新書 / 春秋
衛懿公喜鶴,鶴有飾以文繡者,賦斂繁多而不顧其民,貴優而輕大臣。羣臣或諫,則面叱之。及翟伐衛,寇挾城堞矣,衛君垂淚而拜其臣民曰:「寇迫矣,士民其勉之!」士民曰:「君亦使君之貴優,將君之愛鶴,以爲君戰矣。我儕棄人也,安能守戰?」乃潰門而出走。翟寇遂入,衛君奔死,遂喪其國。故賢主者,不以草木禽獸妨害人民,進忠正而遠邪偽,故民順附而臣下爲用。今釋人民而愛鳥獸,遠忠道而貴優笑,反甚矣。人主之爲人主也,舉錯而不僨者,杖賢也。今倍其所主而棄其所杖,其僨仆也,不亦宜乎?語曰:「禍出者禍反,惡人者人亦惡之。」管子曰:「不行其野,不違其馬。」此違其馬者也。
新字:衛懿公喜鶴,鶴有飾以文繍者,賦斂繁多而不顧其民,貴優而軽大臣。羣臣或諫,則面叱之。及翟伐衛,寇挟城堞矣,衛君垂涙而拝其臣民曰:「寇迫矣,士民其勉之!」士民曰:「君亦使君之貴優,将君之愛鶴,以為君戦矣。我儕棄人也,安能守戦?」乃潰門而出走。翟寇遂入,衛君奔死,遂喪其国。故賢主者,不以草木禽獣妨害人民,進忠正而遠邪偽,故民順附而臣下為用。今釈人民而愛鳥獣,遠忠道而貴優笑,反甚矣。人主之為人主也,舉錯而不僨者,杖賢也。今倍其所主而棄其所杖,其僨仆也,不亦宜乎?語曰:「禍出者禍反,悪人者人亦悪之。」管子曰:「不行其野,不違其馬。」此違其馬者也。
書き下し
衛の懿公は鶴を喜び、鶴に飾るに文繡を以てする者有り。賦斂繁多にして其の民を顧みず、優を貴びて大臣を軽んず。群臣或いは諫むれば、則ち面して之を叱る。翟の衛を伐つに及び、寇城堞を挟むに、衛君涙を垂れて其の臣民に拝して曰く、「寇迫れり、士民其れ之を勉めよ」と。士民曰く、「君亦た君の貴ぶ優をして、君の愛する鶴を将いて、以て君が為に戦わしめよ。我が儕は棄てられし人なり、安んぞ能く守戦せん」と。乃ち門を潰して出で走る。翟寇遂に入り、衛君奔りて死し、遂に其の国を喪う。故に賢主は、草木禽獣を以て人民を妨害せず、忠正を進め邪偽を遠ざく。故に民は順い附きて臣下は用を為す。今人民を釈きて鳥獣を愛し、忠道を遠ざけて優笑を貴ぶは、反ること甚だし。人主の人主たるや、挙錯して僨れざるは、賢に杖ればなり。今其の主とする所に倍き、其の杖る所を棄つ。其の僨仆するや、亦た宜ならずや。語に曰く、「禍出づる者は禍反り、人を悪む者は人も亦た之を悪む」と。管子曰く、「其の野を行かずんば、其の馬に違わず」と。此れ其の馬に違う者なり。
現代語訳
衛の懿公は鶴を好み、鶴に刺繡の飾りを着せる者までいました。税や取り立てが重く民を顧みず、芸人を尊んで大臣を軽んじました。家臣が諫めると、面と向かって叱りつけました。翟が衛を攻め、敵が城壁に迫ったとき、衛の君は涙を流して臣下と民に拝礼し、「敵が迫っている。みな力を尽くしてくれ」と言いました。士や民は言いました。「君主は、尊ぶ芸人たちに、愛する鶴を率いさせて、戦わせればよいでしょう。私たちは見捨てられた者です。どうして守り戦えましょう」。そう言って門を壊して逃げ出しました。翟の敵はついに城に入り、衛の君は逃げて死に、国を失いました。だから賢い君主は、草木や鳥獣のために人民を損なわず、忠実で正しい者を進め、邪で偽りの者を遠ざけます。そうすれば民は従い、臣下は役に立ちます。いま人民を捨てて鳥獣を愛し、忠義の道を遠ざけて芸人の笑いを尊ぶのは、あべこべも甚だしい。君主が君主でいられ、行いが倒れないのは、賢者に頼っているからです。いまその拠り所に背き、頼る者を捨てました。倒れて伏すのも当然ではありませんか。語にこうあります。「災いを出す者は災いが返り、人を憎む者は人からも憎まれる」と。管子は言います。「その野を行かなければ、その馬に背かない」と。