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君子訓 / 巻之中

一民豐なれば奢りて法に背くといふ人あり。是政を爲る道を知らざるなり。民貧しければ盜む心を生ず。民を憐みて衣食乏しからず、困究せしめざるは、盜を止むる基なり。法度を明かにして、民に分限を守らしむれば、豐なれども奢る事なし。如斯にして民其分を踰えて奢り怠り、或は盜する者あらば、罪に行ひて許すべからず。民は愚なる者なれば、まかせ置きては治るべきやうなし。衣食不足なきやうにして、其奢怠を戒め、罪に陷らしめぬは、政をするの道なり。

新字:一民豊なれば奢りて法に背くといふ人あり。是政を為る道を知らざるなり。民貧しければ盗む心を生ず。民を憐みて衣食乏しからず、困究せしめざるは、盗を止むる基なり。法度を明かにして、民に分限を守らしむれば、豊なれども奢る事なし。如斯にして民其分を踰えて奢り怠り、或は盗する者あらば、罪に行ひて許すべからず。民は愚なる者なれば、まかせ置きては治るべきやうなし。衣食不足なきやうにして、其奢怠を戒め、罪に陥らしめぬは、政をするの道なり。

書き下し

一民豊なれば奢りて法に背くといふ人あり。是政を為る道を知らざるなり。民貧しければ盗む心を生ず。民を憐みて衣食乏しからず、困究せしめざるは、盗を止むる基なり。法度を明かにして、民に分限を守らしむれば、豊なれども奢る事なし。如斯にして民其分を踰えて奢り怠り、或は盗する者あらば、罪に行ひて許すべからず。民は愚なる者なれば、まかせ置きては治るべきやうなし。衣食不足なきやうにして、其奢怠を戒め、罪に陥らしめぬは、政をするの道なり。

現代語訳

民が豊かになれば奢って法に背く、と言う人がいます。これは政治をする道を知らないのです。民が貧しければ盗む心が生じます。民を憐れんで衣食を乏しくさせず、困窮させないことが、盗みを止めるもとです。法度を明らかにして民に分限を守らせれば、豊かになっても奢ることはありません。このようにしても民がその分を越えて奢り怠り、あるいは盗みをする者があれば、罪に処して許してはなりません。民は愚かなものなので、任せておいては治まるはずがありません。衣食に不足がないようにして、その奢りや怠りを戒め、罪に陥らせないのが、政治をする道です。

解説

民を豊かにすると奢って法を破る、という考えを退け、貧しさこそ盗みを生むのだから、まず衣食を足らせよと説いています。そのうえで法を明らかにして分限を守らせれば、豊かでも奢らないと言います。孟子梁恵王上篇の「恒産無ければ恒心無し」にも通じる考えです。暮らしの安定と規律の両方があって初めて人は罪に陥らない、という順序は、今の貧困対策や犯罪予防の考え方にも重なります。巻之中は、民を罪に陥らせないことこそ政治の道だという言葉で結ばれています。

この章句が説くこと

民盗み法度政治衣食

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