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政談 / 諸役人器量の選別なる事

諸役に各々その掌りありて、人の器量もその役儀に隨ひて撰ひ別なるへし、老中なとは政務の本締なれは國政の全體に通達し、依怙贔負なく人の善きを育てゝをとなしき人にあらすんはその職に叶ひかたし、其の中に老中は遠大の智惠あらは瑣細なる働なくとも然るへし、若老中は假令遠大成る智惠のかたは少くとも才智の筋を專らにすへし、兩役ともに人を知り人を見出すことを職分の第一となすへし、右に云たる如くにつかさどりのすずを分けは、その筋々に隨ひて器量の撰ひ人別なるへし、

新字:諸役に各々その掌りありて、人の器量もその役儀に随ひて撰ひ別なるへし、老中なとは政務の本締なれは国政の全体に通達し、依怙贔負なく人の善きを育てゝをとなしき人にあらすんはその職に叶ひかたし、其の中に老中は遠大の智恵あらは瑣細なる働なくとも然るへし、若老中は仮令遠大成る智恵のかたは少くとも才智の筋を専らにすへし、両役ともに人を知り人を見出すことを職分の第一となすへし、右に云たる如くにつかさどりのすずを分けは、その筋々に随ひて器量の撰ひ人別なるへし、

書き下し

諸役に各々その掌りありて、人の器量もその役儀に随ひて撰ひ別なるへし、老中なとは政務の本締なれは国政の全体に通達し、依怙贔負なく人の善きを育てゝをとなしき人にあらすんはその職に叶ひかたし、其の中に老中は遠大の智恵あらは瑣細なる働なくとも然るへし、若老中は仮令遠大成る智恵のかたは少くとも才智の筋を専らにすへし、両役ともに人を知り人を見出すことを職分の第一となすへし、右に云たる如くにつかさどりのすずを分けは、その筋々に随ひて器量の撰ひ人別なるへし、

現代語訳

諸役にはそれぞれ受け持ちがあり、人の器量もその役儀に応じて選び分けるべきである。老中などは政務の元締めであるから、国政の全体に通じ、えこひいきがなく、人の良いところを育てる、落ち着いた人でなければその職に適いにくい。そのうち老中は遠大な知恵があれば細かな働きはなくてもよい。若老中(若年寄)はたとえ遠大な知恵の方は少なくても、才知の働きを専らにすべきである。両役ともに、人を知り人を見出すことを職分の第一とすべきである。右に述べたように受け持ちの筋を分ければ、その筋々に従って器量の選び方も別々になるはずである。

解説

「諸役人器量の選別なる事」は、役ごとに求める器量が違うという原則から始まる。老中には国政全体を見通す遠大な知恵と公平さ、若年寄には細かな才知の働きを求め、両者とも人を知り人を見出すことを第一の職分とする。役割を定義してから適任者を選ぶという順序は、徂徠の制度論に一貫する考え方である。現代の組織でも、経営層には大局観、中間管理職には実行力というように、ポストごとに要件を明確にしなければ、年功や好みで人が配置されてしまう。

この章句が説くこと

器量人材職分老中適材政談

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