これはその馬に背いた者です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『春秋左氏伝』閔公二年 衛の懿公、鶴を好む冬、十二月、狄人衛を伐つ。衛の懿公鶴を好み、鶴に軒に乘る者有り。將に戰はんとす。國人の甲を受くる者皆曰く、「鶴を使へ。鶴實に祿位有り、余焉んぞ能く戰はん」と。公石祁子に玦を與へ、甯莊子に矢を與へ、守らしめて、曰く、「此を以って國を贊けよ。利を擇びて之を爲せ」と。夫人に繡衣を與へて、曰く、「二子に聽け」と。渠孔戎に御し、子伯右と爲り、黃夷前驅し、孔嬰齊殿す。狄人と熒澤に戰ひ、衛の師敗績し、遂に衛を滅ぼす。衛侯其の旗を去らず、是を以って甚だしく敗る。狄人史華龍滑と禮孔とを囚へ、以って衛人を逐ふ。二人曰く、「我は、大史なり。實に其の祭を掌る。先んぜずんば、國得可からざるなり」と。乃ち之を先んぜしむ。至れば、則ち守に告げて曰く、「待つ可からざるなり」と。夜國人と出づ。狄衛に入り、遂に之に從ひ、又諸を河に敗る。
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『新序』義勇第八衞の懿公に臣有り弘演と曰う。遠く使いして未だ還らず。狄人衞を攻む。其の民曰く、君の祿位を與うる所の者は、鶴なり。富ます所の者は、宮人なり。君宮人と鶴とをして戰わしめよ。余焉くんぞ能く戰わん、と。遂に潰えて去る。狄人懿公に滎澤に追い及び、之を殺し、盡く其の肉を食らい、獨り其の肝を舍く。弘演至り、使いを肝に報じ畢わり、天を呼びて號び、哀しみを盡くして止む。曰く、臣請う表と爲らん、と。因りて自ら其の腹を刺し、懿公の肝を内れて死す。齊の桓公之を聞きて曰く、衞の亡ぶるや無道を以てす。今臣の此くの若き有り。存せざる可からず、と。是に於いて衞を楚丘に救う。
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史記 衛康叔世家盗并せて太子伋を殺し、以て宣公に報ず。宣公乃ち子朔を以て太子と為す。十九年、宣公卒し、太子朔立つ。是を恵公と為す。左右公子朔の立つを平らかならずとす。恵公の四年、左右公子恵公の前太子伋を讒殺して代はり立つを怨み、乃ち乱を作し、恵公を攻め、太子伋の弟黔牟を立てて君と為す。恵公斉に奔る。衛君黔牟立ちて八年、斉の襄公諸侯を率ゐて王命を奉じて共に衛を伐ち、衛の恵公を納れ、左右公子を誅す。衛君黔牟周に奔り、恵公復た立つ。恵公立ちて三年にして出亡し、亡ぐること八年にして復た入る。前と年を通じて凡そ十三年なり。二十五年、恵公周の黔牟を容舎せしを怨み、燕と周を伐つ。周の恵王温に奔り、衛・燕恵王の弟穨を立てて王と為す。二十九年、鄭復た恵王を納る。三十一年、恵公卒し、子の懿公赤立つ。懿公即位し、鶴を好み、淫楽奢侈なり。九年、翟衛を伐つ。衛の懿公兵を発せんと欲するも、兵或いは畔く。大臣言ひて曰く、「君鶴を好む。鶴をして翟を撃たしむべし」と。翟是に於て遂に入り、懿公を殺す。懿公の立つや、百姓大臣皆服せず。懿公の父恵公朔の太子伋を讒殺して代はり立ちしより懿公に至るまで、常に之を敗らんと欲す。卒に恵公の後を滅ぼして、更に黔牟の弟昭伯頑の子申を立てて君と為す。是を戴公と為す。戴公申元年にして卒す。斉の桓公衛の数々乱るるを以て、乃ち諸侯を率ゐて翟を伐ち、衛の為に楚丘に築き、戴公の弟燬を立てて衛君と為す。是を文公と為す。文公乱を以ての故に斉に奔る。斉人之を入る。初め、翟の懿公を殺すや、衛人之を憐れみ、宣公の前に死せし太子伋の後を復立せんと思ふ。伋の子又死し、而して伋に代はりて死せし者子寿も又子無し。
