新書 / 大政下
諸侯即位享國,社稷血食,而政有命,國無君也;官有政長而民有所屬,而政有命,國無吏也;官駕百乘而食食千人,政有命,國無人也。何也?君之爲言也,道也。故君也者,道之所出也。賢人不舉而不肖人不去,此君無道也,故政謂此國無君也。吏之爲言,理也。故吏也者,理之所出也。上爲非而不敢諫,下爲善而不知勸,此吏無理也,故政謂此國無吏也。官駕百乘而食食千人,近側者不足以問諫,而由朝假不足以考度,故政謂此國無人也。嗚呼,悲哉!君者,群也。無人誰據?無據必蹶,政謂此國素亡也。
新字:諸侯即位享国,社稷血食,而政有命,国無君也;官有政長而民有所属,而政有命,国無吏也;官駕百乗而食食千人,政有命,国無人也。何也?君之為言也,道也。故君也者,道之所出也。賢人不舉而不肖人不去,此君無道也,故政謂此国無君也。吏之為言,理也。故吏也者,理之所出也。上為非而不敢諫,下為善而不知勧,此吏無理也,故政謂此国無吏也。官駕百乗而食食千人,近側者不足以問諫,而由朝仮不足以考度,故政謂此国無人也。嗚呼,悲哉!君者,群也。無人誰拠?無拠必蹶,政謂此国素亡也。
書き下し
諸侯位に即き国を享け、社稷血食して、政に命有るも、国に君無きなり。官に政長有りて民に属する所有りて、政に命有るも、国に吏無きなり。官に百乗を駕して千人を食らわしめ、政に命有るも、国に人無きなり。何ぞや。君の言たる、道なり。故に君なる者は、道の出づる所なり。賢人挙げられずして不肖人去らざるは、此れ君に道無きなり、故に政は此の国を君無しと謂う。吏の言たる、理なり。故に吏なる者は、理の出づる所なり。上非を為して敢えて諫めず、下善を為して勧むるを知らざるは、此れ吏に理無きなり、故に政は此の国を吏無しと謂う。官に百乗を駕して千人を食らわしめ、近側の者は以て問諫するに足らず、而して朝に由りて仮るは以て考度するに足らず、故に政は此の国を人無しと謂う。嗚呼、悲しきかな。君なる者は、群なり。人無くして誰か据らん。据る無ければ必ず蹶く、政は此の国を素より亡ぶと謂う。
現代語訳
諸侯が位に就いて国を保ち、社稷の祭りが続き、政に命令があっても、その国に君がいないことがあります。官に政長がいて、民に属するところがあり、政に命令があっても、その国に役人がいないことがあります。官が百乗の車を駆り、千人を養っていても、政に命令があっても、その国に人がいないことがあります。なぜでしょうか。君という語は道を意味します。君とは道の出てくるところです。賢人が挙げられず、不肖な者が去らないのは、君に道がないからで、政はこの国に君がいないと言います。吏という語は理を意味します。吏とは理の出てくるところです。上が非を行っても敢えて諫めず、下が善を行っても励ますことを知らないのは、吏に理がないからで、政はこの国に吏がいないと言います。官が百乗を駆り千人を養っていても、そばにいる者が諮問や諫言に足りず、朝廷に依って仮の人材をあてがうだけでは考え定めるに足りないので、政はこの国に人がいないと言います。ああ、悲しいことです。君とは群れのことです。人がいなければ誰を拠りどころにするのでしょうか。拠りどころがなければ必ず倒れます。政はこの国を、もとより滅びていると言います。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『慎思録』巻之五学者は当に道学の実を勤むべし。好んで道学の名を立つべからず。名其の実に称はずして、一時の虚誉を掠め取るは、恥づべきの甚だしきなり。且つ自負して以て経術に専一なりと為すと雖も、往往訓詁の習ひに止まりて、未だ以て致知の学と為すに足らず。此を以て自ら矜高を為して、人を嫚罵し、顔を抗げて好んで人の師と為る。方に其の量を知らずと謂ふべし。身後に至れば、則ち自ら公論有りて、其の良拙と真偽とを掩ふこと能はず。古語に曰く、之を要するに死の日の後、是非乃ち定まる、と。信なるかな是の言や。恥づべきの甚だしきなり。
-
