新書 / 孽產子
且試觀事理,夫百人作之,不能衣一人也,欲天下之無寒,胡可得也?一人耕之,十人聚而食之,欲天下之無飢,胡可得也?飢寒切於民之肌膚,欲其無爲奸邪盜賊,不可得也。國已素屈矣,奸邪盜賊特須時爾,歲適不爲,如雲而起耳。若夫不爲見,室滿胡可勝撫也?夫錞此而有安上者,殆未有也。今也平居則無茈施,不敬而素寬,有故必困,然而獻計者類曰︰「無動爲大」耳。夫無動而可以振天下之敗者,何等也?曰:爲大夫治,可也;若爲大亂,豈若其小?悲夫!俗至不敬也,至無等也,至冒其上也,進計者,猶曰「無爲」,可爲長大息者此也。
新字:且試観事理,夫百人作之,不能衣一人也,欲天下之無寒,胡可得也?一人耕之,十人聚而食之,欲天下之無飢,胡可得也?飢寒切於民之肌膚,欲其無為奸邪盗賊,不可得也。国已素屈矣,奸邪盗賊特須時爾,歳適不為,如雲而起耳。若夫不為見,室満胡可勝撫也?夫錞此而有安上者,殆未有也。今也平居則無茈施,不敬而素寛,有故必困,然而献計者類曰︰「無動為大」耳。夫無動而可以振天下之敗者,何等也?曰:為大夫治,可也;若為大乱,豈若其小?悲夫!俗至不敬也,至無等也,至冒其上也,進計者,猶曰「無為」,可為長大息者此也。
書き下し
且つ試みに事理を観よ。夫れ百人之を作るも、一人に衣するに能わず、天下の寒き無きを欲するも、胡ぞ得可けんや。一人之を耕し、十人聚まりて之を食らい、天下の飢うる無きを欲するも、胡ぞ得可けんや。飢寒民の肌膚に切なれば、其の奸邪盗賊を為す無きを欲するも、得可からず。国已に素より屈せり。奸邪盗賊特だ時を須つのみ、歳適たま為さざれば、雲の如く起こらんのみ。若し夫れ為さざること見われば、室満つるも胡ぞ撫するに勝う可けんや。夫れ此に錞して上を安んずる者有るは、殆ど未だ有らざるなり。今や平居には則ち茈施無く、敬せずして素より寛にし、故有れば必ず困しむ。然り而して計を献ずる者類ね曰く、「動く無きを大と為す」と。夫れ動く無くして以て天下の敗を振う可き者は、何等ぞや。曰く、大夫の治を為すは可なり。若し大乱を為さば、豈に其の小なるに若かんや。悲しきかな。俗の不敬に至り、等無きに至り、其の上を冒すに至る。計を進むる者、猶お「無為」と曰う。長大息を為す可き者は此れなり。
現代語訳
試しに物事の道理を見てみてください。百人が織っても一人分の衣服にしかならないのに、天下に寒さがないようにしたいと願って、どうして叶うでしょうか。一人が耕した穀物を十人が集まって食べるのに、天下に飢えがないようにしたいと願って、どうして叶うでしょうか。飢えと寒さが民の肌身に迫れば、悪事や盗みをするなと言っても無理です。国はもともと蓄えが尽きかけています。悪人や盗賊は時機を待っているだけで、その年たまたま作柄が悪ければ、雲のように湧き起こるでしょう。もし不作がはっきり現れたら、家々が満ちていても、どうして抑えきれましょうか。こうした状態で上を安んじた者は、まずいません。ところが今、ふだんは備えもなく、慎みもなくただ寛大にして、事が起きれば必ず苦しみます。それなのに計略を献ずる者は大抵「動かないことが大事だ」と言います。動かずに天下の疲弊を立て直せるなどという話が、どこにあるでしょう。治める者が大夫であれば、それでもよいかもしれません。しかし大乱が起きるなら、小さいうちに手を打つ方がよいではありませんか。悲しいことです。世の習いは不敬になり、序列がなくなり、下が上を犯すまでになっています。それでも計を進める者は「無為」と言う。私が長いため息をつくのは、このことです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『韓非子』喻老第二十一故に冬耕の稼は、后稷も羨すこと能はず、豊年の大禾は、臧獲も悪しくすること能はず。一人の力を以てすれば、則ち后稷も足らず、自然に随へば、則ち臧獲も余り有り。故に曰く、「万物の自然を恃みて敢へて為さず」と。空竅は神明の戸牖なり。耳目声色に竭き、精神外貌に竭く、故に中に主無し。中に主無ければ、則ち禍福丘山の如しと雖も、従りて之を識る無し。故に曰く、「戸を出でずして、以て天下を知るべく、牖を闚はずして、以て天道を知るべし」と。此れ神明の其の実を離れざるを言ふなり。趙の襄王、御を王子於期に学び、俄にして於期と逐ひ、三たび馬を易へて三たび後る。
-
『酔古堂剣掃』集靈・甘雨の時に降るに若かず涼を箑に取るは、清風の徐ろに來るに若かず、水を槔に激するは、甘雨の時に降るに若かず。
-
老子・第37章道は常に無為にして而も為さざる無し。侯王若し能く之を守らば、万物は将に自ら化せんとす。化して作らんと欲すれば、吾れ将に之を鎮むるに無名の樸を以てせんとす。無名の樸は、夫れ亦た将に欲無からんとす。欲せずして以て静かなれば、天下は将に自ら定まらんとす。
-
新語・無為道は無為より大なるは莫く、行いは謹敬より大なるは莫し。何を以て之を言う。昔舜の天下を治むるや、五弦の琴を弾じ、南風の詩を歌い、寂として国を治むるの意無きが若く、漠として天下を憂うるの心無きが若し。然り而して天下大いに治まる。周公は礼楽を制作し、天地を郊し、山川を望し、師旅を設けず、刑格れ法懸かりて、四海の内、奉供して来臻し、越裳の君、重訳して来朝す。故に無為なる者は乃ち有為なり。秦の始皇は刑罸を設け、車裂の誅を為し、以て姦邪を歛む。長城を戎境に築き、以て胡・越に備え、大を征し小を吞み、威は天下を震わし、将帥横行し、以て外国を服す。蒙恬は乱を外に討ち、李斯は法を内に治む。事愈々煩にして天下愈々乱れ、法愈々強くして奸愈々熾んに、兵馬益々設けて敵人愈々多し。秦は治を為すを欲せざるに非ず、然れども之を失う者は、乃ち挙措暴作し、刑を用うること太だ極まるが故なり。是を以て君子は寛舒を尚びて以て其の身を裦め、身を行うこと中和にして以て疏遠を致す。民は其の威を畏れて其の化に従い、其の徳を懐いて其の境に帰し、其の治を美として敢えて其の政に違わず。民は罸せずして畏れ、賞せずして勧み、道徳に漸漬して、中和に被服するの致す所なり。
-
説苑・君道晋の平公、師曠に問いて曰く、「人君の道は如何」と。対えて曰く、「人君の道は、清浄無為、務めて博愛にあり、趨りて賢を任ずるにあり、広く耳目を開きて以て万方を察し、流俗に固溺せず、左右に拘繋せられず、廓然として遠く見、踔然として独立し、屡々考績を省みて、以て臣下に臨む。此れ人君の操なり」と。平公曰く、「善し」と。
-
論語・衛霊公篇孔子曰わく、無為にして治むる者は、その舜なるか。夫れ何をか為さん。己を恭しくして南面するのみ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る