慎思録 / 巻之五
人之爲學也。歷年之久。積累而不息。雖愚者漸進可開明。故學者之享壽永久者。是天之所祐。可以爲幸甚。積累之道。又在專一與勤苦。葢非專一與勤苦。則無進益精明之功。
新字:人之為学也。歴年之久。積累而不息。雖愚者漸進可開明。故学者之享寿永久者。是天之所祐。可以為幸甚。積累之道。又在専一与勤苦。葢非専一与勤苦。則無進益精明之功。
書き下し
人の学を為すや、年を歴ること久しく、積累して息まざれば、愚者と雖も漸く進みて開明すべし。故に学者の寿を享くること永久なる者は、是れ天の祐くる所にして、以て幸甚と為すべし。積累の道は、又専一と勤苦とに在り。蓋し専一と勤苦とに非ずんば、則ち進益精明の功無し。
現代語訳
人が学問をするとき、長い年月を経て、積み重ねてやまなければ、愚かな者でもしだいに進んで開け明らかになることができます。だから学ぶ者が長寿を得るのは、天の助けであり、この上ない幸いとすべきです。積み重ねる道は、また専一と勤苦にあります。専一と勤苦がなければ、進歩して精しく明らかになる成果はありません。
解説
八十五歳まで学び続けた益軒の実感がそのまま出た一条です。学問は才能より年月の積み重ねであり、愚かな者でも続ければ必ず進むと言います。『中庸』第二十章の「人一たびして之を能くすれば、己之を百たびす」にも通じる考えです。だから学ぶ者にとって長生きは天の恵みだと益軒は喜びます。『養生訓』で健康を重んじたのも、長く学び長く務めるためでした。ただし年月だけでは足りず、一つに打ち込むことと骨身を惜しまないことが要る。生涯学び続ける人への励ましとなる言葉です。
この章句が説くこと
学問積累専一勤苦長寿
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