慎思録 / 巻之五
作文章。貴依經義而有條理。須平易而簡要。含蓄而有餘味。不必要爲艱險奇異之辭。以夸曜其美。謝疊山之文章軌範。有資乎文章之學。其文多取唐宋之大家。而出漢魏六朝者寡矣。鄒東廓亦選文章軌範續集。其中收錄唐以前之文者多矣。初學之士併二書而用之可也。今之學者欲作爲文字。便先熟讀論語孟子。又記誦乎斯二書。則用意取材有源委。而且達作文法。
新字:作文章。貴依経義而有条理。須平易而簡要。含蓄而有余味。不必要為艱険奇異之辞。以夸曜其美。謝畳山之文章軌範。有資乎文章之学。其文多取唐宋之大家。而出漢魏六朝者寡矣。鄒東廓亦選文章軌範続集。其中収録唐以前之文者多矣。初学之士併二書而用之可也。今之学者欲作為文字。便先熟読論語孟子。又記誦乎斯二書。則用意取材有源委。而且達作文法。
書き下し
文章を作るには、経義に依りて条理有るを貴ぶ。須らく平易にして簡要、含蓄して余味有るべし。必ずしも艱険奇異の辞を為して、以て其の美を誇耀することを要せず。謝畳山の文章軌範は、文章の学に資する有り。其の文多く唐宋の大家を取りて、漢魏六朝より出づる者寡し。鄒東廓も亦文章軌範の続集を選ぶ。其の中唐以前の文を収録する者多し。初学の士、二書を併せて之を用ひて可なり。今の学者文字を作為せんと欲せば、便ち先づ論語孟子を熟読し、又斯の二書を記誦すべし。則ち意を用ひ材を取るに源委有りて、且つ作文の法に達せん。
現代語訳
文章を作るには、経書の意義に拠って筋道があることを貴びます。平易で簡潔で要を得て、含みがあって余韻がなければなりません。必ずしも難しく奇抜な言葉を使って、その美しさを誇る必要はありません。謝畳山の『文章軌範』は、文章の学問に役立ちます。その文章は多く唐宋の大家から取っていて、漢・魏・六朝から取ったものは少ないのです。鄒東廓もまた『文章軌範』の続集を選びました。その中には唐以前の文を多く収めています。初学の人は二つの書を併せて用いるとよいでしょう。今の学ぶ者が文章を作ろうとするなら、まず『論語』『孟子』を熟読し、またこの二書を暗誦すべきです。そうすれば、考えを用い材料を取るのに源と流れがあり、しかも文章を作る方法に通じるでしょう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『慎思録』巻之五明の方孝孺の鄭顕則に贈るの序は、文章を論じて、奇を好むと平易とを悪むを以て説を立つ。作文の学に於て、甚だ発明する所有り。学者の当に玩覧すべき所なり。曾南豊の文は、諸家の文章に比して、議論純正精詳なり。経術に得る有るに非ずんば能はざるなり。三蘇及び荊公の輩の及ばざる所なり。朱子之を称するも宜なり。
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『慎思録』巻之六君子の文章を作るや質実を尚ぶ。其の理を論じ事を記す、純正にして明詳なる所以なり。衆人の文章を作るや、浮華を尚ぶ。駁雑にして鄙俗なる所以なり。故に文章を作為するも、亦其の好む所に随ひて、純駁著る。其の好む所、慎まざるべけんや。
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『慎思録』巻之五好んで人の悪を揚げ、人の善を蔽ふ者は、不善焉より大なるは莫し。近世道学を以て名を立つるの儒、此の病有るを免れず。省察して之を戒めざるべけんや。本邦の書生の詞章を作るや、常に好んで詭異の文字を用ひ、那の尋常の文字を換却す。習ひて以て常と為す。苟も此くの如くならずんば、則ち誹議して以て拙俗と為す。近世以来最も甚だしと為す。俗尚の卑凡なること此くの如し。奇巧を欲すれば則ち愈拙陋なることを知らず。朱子称す、欧公・三蘇の文の好き処は、只是れ平易に道理を説きて、初めより曾て差異底の字を使はず、と。朱子の此の言、作文の法と為すべし。
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『慎思録』巻之五文章は純正典雅にして理有るを尚び、巧麗浮華にして実無きを尚ばず。昭明太子の文選の如きは、古今の文人の宗とする所なり。其の善き者を択び取り、且つ其の材を資用すれば則ち可なり。然り而して其の中に宋玉・司馬相如の諸賦、揚雄の劇秦美新、劉伶の酒徳頌等を載す。皆是れ浮華淫靡、諛佞放蕩の文にして、名検地を払ふと謂ふべし。文辞巧なりと雖も、尚ぶに足らず。自余の文も、亦儒者の取るべき者寡し。葉少蘊曰く、文章世教に関はらざれば、巧なりと雖も益無し、と。斯の言法とすべし。文選の諸作の如き、往往世教に関はらざる者多し。
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『慎思録』巻之二事を記す者は必ず其の要を提げ、言を纂むる者は必ず其の玄を鉤る。凡そ学者の読書の法、当に此くの如くすべし。然るに其の事を記し言を纂むる者、嘉言善行の世教に益有る者を採らずして、好んで猥紬駁雑奇怪妄誕の説を載す。以て益と為すに足らず、適に以て人を惑はすに足る。
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『慎思録』巻之四凡そ読書の法は、経を本と為し、史之に次ぎ、子集又其の次なり。其の功を用ふるの軽重本末次序は、須らく此の如くすべし。諸史子集を読むにも、亦た各須らく一書に専らにすべし。或いは二書を兼ね読むも亦た可なり。然れども一時に誦読する所の書多くして専一ならざれば、則ち紛冗にして条理を成さず。功力分かれて、精熟を做し難し。凡そ諸史子集は、其の精要なる者を抄出して冊子と為し、須らく日夜熟読して記誦を成すべし。此の如くすれば則ち功を用ふること少なくして、効多し。凡そ書を看るに、其の要用有る者は、須らく誦を成すべし。誦を成さざれば用を済し難し。