帝曰く、「吁、臣なるかな鄰(りん)なるかな、鄰なるかな臣なるかな」と。禹曰く、「俞り」と。帝曰く、「臣は朕が股肱耳目と作(な)る。予有民を左右せんと欲す、汝翼(たす)けよ。予力を四方に宣べんと欲す、汝為せ。予古人の象を観んと欲す、日・月・星辰・山・竜・華虫を会(ゑが)き、宗彝(そうい)・藻・火・粉米・黼(ほ)・黻(ふつ)を絺(ち)に繡(ぬひ)し、五采を以て五色に彰らかに施して服を作る、汝明らかにせよ。予六律五声八音を聞き、治忽(ちこつ)を在(み)て、以て五言を出納せんと欲す、汝聴け。
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尚書・益稷又歌ひて曰く、「元首叢脞(そうざ)なるかな、股肱惰(おこた)るかな、万事墮(やぶ)るるかな」と。
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尚書・君奭祗みて茲に若へ。往け、敬して用て治めよ。」
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尚書・益稷四鄰を欽(つつし)め。庶頑讒説(しよぐわんざんせつ)、若(も)し時(これ)に在らずんば、侯(こう)して以て之を明らかにし、撻(う)ちて以て之を記(しる)し、書して用(も)て識(しる)さんかな、並び生きんことを欲するかな。工は以て言を納れ、時(これ)にして之を颺(あ)げよ。格(ただ)しければ則ち之を承けて之を庸(もち)ゐ、否なれば則ち之を威(おど)せ」と。禹曰く、「俞(しか)りなるかな。帝光天の下、海隅の蒼生に至るまで、万邦の黎献、共に惟れ帝の臣なり。惟れ帝時(これ)を挙げ、敷(あまね)く納るるに言を以てし、明らかにするに功を以てし、車服以て庸ゐれば、誰か敢へて譲らず、敢へて敬して応ぜざらん。帝時(これ)にして敷かずんば、同じく日に奏すとも功罔(な)からん」と。帝曰く、「丹朱の傲(おご)りの若(ごと)くなること無かれ。惟れ慢遊是れ好み、傲虐是れ作(な)す。昼夜罔く頟頟(がくがく)とし、水罔きに舟を行る。家に朋淫し、用(も)て厥(そ)の世を殄(た)つ。予創(こ)りて時(かく)の若くし、塗山に娶る、辛壬癸甲。啓呱呱(ここ)として泣けども、予子とせず、惟れ荒(おほ)いに土功を度(はか)る。五服を弼成して五千に至る。州に十有二の師あり、外は四海に薄(せま)り、咸(みな)五長を建て、各(おのおの)迪(みち)びきて功有り。苗は頑にして工に即かず。帝其れ念へや」と。帝曰く、「朕が徳を迪(ふ)むは、時(こ)れ乃(なんぢ)の功にして、惟れ敘(つい)づればなり」と。皐陶方(まさ)に厥の敘を祗(つつし)み、方に象刑を施して、惟れ明らかなり。夔(き)曰く、「鳴球を戛撃(かつげき)し、搏拊(はくふ)・琴・瑟、以て詠ず」と。祖考来たり格(いた)り、虞賓位に在り、群后徳もて譲る。下に管・鼗鼓(たうこ)あり、合止には柷敔(しゆくぎよ)、笙鏞(しやうよう)以て間(まじ)はる。鳥獣蹌蹌(さうさう)たり。簫韶(せうせう)九成して、鳳皇来儀す。夔曰く、「於(ああ)、予石を撃ち石を拊てば、百獣率ゐて舞ひ、庶尹允(まこと)に諧(やはら)ぐ」と。帝庸(も)て歌を作りて曰く、「天の命を勑(つつし)み、惟れ時惟れ幾(き)」と。乃ち歌ひて曰く、「股肱喜ぶかな、元首起こるかな、百工熙(ひろ)まるかな」と。皐陶拝手稽首し颺言(やうげん)して曰く、「念へや。率ゐて事を作し興し、乃の憲を慎み、欽まんかな。屢(しばしば)乃の成るを省み、欽まんかな」と。乃ち賡(つ)ぎて載(すなは)ち歌ひて曰く、
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