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言志四録 / 言志晩録 第八十九条 名を顧みて実を責む

凡爲士君子者。今皆稱武士。宜自顧其名以責其實。務其職以副其名。

新字:凡為士君子者。今皆称武士。宜自顧其名以責其実。務其職以副其名。

書き下し

凡そ士君子たる者は、今皆武士と称す。宜しく自ら其の名を顧みて以て其の実を責め、其の職を務めて以て其の名に副ふべし。

現代語訳

およそ士君子(身分ある教養人)である者は、今ではみな武士と呼ばれている。自らその名を顧みて、その実質が伴っているかを問い、その職務に励んで、その名にふさわしくあるべきである。

解説

ここから晩録には武士と兵事をめぐる条が続きます。泰平の世が二百年以上続き、武士は戦わない役人となっていました。一斎は、士君子と呼ばれる者が今はみな「武士」を名乗っている以上、その名に見合う実質があるかを自ら問えと言います。名と実を一致させる「正名」の考えは『論語』以来の儒学の基本です。名を顧みて実を責める、職を務めて名に副う、という二句は、内省と実践の両面から名実を合わせる工夫を示しています。肩書きや役職は、それ自体が中身を保証するものではありません。自分の持つ肩書きに実質が追いついているかを問い直す手がかりになる一条です。

この章句が説くこと

名実武士職分正名自省

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