慎思録 / 巻之五
後漢東夷傳曰。東方曰夷。仁而好生。天性柔順。易以道御。至有君子不死之國。山海經曰。君子國。衣冠帶劒。篤信曰。古人以君子不死之國爲日本。夫日本雖在島夷之中。其俗比之中華及西蕃諸夷。仁而壽。稱之爲君子不死之國。亦宜哉。
新字:後漢東夷伝曰。東方曰夷。仁而好生。天性柔順。易以道御。至有君子不死之国。山海経曰。君子国。衣冠帯劒。篤信曰。古人以君子不死之国為日本。夫日本雖在島夷之中。其俗比之中華及西蕃諸夷。仁而寿。称之為君子不死之国。亦宜哉。
書き下し
後漢の東夷伝に曰く、東方を夷と曰ふ。仁にして生を好み、天性柔順にして、道を以て御し易し。君子不死の国有るに至る、と。山海経に曰く、君子国は、衣冠して剣を帯ぶ、と。篤信曰く、古人は君子不死の国を以て日本と為す。夫れ日本は島夷の中に在りと雖も、其の俗之を中華及び西蕃の諸夷に比すれば、仁にして寿なり。之を称して君子不死の国と為すも、亦宜ならずや。
現代語訳
『後漢書』東夷伝に「東方を夷という。仁愛で生き物を好み、生まれつき柔順で、道によって治めやすい。君子の国、不死の国があるほどだ」とあります。『山海経』には「君子の国の人は、衣冠をつけ剣を帯びている」とあります。私篤信が言います。昔の人は、君子の国・不死の国を日本のことだとしました。日本は島々の夷の中にあるとはいえ、その風俗を中国や西方の諸国と比べると、仁愛があって長寿です。これを君子不死の国と称するのも、もっともなことではないでしょうか。
解説
『後漢書』東夷伝の序には、東方の人々の性質を讃え、君子の国や不死の国があると記しています。『山海経』海外東経にも、衣冠をつけ剣を帯び、譲り合って争わない君子国が描かれます。これらの伝説の国がどこを指すかは定かではありませんが、益軒は日本に当てはめ、その仁と長寿を誇ります。前条に続いて日本の風俗への自負がうかがえます。古典の記述を自国の美点を讃える根拠に用いる読み方は当時の儒者に見られたものですが、伝説と史実を区別して読むことも大切です。
この章句が説くこと
日本仁長寿東夷風俗
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