慎思録 / 巻之六
知之精切。則行亦進。行之的實。則知亦進。是知行相助之道也。王陽明說知行合一。可謂亂雜也。論語孔門之立敎也。皆是其言近而指遠。其守約而施博者。可爲萬世學者之標凖也。
新字:知之精切。則行亦進。行之的実。則知亦進。是知行相助之道也。王陽明説知行合一。可謂乱雑也。論語孔門之立教也。皆是其言近而指遠。其守約而施博者。可為万世学者之標凖也。
書き下し
之を知ること精切なれば、則ち行も亦進む。之を行ふこと的実なれば、則ち知も亦進む。是れ知行相助くるの道なり。王陽明の知行合一を説くは、乱雑と謂ふべし。論語孔門の教へを立つるや、皆是れ其の言近くして指遠く、其の守約にして施し博き者、万世の学者の標準と為すべし。
現代語訳
知ることが精密で切実であれば、行いも進みます。行うことが確かで着実であれば、知ることも進みます。これが知と行が互いに助け合う道です。王陽明が知行合一を説いたのは、乱雑だと言うべきです。『論語』に見える孔子の門の教えは、みな言葉は身近でありながら意味は遠く、守るところは簡約でありながら施すところは広いものです。万世の学ぶ者の手本とすべきです。
解説
知と行は別のものでありながら互いに助け合って進むとし、両者を一つとする王陽明の知行合一を退けた条です。朱子学では知が先で行が後だが両者は相須つ、と説きます。「言近くして指遠く、守約にして施し博し」は『孟子』尽心下の語です。益軒は知と行を分けつつ、その往復を重んじました。学んだことを試し、試して分かったことでさらに学ぶ。仕事でも学習でも、この往復の積み重ねが本当の理解と実力を育てます。
この章句が説くこと
知行学問力行王陽明論語
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