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『新書』春秋楚王鄒君を淫せんと欲し、乃ち之に技楽美女四人を遺る。穆公朝に観て、夕に畢く以て死事の孤に妻せ、故に婦人の年称わざる者は蓄えず、身を節して衆くせざるなり。王輿は皮帛を衣ず、御馬は禾菽を食わず、淫僻の事無く、驕燕の行無く、食に衆味せず、衣に雑采せず、自ら刻して以て民を広くし、賢を親しみて以て国を定め、民を親しむこと子の如し。鄒国の治まるや、路に遺を拾わず、臣下順従して、手の心に投ずるが若し。是の故に鄒子の細きを以てすら、魯衛は敢えて経らず、斉楚も脅かす能わず。鄒の穆公死するや、鄒の百姓は慈父を失うが若く、行きて哭すること三月、四境の鄒に隣する者、士民方に鄉いて道に哭し、手を抱きて憂い行く。酤家は其の酒を讎らず、屠者は列を罷めて帰り、傲童は謳歌せず、舂築する者は相杵せず、婦女は珠瑱を抉り、丈夫は玦靬を釈き、琴瑟に音無く、朞年にして後始めて復す。故に愛出づる者は愛反り、福往く者は福来る。易に曰く、「鳴鶴陰に在り、其の子之に和す」と。其れ此れの謂いか。故に曰く、「天子に道有れば、守は四夷に在り。諸侯に道有れば、守は四鄰に在り」と。
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呂氏春秋・忠廉③衛の懿公に臣有り、弘演と曰う。使するに所有り。翟人、衛を攻む。其の民曰く、「君の位祿を予うる所の者は、鶴なり。貴富にする所の者は、宮人なり。君、宮人と鶴とをして戰わしめよ。余焉くんぞ能く戰わんや。」遂に潰えて去る。翟人至り、懿公に榮澤に及び、之を殺して、盡く其の肉を食らい、獨り其の肝を捨つ。弘演至り、使いを肝に報じ、畢りて、天を呼びて啼き、哀しみを盡くして止めて曰く、「臣請う襮と為らん。」因りて自殺し、先づ其の腹の實を出だし、懿公の肝を内る。桓公之を聞きて曰く、「衛の亡ぶるや、無道を為すを以てなり。今、臣の此くの若きもの有り。存せざる可からず。」是に於て復た衛を楚丘に立つ。弘演は忠と謂う可し。身を殺して生を出り、以て其の君に徇う。徒に其の君に徇うに非ざるなり。又衛の宗廟をして復た立ち、祭祀をして絕えざらしむ、功有りと謂う可し。
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『新書』先醒昔者虢君驕恣にして自ら伐り、謟諛して貴に親しみ、諫臣は詰逐され、政治踳乱し、国人服せず。晋師之を伐ち、虢人守らず、虢君出で走り、澤中に至る。曰く、『吾渇して飲まんと欲す』と。其の御乃ち清酒を進む。曰く、『吾饑えて食らわんと欲す』と。御は腶脯と梁糗とを進む。虢君喜びて曰く、『何ぞ給なる』と。御曰く、『儲うること久し』と。『何の故に之を儲う』と。対えて曰く、『君の出亡して道に饑渇せんが為なり』と。君曰く、『寡人の亡ぶを知るか』と。対えて曰く、『之を知る』と。曰く、『之を知るに、何を以て諫めざる』と。対えて曰く、『君は謟諛を好みて至言を悪む。臣諫めんと願えども、虢の亡ぶに先んぜんことを恐る』と。虢君色を作して怒る。御謝して曰く、『臣の言は過てり』と。間を為して、君曰く、『吾の亡ぶる者は、誠に何ぞや』と。其の御曰く、『君は知らざるか。君の亡ぶる所以は、大賢なるを以てなり』と。虢君曰く、『賢は人の存する所以なり。乃ち亡ぶは、何ぞや』と。対えて曰く、『天下の君は皆な不肖にして、夫れ吾が君の独り賢なるを疾む。故に亡ぶ』と。虢君喜び、式に拠りて笑いて曰く、『嗟、賢は固に是くの若く苦しきか』と。
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