新書 / 匈奴
或曰:「建三表,明五餌,盛資翁主,禽敵國而后止,費至多也,惡得財用而足之?」對曰:「請無敢費御府銖金尺帛,然而臣有餘資。」問曰:「何以?」對曰:「國有二族,方亂天下,甚於匈奴之爲邊患也。使上下踳逆,天下窾貧,盜賊、罪人蓄積無已,此二族爲祟也。上去二族,弗使亂國,天下治富矣。臣賜二族,使祟匈奴,過足言者。」或曰:「天子不怵,人民悹之。」曰:「苟或非天子民,尚豈天子也?詩曰:『普天之下,莫非王土;率土之濱,莫非王臣。』王者,天子也。苟舟車之所至,人迹之所及,雖蠻貊戎狄,孰非天子之作哉?而慉渠頗率天子之民,以不聽天子,則慉渠大罪也。今天子自爲懷其民,天子之理也,豈有怵人之民哉。」
新字:或曰:「建三表,明五餌,盛資翁主,禽敵国而后止,費至多也,悪得財用而足之?」対曰:「請無敢費御府銖金尺帛,然而臣有余資。」問曰:「何以?」対曰:「国有二族,方乱天下,甚於匈奴之為辺患也。使上下踳逆,天下窾貧,盗賊、罪人蓄積無已,此二族為祟也。上去二族,弗使乱国,天下治富矣。臣賜二族,使祟匈奴,過足言者。」或曰:「天子不怵,人民悹之。」曰:「苟或非天子民,尚豈天子也?詩曰:『普天之下,莫非王土;率土之浜,莫非王臣。』王者,天子也。苟舟車之所至,人迹之所及,雖蠻貊戎狄,孰非天子之作哉?而慉渠頗率天子之民,以不聴天子,則慉渠大罪也。今天子自為懐其民,天子之理也,豈有怵人之民哉。」
書き下し
或るひと曰く、「三表を建て、五餌を明らかにし、盛んに翁主に資し、敵国を禽にして后に止む、費至りて多し、悪んぞ財用を得て之を足さん」と。対えて曰く、「請う敢えて御府の銖金尺帛を費やす無く、然り而して臣に余資有り」と。問うて曰く、「何を以てするか」と。対えて曰く、「国に二族有り、方に天下を乱す、匈奴の辺患を為すより甚し。上下をして踳逆せしめ、天下窾しく貧しく、盗賊、罪人の蓄積已む無きは、此の二族の祟りを為せばなり。上、二族を去り、国を乱さしめざれば、天下治まり富まん。臣二族に賜い、祟りを匈奴に使うは、言うに足る者に過ぎたり」と。或るひと曰く、「天子怵れず、人民之を悹む」と。曰く、「苟しくも天子の民に非ざる或らば、尚お豈に天子ならんや。詩に曰く、『普天の下、王土に非ざる莫く、率土の浜、王臣に非ざる莫し』と。王者とは、天子なり。苟しくも舟車の至る所、人迹の及ぶ所、蛮貊戎狄と雖も、孰か天子の作に非ざらん。而るに慉渠頗る天子の民を率い、以て天子に聴かざるは、則ち慉渠の大罪なり。今天子自ら其の民を懐くを為す、天子の理なり、豈に人の民を怵るる有らんや」と。
現代語訳
ある人が言います。「三表を立て、五餌を明らかにし、盛んに翁主を支援し、敵国を捕らえて初めて止めるというのでは、費用がたいへん大きい。どこからその財を得て賄うのか」と。私は答えます。「宮廷の蔵からわずかな金や布さえ使わなくても、私には余りの資力があります」と。問われます。「どうやってか」と。答えます。「国には二つの族(あるいは二種類の者たち)がいて、今まさに天下を乱しており、匈奴が辺境の患いをなすよりもひどいのです。上下を逆さまにし、天下を窮乏させ、盗賊や罪人が絶えず積み重なっているのは、この二つの族が祟りをなしているからです。上がこの二族を除き、国を乱さないようにすれば、天下は治まり富みます。私がこの二族に賜うものを、匈奴への手当てに使えば、論ずるに足るほどの額を超えるでしょう」と。(「二族」が何を指すのかは、この段だけでは断定できません。)ある人が言います。「天子は恐れず、人民はこれを憂えます」と。答えます。「もし天子の民でない者がいるなら、そもそも天子ではありません。詩に『天の下、王の土地でないところはなく、国土の果てまで、王の臣でない者はない』とあります。王者とは天子のことです。舟や車の通じる所、人の足跡が及ぶ所は、蛮族や戎狄であっても、どれも天子の治める所ではないでしょうか。それなのに慉渠(匈奴の一人でしょう)が天子の民を率いて天子に従わないのは、慉渠の大罪です。今、天子が自らその民をなつけようとするのは天子としての道理であり、人の民を脅かすことがありましょうか」と。
解説
この章句が説くこと
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