言志四録・言志耋録 第二百六十条 名に因りて実を責む人事、外変ぜずして内変ずる者之れ有り。名変ぜずして実変ずる者之れ有り。政に従ふ者は、宜しく名に因りて以て其の実を責め、外に就きて以て諸を内に求むべくして可なり。
-
論語・雍也篇子曰く、觚、觚ならず。觚ならんや、觚ならんや。
-
言志四録・言志晩録 第八十九条 名を顧みて実を責む凡そ士君子たる者は、今皆武士と称す。宜しく自ら其の名を顧みて以て其の実を責め、其の職を務めて以て其の名に副ふべし。
-
尉繚子・兵令下諸そ大軍を去りて前禦の備へを為す者は、辺県列侯、各相去ること三五里。大軍の前禦の備へを為すを聞けば、戦へば則ち皆行くを禁ず、内を安んずる所以なり。内卒出でて戍れば、将吏をして旗鼓戈甲を授けしむ。発する日、将吏に後れ及び県の封界を出づる者は、後戍の法を以て坐す。兵辺を戍ること一歳、遂に亡げて代を候たざる者は、法亡軍に比す。父母妻子之を知れば、与に罪を同じくす。知らざれば、之を赦す。卒将吏に後れて大将の所に至ること一日なれば、父母妻子尽く罪を同じくす。卒逃げて家に帰ること一日、父母妻子捕執せず及び言はざれば、亦罪を同じくす。諸そ戦ひて其の将吏を亡ふ者、及び将吏卒を棄てて独り北ぐる者は、尽く之を斬る。前吏其の卒を棄てて北ぐるに、後吏能く之を斬りて其の卒を奪ふ者は、賞す。軍功無き者は、戍ること三歳。三軍大いに戦ひ、若し大将死して、従吏五百人以上敵に死する能はざれば、斬る。大将の左右近卒の陳中に在る者は、皆斬る。余の士卒軍功有る者は、一級を奪ふ。軍功無き者は、戍ること三歳。戦ひて伍人を亡ひ、及び伍人戦死して其の屍を得ざれば、同伍尽く其の功を奪ふ。其の屍を得れば、罪皆赦す。軍の利害は、国の名実に在り。今名は官に在りて、実は家に在り、官は其の実を得ず、家は其の名を得ず。卒を聚めて軍と為すも、空名有りて実無く、外は以て敵を禦ぐに足らず、内は以て国を守るに足らず、此れ軍の給せざる所以、将の威を奪はるる所以なり。臣以謂へらく、卒逃げ帰る者は、同舎の伍人及び吏罰して糧を入れて饒と為し、名づけて軍実と為す、是れ一軍の名有りて、二実の出有り、国内空虚にして、自ら民の歳を竭くす、曷ぞ以て奔北の禍を免れんや。今法を以て逃帰を止め、亡軍を禁ずるは、是れ兵の一勝なり。什伍相連なり、戦闘に及べば則ち卒吏相救ふは、是れ兵の二勝なり。
-
説苑・雜言淳于髡、孟子に謂いて曰く、「名実を先んずる者は、人の為にする者なり。名実を後にする者は、自ら為にする者なり。夫子は三卿の中に在りて、名実未だ上下に加わらずして之を去る、仁者固より此くの如きか」と。孟子曰く、「下位に居りて、賢を以て不肖に事えざる者は、伯夷なり。五たび湯に就き、五たび桀に就く者は、伊尹なり。汙君を悪まず、小官を辞せざる者は、柳下惠なり。三子は道を同じくせざれども、其の趣くところは一なり。一とは何ぞや。曰く仁なり。君子も亦仁のみ、何ぞ必ずしも同じからん」と。曰く、「魯の穆公の時、公儀子政を為し、子思・子庚臣為り、魯の削らるるや滋々甚だし。是くの若きは、賢者の国に益無きなり」と。曰く、「虞は百里奚を用いずして亡び、秦の穆公は之を用いて霸たり。故に賢を用いざれば則ち亡ぶ、削らるる何ぞ得べけんや」と。曰く、「昔者、王豹淇に処りて、河西謳を善くす。綿駒高唐に処りて、齊右歌を善くす。華舟・杞梁の妻、善く其の夫を哭して国俗を変ず。諸を内に有すれば必ず外に形る。其の事を為して其の功無きは、髡未だ睹ざるなり。是の故に賢者無きなり、有らば則ち髡必ず之を識らん」と。曰く、「孔子魯の司寇と為りて用いられず、祭に従いて膰肉至らず、冕を脱がずして行く。其の不善なる者は以て肉の為なりと為し、其の善なる者は以て礼の為なりと為す。乃ち孔子は微罪を以て行かんと欲し、苟くも去るを為さんと欲せざるなり。故に君子の為す所は、衆人固より識る能わざるなり」と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る