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慎思録 / 巻之五

後漢書東夷傳曰。倭國人多壽考。至百餘歲。篤信曰。我邦比中華及諸西蕃。壽考之人多矣。古昔往往有逾于期頤之人。到耄耋者。今亦不爲鮮矣。亶如後漢書所載。雖中華學道術善修養之人。超過乎中壽者寡矣。夫禀氣深固者多壽。禀氣淺露者多夭。本邦雖天資薄弱之人。壽考者亦多矣。是因受地氣之深固耶。

新字:後漢書東夷伝曰。倭国人多寿考。至百余歳。篤信曰。我邦比中華及諸西蕃。寿考之人多矣。古昔往往有逾于期頤之人。到耄耋者。今亦不為鮮矣。亶如後漢書所載。雖中華学道術善修養之人。超過乎中寿者寡矣。夫禀気深固者多寿。禀気浅露者多夭。本邦雖天資薄弱之人。寿考者亦多矣。是因受地気之深固耶。

書き下し

後漢書の東夷伝に曰く、倭国の人、寿考多く、百余歳に至る、と。篤信曰く、我が邦は中華及び諸西蕃に比すれば、寿考の人多し。古昔往往期頤を逾ゆるの人有り。耄耋に到る者、今も亦鮮からずと為す。亶に後漢書の載する所の如し。中華の道術を学び修養を善くするの人と雖も、中寿を超過する者寡し。夫れ気を稟くること深固なる者は寿多く、気を稟くること浅露なる者は夭多し。本邦は天資薄弱の人と雖も、寿考なる者も亦多し。是れ地気の深固なるを受くるに因るか。

現代語訳

『後漢書』東夷伝に「倭国の人は長寿の者が多く、百歳余りに至る」とあります。私篤信が言います。わが国は中国や西方の諸国と比べて長寿の人が多いのです。昔からしばしば百歳を超える人がいました。八十、九十に至る者も、今もまた少なくありません。まことに『後漢書』に載せるとおりです。中国の道術を学び、修養をよくする人でも、中程度の寿命を超える者は少ないのです。そもそも気を深く固く受けた者は長寿が多く、気を浅く表面的に受けた者は若死にが多いのです。わが国では生まれつき体の弱い人でも、長寿の者が多くいます。これは土地の気が深く固いのを受けているからでしょうか。

解説

『後漢書』東夷伝の倭の条には、倭人に長寿の者が多く百余歳に至る者もいると記されています。期頤は『礼記』曲礼上に見える百歳のこと、耄耋は八十・九十歳の高齢をいい、中寿は八十歳前後とされます。益軒は、日本人の長寿を土地の気の深さに求めます。『養生訓』を著した益軒にとって、長寿は大きな関心事でした。益軒自身も当時としては異例の八十五歳まで生きています。生まれつき体が弱くても長生きできるという言葉は、体の弱かった益軒自身への励ましでもあったのかもしれません。

この章句が説くこと

長寿養生日本寿考

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