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慎思録 / 巻之五

不可不審擇其性行。又須選父家之良賤。不可唯以其容貌之美惡爲取舎。然君子之於父也。愛敬兼至。比母最厚者。何也。葢人之生也。資始於父。是爲禀受之本源。如母。雖養育之功固多。然其爲本始而統之者父也。是猶雖地育之功厚。特天生之德大也。故父爲天。母爲地。其尊卑自不同。此以父爲至尊至親。其可尊與天齊。故君子最厚其父。而母其次也。

新字:不可不審択其性行。又須選父家之良賤。不可唯以其容貌之美悪為取舎。然君子之於父也。愛敬兼至。比母最厚者。何也。葢人之生也。資始於父。是為禀受之本源。如母。雖養育之功固多。然其為本始而統之者父也。是猶雖地育之功厚。特天生之徳大也。故父為天。母為地。其尊卑自不同。此以父為至尊至親。其可尊与天斉。故君子最厚其父。而母其次也。

書き下し

其の性行を審らかに択ばざるべからず。又須らく父家の良賤を選ぶべし。唯其の容貌の美悪を以て取舎を為すべからず。然れども君子の父に於けるや、愛敬兼ね至り、母に比して最も厚き者は、何ぞや。蓋し人の生ずるや、始めを父に資る。是れ稟受の本源たり。母の如きは、養育の功固より多しと雖も、然れども其の本始たりて之を統ぶる者は父なり。是れ猶ほ地育の功厚しと雖も、特に天生の徳大なるがごとし。故に父は天たり、母は地たり。其の尊卑自ら同じからず。此れ父を以て至尊至親と為し、其の尊ぶべきこと天と斉し。故に君子は最も其の父に厚くして、母は其の次なり。

現代語訳

(妻を娶り妾を迎えるときは)その性質と行いをよく吟味して選ばなければなりません。また、その父の家の良し悪しを選ぶべきです。ただ容貌の美醜だけで取るか捨てるかを決めてはなりません。しかし君子が父に対して、愛と敬をともに尽くし、母に比べて最も厚くするのはなぜでしょうか。そもそも人が生まれるのは、始まりを父に頼ります。これが受け継ぐものの本源です。母は養育の功がもちろん多いのですが、その本の始まりとなって統べる者は父です。これは地が育てる功が厚くても、天が生む徳がとりわけ大きいのと同じです。だから父は天であり、母は地です。その尊卑はおのずと同じではありません。これは父を最も尊く最も親しいものとし、その尊ぶべきことは天と等しいのです。だから君子は父に最も厚くし、母はその次なのです。

解説

前条からの続きで、妻を選ぶには容貌でなく性質と行い、生家の家風を見よと説きます。益軒は『和俗童子訓』や『大和俗訓』などでも婚姻の心得を説いた人でした。後半では、養育の功は母が大きいとしながらも、父を天、母を地として父をより尊ぶ理由を述べます。これは当時の儒教的な家族秩序を反映したもので、今日の男女観とは異なります。ただ、結婚相手を外見でなく人柄と育った環境で選べという助言は、家族を築くうえで今も変わらない知恵と言えるでしょう。

この章句が説くこと

婚姻父母人柄

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