樵談治要抄録 / 近習の器量を選ぶ
一近習者をえらばるべき事、是は建武の十七ヶ條の中にも、のせられ侍る題目也、其器用を擇ばるべきヿ、尤然るべし、又黨類を結、互に毀譽をなす事、誠に闘諍のもとゐ成べし、たとひ私のうらみをさしはさむといふとも、公庭において其色をあらはす事は、未練のいたり成べし、さて其器用といふは、事〱によりて、一具に定るべからず、孔子の門弟には、四科をたて侍り、高祖の功臣には三傑の不同有がごとし、いかさま一には、正直廉潔にして、ごくしん(極愼)なる人をえらばるべし、二には、奉公の忠節をいたして、私をかへりみざる人、三には、弓馬の道に達して、心いさみ有人、四には、和漢の才藝あらん人をよしとすべし、又よからぬ類をいはゞ、一には、うろん猛惡にして欲にふける人、二には、不奉公にして、人の非をいふヿをこのむ、三には武藝の道につたなくして臆病第一也、四には、狂言綺語をもて人に笑はるゝを面目とす、すべてよからぬ事どもをいひては、更にがいさい(涯際)有べからず、但近習者とて召遣れんは、いづれをも先れんみんは有べし、
新字:一近習者をえらばるべき事、是は建武の十七ヶ条の中にも、のせられ侍る題目也、其器用を択ばるべきヿ、尤然るべし、又党類を結、互に毀誉をなす事、誠に闘諍のもとゐ成べし、たとひ私のうらみをさしはさむといふとも、公庭において其色をあらはす事は、未練のいたり成べし、さて其器用といふは、事〱によりて、一具に定るべからず、孔子の門弟には、四科をたて侍り、高祖の功臣には三傑の不同有がごとし、いかさま一には、正直廉潔にして、ごくしん(極慎)なる人をえらばるべし、二には、奉公の忠節をいたして、私をかへりみざる人、三には、弓馬の道に達して、心いさみ有人、四には、和漢の才芸あらん人をよしとすべし、又よからぬ類をいはゞ、一には、うろん猛悪にして欲にふける人、二には、不奉公にして、人の非をいふヿをこのむ、三には武芸の道につたなくして臆病第一也、四には、狂言綺語をもて人に笑はるゝを面目とす、すべてよからぬ事どもをいひては、更にがいさい(涯際)有べからず、但近習者とて召遣れんは、いづれをも先れんみんは有べし、
書き下し
一近習者をえらばるべき事、是は建武の十七ヶ條の中にも、のせられ侍る題目也、其器用を擇ばるべきヿ、尤然るべし、又黨類を結、互に毀譽をなす事、誠に闘諍のもとゐ成べし、たとひ私のうらみをさしはさむといふとも、公庭において其色をあらはす事は、未練のいたり成べし、さて其器用といふは、事〱によりて、一具に定るべからず、孔子の門弟には、四科をたて侍り、高祖の功臣には三傑の不同有がごとし、いかさま一には、正直廉潔にして、ごくしん(極愼)なる人をえらばるべし、二には、奉公の忠節をいたして、私をかへりみざる人、三には、弓馬の道に達して、心いさみ有人、四には、和漢の才藝あらん人をよしとすべし、又よからぬ類をいはゞ、一には、うろん猛惡にして欲にふける人、二には、不奉公にして、人の非をいふヿをこのむ、三には武藝の道につたなくして臆病第一也、四には、狂言綺語をもて人に笑はるゝを面目とす、すべてよからぬ事どもをいひては、更にがいさい(涯際)有べからず、但近習者とて召遣れんは、いづれをも先れんみんは有べし、
現代語訳
一、近習者を選ばれるべきこと。これは建武の十七か条の中にも載せられている題目です。その器量を選ぶべきことは、もっともです。また徒党を結び、互いに誹りと誉めをし合うことは、本当に争いのもとでしょう。たとえ私の恨みを抱いていても、公の場でその様子を表に出すことは、未熟の至りです。さてその器量というのは、事によって一律には定められません。孔子の門弟には四科が立てられ、高祖の功臣には三傑の違いがあるようなものです。おおよそ、一には、正直廉潔で極めて慎み深い人を選ぶべきです。二には、奉公の忠節を尽くして、私を顧みない人。三には、弓馬の道に達して、心勇み有る人。四には、和漢の才芸がある人をよしとすべきです。またよくない類を言えば、一には、胡乱で猛悪で欲にふける人。二には、奉公せず、人の非を言うことを好む人。三には、武芸の道に拙く臆病が第一の人。四には、狂言綺語で人に笑われるのを面目とする人。すべてよくないことを言い出せば、きりがありません。ただし近習者として召し使われるなら、いずれの者にも、まず憐れみはあるべきです。
解説
この章句が説くこと
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