慎思録 / 巻之六
左傳晋欒武子曰。民生在勤。勤則不匱。可謂嘉言也。陶淵明詩。亦取此二句。以加之我詩句中。四民皆當如此。葢勤且愼者。民之上也。
新字:左伝晋欒武子曰。民生在勤。勤則不匱。可謂嘉言也。陶淵明詩。亦取此二句。以加之我詩句中。四民皆当如此。葢勤且慎者。民之上也。
書き下し
左伝に晋の欒武子曰く、民の生は勤むるに在り、勤むれば則ち匱しからずと。嘉言と謂ふべし。陶淵明の詩も、亦此の二句を取りて、以て之を我が詩句の中に加ふ。四民皆当に此くの如くなるべし。蓋し勤め且つ慎む者は、民の上なり。
現代語訳
『左伝』で晋の欒武子は「民の暮らしは勤めることにある。勤めれば乏しくならない」と言いました。立派な言葉と言うべきです。陶淵明の詩も、この二句を取って自分の詩句の中に加えています。士農工商の四民はみなこのようであるべきです。思うに勤勉でしかも慎み深い者が、民の最上の者です。
解説
「民生は勤むるに在り、勤むれば則ち匱しからず」という『春秋左氏伝』宣公十二年の言葉を、四民すべての指針とした短い条です。陶淵明も「勧農」の詩でこの句を用いています。益軒は『家道訓』などで、家を保つ根本は勤勉と倹約にあると説き、身分を問わず働くことを重んじました。勤めるだけでなく慎むことを加えて「民の上」とした点に益軒らしさがあります。働くことが暮らしを支え、慎みが働きの実りを守るのです。
この章句が説くこと
勤慎み民左伝家道
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