和俗童子訓 / 巻之三・読書法
一小兒の時、經書の內、とりわき孟子をよく熟誦すべし。是義理の學に益あるのみならず、文章を作る料なり。此書文章の法則と筆力を助く。朱子も、孟子を熟誦して文法をさとれりと云へり。又文章を作るためには、禮記の檀弓、周禮の考工記を熟誦すべし。是等は皆古人の說なり。又漢文の內數篇、韓柳歐蘇曾南豐等の文の内にて、心に叶へるを擇びて、三十篇熟誦し、そらに書きて忘れざるべし。作文の學、必如此すべし。
新字:一小児の時、経書の内、とりわき孟子をよく熟誦すべし。是義理の学に益あるのみならず、文章を作る料なり。此書文章の法則と筆力を助く。朱子も、孟子を熟誦して文法をさとれりと云へり。又文章を作るためには、礼記の檀弓、周礼の考工記を熟誦すべし。是等は皆古人の説なり。又漢文の内数篇、韓柳欧蘇曽南豊等の文の内にて、心に叶へるを択びて、三十篇熟誦し、そらに書きて忘れざるべし。作文の学、必如此すべし。
書き下し
一小児の時、経書の内、とりわき孟子をよく熟誦すべし。是義理の学に益あるのみならず、文章を作る料なり。此書文章の法則と筆力を助く。朱子も、孟子を熟誦して文法をさとれりと云へり。又文章を作るためには、礼記の檀弓、周礼の考工記を熟誦すべし。是等は皆古人の説なり。又漢文の内数篇、韓柳欧蘇曽南豊等の文の内にて、心に叶へるを択びて、三十篇熟誦し、そらに書きて忘れざるべし。作文の学、必如此すべし。
現代語訳
子どもの時、経書の中でも、とりわけ孟子をよく熟読暗唱しなさい。これは義理の学問に益があるばかりでなく、文章を作る材料になります。この書は文章の法則と筆力を助けます。朱子も、孟子を熟誦して文章の法をさとったと言っています。また文章を作るためには、礼記の檀弓篇、周礼の考工記を熟誦しなさい。これらは皆古人の説です。また漢代の文章の中の数篇や、韓愈・柳宗元・欧陽脩・蘇軾・曽鞏(南豊)などの文章の中から、心にかなうものを選んで、三十篇を熟誦し、書けるほど暗記して忘れないようにしなさい。文章の学問は、必ずこのようにしなさい。
解説
この章句が説くこと
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『文武訓』文訓下一韓柳欧蘇曽南豊などが文の内、心にかなへるを、三四十篇えらび出し、別本にうつし、そらに読みそらに書きおぼゆるは、文章を作ることをまなぶ良法なり。朱子の言にも、此意見えたり。如斯すれば、文字の置所、助字の用様をおのづから知りて、顛倒の誤なく、連続せざる字、又俗語を用ひずしてよし。本朝古人の文に、字の置きやう顛倒多く、連続せざる文字と、俗語とを用ひたる誤多し。殊に風体軟媚にして、奇巧をこのんでいやし。巧をこのめば弥拙し、と古人のいひしも、むべなり。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一四書を、毎日一百字づつ百遍熟誦して、そらに読みそらに書くべし。字の置き所、助字の有り所、ありしに違はず覚え読むべし。是程の事、老らくの年といへども、勤めてなし易し。況や少年の人をや。四書をそらんぜば、其力にて、義理に通じ、諸の書を読むこと易からん。又文章のつづき、文字の置きやう、助字の有り所をも、能く覚えて知れらば、文章を書くにもまた助となりなん。斯の如く、四書を習ひ覚えば、幼学のつとめ、過半は既に成れりと云ふべし。論語は一万二千七百字、孟子は三万四千六百八十五字、大学は経伝を合せて千八百五十一字、中庸は三千五百六十八字あり。四書すべて五万二千八百四字なり。一日に百字を読んで、そらに覚ゆれば、日数五百廿八日に終る。
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『文武訓』文訓上必ず中夏の文字を用ふべし。博く書を読みし人も、かねて中夏の文章を学ばざれば、時にのぞみ、筆をとりて文を作るべきすべを知らず。みだりに作れば法に合はず、文字の置きやうつづけやう、布置成語連続助字の法を知らずして、ひが事多く、文字顛倒して置きやうちがひ、文理をなさず、識者の謗免れがたし。殊に中夏の人の見て、誹笑せんもはづかし。故に学士は、必ず文章を学ぶべし。是を学ぶの法、まづ六経語孟を本とし、左伝、史記、漢書、文選、韓柳欧蘇等の文を学ぶべし。其中について、心にかなへる文をえらびて、三十篇ばかりそらんじ、書きおぼえて熟誦すべし。如斯すれば、おのづから文法をさとり、文字の置きやうを知るべし。経史を見るいとまには、少の力を用ひて作文を学ぶべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一書を読み学問する法、年若く記臆強き時、四書五経を常に熟読し、遍数を如何程も多く重ねて、記誦すべし。小児の時に限らず、老年に至りても、常に循環して読むべし。是義理の学問の根本となるのみならず、又文章を学ぶ法則となる。次に左伝を数十遍看読すべし。其益多し。是学問の要訣なり、知らずんばあるべからず。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一凡書を読むには、早く先を読むべからず。毎日返り読を専ら勤むべし。返り読を数十遍勤め終りて、其先を読むべし。然らずして、唯はかゆかん事を好みて、返り読少なければ、必忘れて、我が習ひし功も、師の教へし功もすたりて、広く数十巻の書を読んでも益なし。一巻にても能く覚ゆれば、学力となりて、功用をなす。必よくおぼゆべし。書を読んでも、学進まざるは、熟読せずして覚えざればなり。才性あらば、八歳より十四歳まで、七年の間に、小学、四書、五経等、皆読み終る。四書五経熟読すれば、才力いでき、学問の本たつ。其力を以て、やうやく年長じて、広く群書を見るべし。
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